雁 の商品レビュー
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お金では 人の心なんて買えないのに・・・・・体だけを縛り付けてなんになるんだろう。心と体 切ないまでの恋心
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借金のかたに高利貸し…
借金のかたに高利貸しの妾にされたお玉。彼女の恋は実るのか……。切ない作品です。
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解説では、書き始めにおいて物語の帰着点が見えていたから連載が断続したものだったのだろうと語る。 しかし、読んだ印象はそうではない。確かに帰着点が見えていたのかもしれないが、継断を繰り返すうちにそれは見えなくなり、スバル廃刊と同時に一度途切れたのではないかと思う。そう思わせるほどに...
解説では、書き始めにおいて物語の帰着点が見えていたから連載が断続したものだったのだろうと語る。 しかし、読んだ印象はそうではない。確かに帰着点が見えていたのかもしれないが、継断を繰り返すうちにそれは見えなくなり、スバル廃刊と同時に一度途切れたのではないかと思う。そう思わせるほどには、納得のいかない軽率さのようなものを感じさせる最後3章であった。 もしこの不満こそが森鴎外の狙いであればあっぱれだ。 鴎外作をまともに読むのは初めてだった。 解説によると今作は他と一線を画すようであり、たしかに書き手の人称の移り変わりが錯綜としており面白いものだった。他にも色々読んでみたい。
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『舞姫』を何年も前にちくま文庫で読んで、全くわからなかった。文語がわからないとか、単語がわからないとか、そういうことではなく、何か一々言葉の後ろに別の言葉があるような、表面の、額面の意味だけではないような、そういうもやもやする感じがあった。 『即興詩人』は翻訳なので森鷗外の作品で...
『舞姫』を何年も前にちくま文庫で読んで、全くわからなかった。文語がわからないとか、単語がわからないとか、そういうことではなく、何か一々言葉の後ろに別の言葉があるような、表面の、額面の意味だけではないような、そういうもやもやする感じがあった。 『即興詩人』は翻訳なので森鷗外の作品では厳密にはないが、それでもあれを読んだ時は確かに森鷗外って良いなと思えた。話によれば原著を原著のまま読むとそうでもないらしい。現に同作があそこまで日本で受け入れられ、有名なのは森鷗外の訳があったからとか。 そして『雁』。読みやすい。なんだこれはとたまげたくらい読みやすい。ある意味ですごく小説らしい。自然主義を騙った私小説が幅を利かせていた当時の日本にあって、この作品は真の意味での自然主義ではないかと思う。
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しんどいなー、どうしてそうなっちゃったんだろう。が率直な感想。 末造の妾になって、岡田といういい男に出会うまでの話が大半で、そのあとの岡田とお玉との交流(それもあまりない!)が少なくて、「一本の釘」問題、偶然のピタゴラスイッチが恨めしい。もっと後者を見たかったぞー!!と叫びたくなるし、お玉もそう思っていたに違いない。それもこのタイミングで洋行とかなんなんですか??ってなる。 最後の思い切ったお玉の行動の結末と雁の死が重なる。
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1911年から1913年、足掛け3年の年月をかけて完成した森鴎外の小説。 とはいえ、その間、長期連載をし続けていたわけではなく、掲載誌「スバル」の休刊から、引き継がれる予定だった「我等」も休刊し、長い休載期間を経て、最終的には描き下ろしで完結した経緯があり、内容的には130ページ...
1911年から1913年、足掛け3年の年月をかけて完成した森鴎外の小説。 とはいえ、その間、長期連載をし続けていたわけではなく、掲載誌「スバル」の休刊から、引き継がれる予定だった「我等」も休刊し、長い休載期間を経て、最終的には描き下ろしで完結した経緯があり、内容的には130ページほどで中短編程度の長さとなっています。 森鷗外としてはなかりわかりやすい作品です。 私、過去のレビューでも書いている通り、森鷗外の文学は苦手で、「舞姫」の印象が第一にあるためなのですが、これまで読んできた鷗外文学を振り返るとやはりとっつきやすい作者とはいえないと感じています。 本作にして、ようやく頭を悩ませることなく、普通に読める小説がでてきたなと感じました。 鷗外作品は往々にしてなかなかページが進まないまま内容をさっぱり忘れてしまい、読了に難儀するのですが、本作はページが進むんですね。 小説として、かなり面白い内容だと思います。 末造、お玉、岡田という3人の人物が中心となる展開で、語り手の「僕」は聞いた話を語っているという形になっています。 末造という男は貧乏な小間使いをしていたのですが、人に金を貸すようになり利子で儲けて、やがて裕福になります。 口うるさく所帯窶れがしている妻に嫌気が差してきた末造は、ある日、大学へ行く途上で、三味線の稽古をしているお玉という娘を見かけます。 その美しさに惹かれた末造は、お玉を妾にしようとします。 お玉は、両親が老いてから初めて授かった娘で母は産後に亡くなったこともあり、父の寵愛を受けていました。 また、巡回中の巡査に見初められ、入婿の形で入り込んでこようとしたが、実は巡査には国に妻子がおり、それを恥じて引っ越した経歴があるため、お玉の父は末造の話に懐疑的でしたが、父に楽をさせるため、お玉は末造の話を進んで受けます。 一方で、語り手の「僕」のひとつ下の学生「岡田」は、いつもの散歩の帰り道に謎めいた印象の女性・お玉に出会い、また、一方で、お玉も家の前を通る学生に想いを寄せていく。 基本的にはお玉、岡田を中心とした恋慕の話なのですが、ラストはぷっつりと終わった印象を持ちました。 長い休載の後の、最後の22,23,24章が書き下ろし部分なのですが、そこでストーリーは急展開を迎え、末造の悩み、お玉の募る想いには終着点をつけられずに、良く言えば余韻を残して終わりとなります。 個人的には、もう少し丁寧な終わり方にして欲しかったところですが、掲載誌の休刊から引き継ぎ先も覚束ないまま、他の多数の作品を執筆しており、そんな中、ちゃんと完結してくれただけで御の字かなと思いました。 大変面白い作品でした。 ただ、私の思っている鷗外作品としては異質な感じがあります。 鷗外を理解するために最初に取る書としてはおすすめできないかなと思います。
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登場人物である岡田は東大ボート部で活躍し、対人関係もバランスが取れているハンサムな男。 お玉は、高利貸しで成り上がり者の末造の立場の弱い妾であり、密かに岡田に慕情を抱く。 お玉の妾の立場から、末造を疎ましく思う気持ちが交錯しつつ、岡田に思いを伝えられないまま、そのまま岡田は洋行へ...
