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こぶたのロビンソンのおはなし 新装版 の商品レビュー

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デボンシャーの農場に…

デボンシャーの農場にいた小ブタのロビンソンが、ブタとして、これまでにないほどの、かわった冒険をするお話です。

文庫OFF

2020/02/20

ピーターラビットシリーズ最終章にして最長編(全八章)のこのおはなし、いつもの独特な世界観はそのままに、ハラハラドキドキのエンターテイメントなテイストが加わって、もしやシリーズ最高傑作なのでは…。 絵の好みだけでいうと、ブタさんよりはウサギやネコやリスのほうが可愛くてなお良かったの...

ピーターラビットシリーズ最終章にして最長編(全八章)のこのおはなし、いつもの独特な世界観はそのままに、ハラハラドキドキのエンターテイメントなテイストが加わって、もしやシリーズ最高傑作なのでは…。 絵の好みだけでいうと、ブタさんよりはウサギやネコやリスのほうが可愛くてなお良かったのにとは思いますが、ブタならではの物語になっているので、味わえば味わうほどに、この五重あごのブタさんの愚かさまでもがいとおしくなってきてしまいます。 以下、自分の備忘のためのあらすじ。 年老いた漁師のサムとその奥さんベッツイの飼い猫であるスーザンのとある一日から物語は始まります。人間に飼われている猫であるということが明記されておりながら、スーザンはベッツイの帽子とショールを借りて二足歩行でかごを片手におつかいに行くのです。 途中、犬のスタンピイと出会って、腰をかがめて挨拶をします。スタンピイは、猟犬のボブと猫のパーシイと家政婦のミス・ローズ(この人は人間なのでしょう)と暮らしていて、こちらもどうやらおつかい途中のようで、肉の包みを咥えていたため横目でスーザンを見ただけでした。スタンピイのほうは四足歩行です。 この絶妙さがたまりません。 スーザンのおつかい道中を描くことで、この漁師町の様子がいろいろと映し出されるわけですが、波止場に止まる船のなかのある一隻に一匹のブタがいることにスーザンは気づきます。なんとなくそのことが気にかかり、その夜、大漁で機嫌よく帰還したサムの振る舞うニシンのごちそうを食べたあとも、「どうしてあんなところにブタがいたのかしら…」と考えながら眠りにつくのでした。 …と、これで終わりでも、もうじゅうぶんピーターラビットっぽい(とはいってもピーターもラビットも出ませんが)のですが、スーザンが見かけたあのブタこそが我らがロビンソンで、二章から始まる彼の冒険譚が本編というわけです。 ロビンソンは、この港町から遠く離れた牧場で、鶏(家畜)を飼うふたりのおばさん(ブタ)と暮らしていたのですが、太りすぎて運動性能の落ちたおばさんたちの代わりに、港町で開かれる市へおつかいに行くことになりました。 いくつも牧草地を越えてゆく道すがら、ヒツジの奥さんや地主のペパリルさん(これは人間)といった親切な人たちに会い、ひとりで市まで行くというロビンソンに感心したり心配したりしてくれます。町に着いてからも、賑やかな市において目的の買い物を達成すべく売り買いに奔走するロビンソンを、いろんな人たちが助けてくれます。一章に出てきた犬のスタンピイも再登場します。誰からも愛されるロビンソン、かわいいなあ。 …と、これで終わりだったとしても、それでももうじゅうぶんピーターラビットっぽい(ピーターもラビットも略)のですが、ここから手に汗握る展開が。 第六章、買い物も終盤、あと一息というところで、ロビンソンにあやしい水夫が声をかけます。ロビンソンは礼儀正しい良い子ですが、ノーと言えないところは欠点でした。いんぎんな態度で「自分の船をぜひ見てほしい」と言う水夫に手を引かれ、連れ立って船へ乗ってしまったのです。スーザンが見たあの船です。 水夫は船のコックでした。二章の冒頭にあった、「ロビンソンのふたりのおばさんはこのおはなしにはもうあまり出てきませんが、最後はベーコンになりました」という無情な文章が読者の脳裏によみがえります。でもロビンソンの脳裏にはよみがえりません。 船は海へ出ます。船では水夫たちがロビンソンにそれはそれは良くしてくれました。ごちそうをいくらでも食べさせてくれたのです。 訳知り顔で預言者めいたことを言ってくる船付きの猫がいましたが、ロビンソンにはこの猫の態度はよく理解できませんでした。そのうち猫が、なにやら意味ありげな日にちを口にするようになりますが、もう動くのも億劫になったロビンソンは食事とうたた寝を繰り返す日々を送るだけです…。さあ、可愛いロビンソンはどうなってしまうのか?! そして衝撃の結末。

Posted byブクログ