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人の砂漠 の商品レビュー

4.3

48件のお客様レビュー

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沢木さんがまだ若かり…

沢木さんがまだ若かりし?頃の作品。『棄てられた女たち』の【村】の現在が知りたくなり思わずネットで調べてしまった(笑)昔に書かれた作品なので、現在の状況とはかなり異なっていたり、本書の中に出てくる【ある土地】の出身者である私としてはちょっと反論したい部分もあったりするのだが、でもと...

沢木さんがまだ若かりし?頃の作品。『棄てられた女たち』の【村】の現在が知りたくなり思わずネットで調べてしまった(笑)昔に書かれた作品なので、現在の状況とはかなり異なっていたり、本書の中に出てくる【ある土地】の出身者である私としてはちょっと反論したい部分もあったりするのだが、でもとにかく全編を興味深く、あっという間に読むことが出来た。

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丹念に調べ書き上げた…

丹念に調べ書き上げたルポ。著者の思いが伝わる。

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「敗れざるもの」など…

「敗れざるもの」などのルポに、作品としては名作だなと思いながらも、ちょっとした違和感を持ってしまうオイラは、作者のこうした作品の方が好きだ。

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ルポタージュ全8篇を…

ルポタージュ全8篇を収録。あとがきまで読んで初めて、全篇に通じるテーマが感じられる。何度も繰り返し読むと、その度に違った発見ができると思います。

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丹念といってもいいつ…

丹念といってもいいつくせないほどのルポタージュ。棄てられた女たち・・・の話は非常に印象的。現実がこれほど深いかを教えてくれる1冊。

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ルポ8篇が収録。客観…

ルポ8篇が収録。客観的に書かれているのですんなり読める。

文庫OFF

2024/04/06

今から50年くらい前の社会を切り取ったルポルタージュが8編。隔世の感がある。 1編目「おばあさんが死んだ」は、亡くなった老婆(といっても72歳)の家の中に転地療養で離れているはずの兄のミイラ化した死体があった。兄が死ぬまで老婆は昔とった杵柄の歯科医の仕事が続けられているふりをして...

今から50年くらい前の社会を切り取ったルポルタージュが8編。隔世の感がある。 1編目「おばあさんが死んだ」は、亡くなった老婆(といっても72歳)の家の中に転地療養で離れているはずの兄のミイラ化した死体があった。兄が死ぬまで老婆は昔とった杵柄の歯科医の仕事が続けられているふりをしていたが実はとっくに職はなく、先細りの生活を続けていたというもの。現代にあってはこういうケースをときどき見聞きするけれど、当時としてはある種、衝撃的な事件だったのだろうか。よくあることだからいいってわけではないが、やや感傷的に過ぎる気もした。 2編目は数年前に訪ねてみようとした「かにた婦人の村」を取り上げている。虐げられた女性たちの安住の場をつくろうというのは立派だが、男たちの上から目線が気になった。 3編目「見えない共和国」は日本の南の果てを、4編目「ロシアを望む岬」は北の果てを訪ねたもの。どちらも大変だけど、逆に現地ならではの国境がないような交流があったりとあっけらかんとした実像がうかがえたりもする。このあたり、現代はどうなんだろう。 5編目「屑の世界」はその名のとおり屑・廃品扱いの世界に飛び込んでのもの。6編目「鼠たちの祭」は相場師たちの姿を追うもの。このあたりは50年もたてば業界の世界など様変わりして、とてもじゃないけど本書で描かれるようなある意味、牧歌的なアナログな世界は消え失せていることだろう。 7編目「不敬列伝」は、戦後に天皇への不敬的な行為で話題になった人たちを追ったもの。一時の思想にかぶれてその後の人生にケチがついて回っている感じの人が多い気がして、世間の怖さを感じた。 8編目「鏡の調書」はちょっとした滑稽譚。流れ者のばあさんが街の人から広く浅くお金をいただいてしまう話。 これらを書いていた頃は沢木耕太郎も20代。自分の気の向いた話題のところへ行き、すると何らか取材を受けてくれるような糸口ができ、1編のルポルタージュができ上がるという感じだろうが、世知辛く個人情報を大切にする現代ではなかなか難しいことだろう。

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2023/10/19

社会の片隅の片隅に生きる人々の姿を伝えるルポであった。ミイラと同居し汚物まみれで孤独死した老婆、元娼婦たちの保護施設、日本列島の最南端と北端、資源ゴミをお金に変えて生活する人々、先物取引に見る栄光と挫折、天皇不敬罪で公安警察に追われる人たちの人間模様、憎めない老婆詐欺師とその被害...