登場人物である岡田は東大ボート部で活躍し、対人関係もバランスが取れているハンサムな男。 お玉は、高利貸しで成り上がり者の末造の立場の弱い妾であり、密かに岡田に慕情を抱く。 お玉の妾の立場から、末造を疎ましく思う気持ちが交錯しつつ、岡田に思いを伝えられないまま、そのまま岡田は洋行へ。 所々に散りばめられているフランス語が読みにくいが、普通に単語が出てくるあたり、この当時の文豪の博識には脱帽である。
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※このレビューにはネタバレを含みます
初めて森鴎外を読む。小さな偶然によって人と人とが出会う、という筋書きはよくあれど、出会わない、ということを、情感を持った物語に仕立て上げることのできる森鴎外に脱帽。 ***** お伽話ではない非情な現実を描きながら、とても情緒があるという不思議。 例えば、安易な物語であれば悪役である末造の心理描写に多くの文字数が割かれていて、案外悪い人間でないように感じられる。 ただ同時に、紅雀を巡る一件や雁に石が当たる場面にはおとぎ話ちっくなところがあって、東京下町の情景と合わさって、とても小説的なのである。
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森鴎外は『舞姫』の 退屈なイメージがあって ずっと避けてきたものの 受験するかもしれない大学の 課題図書なので 腹を括って読みました 笑 結果的には 森鴎外アレルギーを 少し克服出来た…かな。 些細な出来事が実は 大きなすれ違いに 繋がってしまうのかも。
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鴎外は『舞姫』を現代文の教科書で読んだことがある。それっきり。 そもそも、国語の授業を通しての作家との出会いっていうのは、私の場合たいてい上手くいかない。太宰との出会いが『走れメロス』だったせいで、彼の他の小説を読み始めるのは三年遅れた。芥川の『羅生門』を最初に読んだせいで、長...
鴎外は『舞姫』を現代文の教科書で読んだことがある。それっきり。 そもそも、国語の授業を通しての作家との出会いっていうのは、私の場合たいてい上手くいかない。太宰との出会いが『走れメロス』だったせいで、彼の他の小説を読み始めるのは三年遅れた。芥川の『羅生門』を最初に読んだせいで、長らくその晩年の作品に目を向けることをしなかった。漱石『こころ』のラストだけ抜粋(!)という恥知らずなネタバレは、今でも恨んでいる。 そして、中でも最も失敗したのが、初めての鴎外が『舞姫』だったということではないだろうか。これがもう、私を決定的に鴎外から遠ざけた。正直に言う。全然、ぜんっぜん、面白くなかった。文体が難しいとか、そういう問題ではない。何より、登場人物の誰にも共感できなかった。豊太郎もエリスも相沢も、みんな人形みたいに思えた。話の筋だってちっとも良いと思わなかった。読み終わった後「あ、そう、ふうん」以外の感想が思いつかない小説があるなんて。自分でもおこがましいとは思う。が、とにかく、当時の私には合わなかったのだ。 それから数年。 今回『雁』を読んでみて、まず文章の美しいのに驚いた。淡々としていて、ほんとうにすっと入ってくる。一つ一つの言葉があるべきところにばちっ、ばちっと嵌っているからだ。それでいて「巧妙さ」を感じさせない。(これは褒めている)あくまでさらりとこういう文章が書けるとは。鴎外の「文豪」たる所以がようやく垣間見えた気がした。 一方で物語としてはどうかというと、これがあまりしっくりこなかった。心に迫ってくるものがあまりなくて、遠くの空に浮かんだ雲を日がな一日眺めているような感じ。瞬間瞬間のはっとするような美しい描写はあるのだが、物語全体としては力が足りないように思う。そういうのがスタイルなのだろうか。 あとは、語り手の存在の必要性が最後まで疑問だった。特に幕引きの取って付けたようなぎこちなさには少々興ざめしてしまった。直前まで鴎外の筆力にすっかり惹きこまれていただけに、あの終わり方だけはなんだか裏切られたように感じた。かなしい。 何はともあれ、決して悪くはなかった。鴎外をもうちょっと本腰を入れて読んでみようかと思うきっかけにはなったかな。
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