1,800円以上の注文で送料無料

佐々木邦 心の歴史 の商品レビュー

2

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2011/07/16

佐々木邦という小説家の名前を聞く時、いつも「赤ちゃん」(晶文社、1978年)を初めて読んだ時の新鮮な驚きが甦る。それまで日本の小説では味わったことのない、たぐいまれな明るいユーモアに満ちた作品だったからだ。以来、この著者の名は、そのそのハイカラなアメリカ風のユーモアのセンスと共に...

佐々木邦という小説家の名前を聞く時、いつも「赤ちゃん」(晶文社、1978年)を初めて読んだ時の新鮮な驚きが甦る。それまで日本の小説では味わったことのない、たぐいまれな明るいユーモアに満ちた作品だったからだ。以来、この著者の名は、そのそのハイカラなアメリカ風のユーモアのセンスと共に、読み手に部類の幸福感をもたらす著者として記憶されている。タイトルが何やら重い雰囲気でとっつきにくかったものの、最初に置かれている2編のエッセイ「芭蕉の蛙」、「テーブル・スピーチ」を読むうちに、俳句好きでシャイな著者の意外な一面を知り、次第になじんでいった。タイトル作の「心の歴史」は、ある人物のロマンスの歴史を綴った小説だ。著者と同年代と思しき人物、丸尾善三郎を主人公に配し、功なり名遂げたにも係わらず、戦後の公職追放にあって不遇の時を過ごす一人の老人の述懐を軽いユーモアを交えながら描いている。書かれた時代が戦後間もなくということで、今とは隔世の感があるが、この小説をみずから英訳して米国で出版したというチャレンジ精神は、著者自身が自らの英語力とユーモアセンスが米国で通用すると思っていた証しではないだろうか。(残念ながら作中に示唆されている「Confessions of an Old Fool」なる著書はネットでも検索出来なかったのだが、、、)なお、この作品の底本は、「佐々木邦全集(全十五巻)」(講談社、1975年)によるが、オリジナルは1949年の発行である。

Posted byブクログ