障害者と地域生活 の商品レビュー
福祉に関する思想や政策や制度や現状に付いて、専門家と呼ばれる学者や現場のスタッフが説明している。How to本として知識の獲得に役立つだろうし、差し当って制度を上手に利用する手立てを提供しているだろうから、要領よく生きられる人にとっては役に立つだろう。 そういう意味では確かに、...
福祉に関する思想や政策や制度や現状に付いて、専門家と呼ばれる学者や現場のスタッフが説明している。How to本として知識の獲得に役立つだろうし、差し当って制度を上手に利用する手立てを提供しているだろうから、要領よく生きられる人にとっては役に立つだろう。 そういう意味では確かに、条件付きばかりの複雑で変更ばかりの内容を丁寧に説明してくれているけれど、肝心の行政による制度が何を目指しているのか中心軸も方向性も見えてこないから、不安を抱えた上での暗闇の中で取り合えず進む一歩にしかならない。 これを読んでいると行政が隅々まで管理している姿だけがよく見えてくるし、そこに胡坐をかいた研究者や管理者が、矛盾だらけの空論を掲げて頭ごなしに、利用側に回されている国民に語っている自己満足の姿しか見えてこない。 問題意識は持っていても、その管理社会から飛び出す事に躊躇しているようである。 国民を行政がチェックし評価している仕組みが当り前のように出来上がっており、国民が行政をチェックし評価する仕組みが皆無であれば、帰り道が無いのだから当然ながら迷子になるしかない。 行政によって様々な形が複雑に入り組んで場当たり的に用意されてきたようだけれど、時間と空間のずれた中でそれぞれの仕組みが凸凹で本質となる中心軸が見えない。 これらを機能させるには一方通行である政策と制度の在り方を、対等に循環できる民間参加に変えなければならない。 それには行政のありようが、民間に我が事のように見えなければならない。 行政は国民の代理として業務に当たるべきモノであり、現状のように管理者に治まるべきでない。 その仕事は速やかな事務的処理とその体験からの提案と調査とその報告を主として、国民一人一人をチェックしたり評価したり判断したり選択したりする権利の無い事を再確認するべきだろう。 結局個人の人権や人格やプライバシーを、法やおそらくはそれに準じたであろう行政が自ら獲得した力で保障することの矛盾がある。 地域社会はそうした行政の在り方につぶされてきた歴史があるわけで、今更形式だけで地域生活を打ち出しても受け皿の無くなった状態を放置したままでは機能しないだろう。 現状の問題は国民が地域と言う実体の無くなっている歴史の上に住んでいると言う現実である。これをいかに回復しどう成長させて行くかが最大の課題だろう。 そこを議論せずに先は見えてこない。 現状の枠組に沿った政策もシステムも砂上の楼閣と言う事でしかない。 問題意識は持っていても、過去にしがみついた模索なので、暗闇から出れずに空回りしているようにしか見えない。
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