社会の片隅の片隅に生きる人々の姿を伝えるルポであった。ミイラと同居し汚物まみれで孤独死した老婆、元娼婦たちの保護施設、日本列島の最南端と北端、資源ゴミをお金に変えて生活する人々、先物取引に見る栄光と挫折、天皇不敬罪で公安警察に追われる人たちの人間模様、憎めない老婆詐欺師とその被害者たち。興味深くて面白くてしんどくて、しんどいけれども多様であり人間味もあり、社会というものは様々な人々を抱えつつ全体として生きているのだなと思った。まだ24歳の生き生きした沢木耕太郎氏の目に映る風景を通して、みんなが色々なところで生きている実感のようなものが伝わって来くる。マスメディアばかり見ていると中央集権的な視点で周縁を切り捨てがちだが、切り捨てた部分からの視点で見渡すとより鮮明に見えてくるものがある。

Posted byブクログ

2023/05/31

一行目:ひとりの老女が死んだ。 短編集。「屑の世界」「鼠たちの祭」「不敬列伝」あたりが面白かった。 批評できるほど著者の本を読めていないけど、旅ものよりは、その3つあたりが面白く読める。 で、「視えない共和国」に違和感があったのだが、途中で、沢木耕太郎って東京周辺の出身では?...

一行目:ひとりの老女が死んだ。 短編集。「屑の世界」「鼠たちの祭」「不敬列伝」あたりが面白かった。 批評できるほど著者の本を読めていないけど、旅ものよりは、その3つあたりが面白く読める。 で、「視えない共和国」に違和感があったのだが、途中で、沢木耕太郎って東京周辺の出身では?と思い至った。 著者自身に「自分もそうなるかもしれない」とか「自分もそうだったかもしれない」という視点がなさそうなので、地方の話に当てはめたときに、都会者が単純に好奇心でものを見るような、そんな感覚を味わったのだ。 もちろん、ルポライター(とご自身で書かれている)としてはあえて題材を「他人事」と見ているのかもしれないが。 今回印象的だったのは以下。 「漁民は信仰深いという。それも当然だ、とその時のぼくには思えた。この荒々しい自然の前で、どうしてぼくら人間がなにものかでありえようか。」 「《〜女王陛下の行列に向かって、野卑なことをいう人も出てくる。〜イギリス人はかなりきつく罰します。理由は、彼はいくらでも「馬鹿野郎!」と叫びつづけられるけど、パレードの中から女王陛下が「馬鹿野郎!」といい返すことは絶対できないじゃありませんか。フェアーじゃない、というのです》」

Posted byブクログ

2023/03/20

先日、『ある行旅死亡者の物語』を読み終わって思い出した。 そういえば、沢木さんのルポに似たような作品があったな、と。 本棚を探しまくって発掘したのが本書である。冒頭に収められ ているルポのタイトルは「おばあさんが死んだ」だ。 おばあさんの死は全国紙に掲載された。栄養失調と老衰...

先日、『ある行旅死亡者の物語』を読み終わって思い出した。 そういえば、沢木さんのルポに似たような作品があったな、と。 本棚を探しまくって発掘したのが本書である。冒頭に収められ ているルポのタイトルは「おばあさんが死んだ」だ。 おばあさんの死は全国紙に掲載された。栄養失調と老衰で 貸家で亡くなったおばあさんだが、その家にはもう一体、 ミイラ化した遺体があった。 遺体はおばあさんの実の兄だった。何故、ふたりは孤独に 亡くなったのか。おばあさんの過去を遡る過程をまとめたルポだ。 40年以上前のルポだが、現在でもひっそりと孤独死する人たちにも それぞれの軌跡があるんだよな、と改めて考えさせられた。 そして、本書に収録されている「棄てられた女たちのユートピア」 で取り上げられている「かにた婦人の村」は、発足当初は一般社会で の生活が困難な元売春婦たちの為の施設であったが、現在は性被害 や暴力被害に遭った女性たちの安住の地になっている。 「屑の世界」は実際に建場で働いた著者が見聞きしたルポである。 この作品を読むと。名作『チリ交列伝』を再読したくなるとの 誘惑に駆られる。やべぇ、読書の蟻地獄だぜぃ。 最終章「鏡の調書」も興味深い。自分を大金持ちだと思わせて 詐欺を働いた老女の話なのだが、こういう人はネットにもいる よね。「自分は銀座に店を持っている」とか言っちゃって、 札束を積んだ拾い画を「証拠だ」と言い張る人。嘘はばれます。 収録されている8作品はどれも昭和の時代に書かれたものだ。 時代背景が違うから、その時代を知らない世代には違和感が あるだろうが、私はすんなり再読できた。ま、ばあさんで あるということだな。 それはともかく、やっぱり沢木さんの視線は温かいんだな。 切なくて、それでもじんわりと胸の奥に浸みる作品ばかりだ。

Posted byブクログ