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カナダに渡った侍の娘 の商品レビュー

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2件のお客様レビュー

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2013/08/15

1896年土佐士族の家に生まれ、1917年にカナダ西海岸に渡り、波乱万丈の人生を送り、1996年100歳で亡くなったメリー・キヨシ・キヨオカさんの回想録を読んだ。息子のロイ・キヨオカさんの取り組んだプロジェクトで、母親をインタビューし、その語りを整理したもの。ロイさんは日本語はで...

1896年土佐士族の家に生まれ、1917年にカナダ西海岸に渡り、波乱万丈の人生を送り、1996年100歳で亡くなったメリー・キヨシ・キヨオカさんの回想録を読んだ。息子のロイ・キヨオカさんの取り組んだプロジェクトで、母親をインタビューし、その語りを整理したもの。ロイさんは日本語はできたけれど、そんなに自信が持てなかったため、訳者を介して原稿が起こされたそうだ。 「その時がくると心の故郷に帰りたくなるって、一世はたいていそうらしい。子育ての忙しい頃には、そんなこと考える暇は無いけど、年をとって死ぬ頃になると、みなそう思うらしい。何一つ不自由なことはないし、好きに暮らしているけど、もう一度だけ土佐に帰ってみたい。それが私の最後の願い。」 というパッセージから始まり、父親に薦められて見合い結婚しカナダに渡ったこと、写真だけで相手を探す写真花嫁が港に溢れていたこと、厳しいカナダでの暮らし、子どもとの離別、そしてその後の確執、第二次世界大戦中に受けた差別、などが独特の飾り気の無い語りでシンプルに表現されていた。 故郷への思いやカナダにに生きることなど様々トピックはあったが、「なぜ主人と一生連れ添ったのだろうと考えてみると、子どもを見てもらえば分かる。一世の女にとっては、こどもが全て」と書いてある通り、作品の大部分は7人子どもに対する愛情、心配、後悔など様々な気持ちが綴られている。 「結婚したからといって、カナダに来たからといって、自分を無くすわけじゃない」といったフレーズが幾度も出てきて、強い志と覚悟を持った、粋な女性だったのだろうなと思った。 武士のしきたり、移民としての苦労、そして現代社会に感じる違和感など、激動の時代を一世紀生き抜いたキヨさんの物語。きっとカナダで暮らす上で、また開きたくなるときが来ると思うので、日本に帰ったときに本を購入しよう。

Posted byブクログ

2010/07/19

読み終わるのがもったいない…!と思いつつ読了。 土佐藩士の娘であるキヨが、結婚してカナダに渡り過ごした日々を、息子のロイ・キヨオカがまとめた一冊。 しかし、実はまとめあげる直前1994年に、ロイ自身は急逝してしまった。キヨ自身はその2年後の1996年、100歳になった数ヶ月後に...

読み終わるのがもったいない…!と思いつつ読了。 土佐藩士の娘であるキヨが、結婚してカナダに渡り過ごした日々を、息子のロイ・キヨオカがまとめた一冊。 しかし、実はまとめあげる直前1994年に、ロイ自身は急逝してしまった。キヨ自身はその2年後の1996年、100歳になった数ヶ月後に逝去し、本はその翌年出版された。 キヨさん自身が思い出を語っているかのような数行から多くても1頁前後の短い文章が連なっていて、まるでキヨさんの傍らで、彼女の話を聞いているような錯覚を受ける。 移住した時の苦労、そして第二次世界大戦の際の迫害、四国に置いて行った子供達との長い間の別れ…。 でも、キヨさんの語り口は決して暗いものではないもの印象的。 単純にふんぎりをつけたから。と思ってしまいそうだけれど…でもひょっとしたら、言葉少ないからこそ、深い想いもあるのかもしれない…とも感じた。 本文の他に、最終的に編集にあたったダフォニー・マラットの解説、キヨさんの夫シゲキヨ氏のインタビュー、そしてロイ・キヨオカの文章が二編納められている。「われらアジア系北米人」と「親愛なるルーシー・フミ(日系カナダ人リドレス事務局気付)」。 これを読んでいて、日系二世であるロイの、人種としてのアイデンティティと、成長時に所属していた世界でのアイデンティティの分裂を感じ、つい、アゴタ・クリストフ(『文盲』)を思い出してしまった。その分裂を表出したのが言語に関係していたせいかもしれない。

Posted byブクログ