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TN君の伝記 の商品レビュー

4.6

20件のお客様レビュー

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19世紀の後半50年…

19世紀の後半50年間、つまり明治維新前後の時代を生きた、TN君の伝記。著者は最後までTN君と呼び、実名は明かしていませんが、読めばまぁ、わかるでしょう。自由や民主主義の真髄を問い直す、大人も子どもも読んで欲しい本です。「より自由になるということは、より進歩することではない。より...

19世紀の後半50年間、つまり明治維新前後の時代を生きた、TN君の伝記。著者は最後までTN君と呼び、実名は明かしていませんが、読めばまぁ、わかるでしょう。自由や民主主義の真髄を問い直す、大人も子どもも読んで欲しい本です。「より自由になるということは、より進歩することではない。より文明開化することではない。ひとりひとりが、より自己に目覚めることだ」・・・

文庫OFF

足軽の子に生まれ、ル…

足軽の子に生まれ、ルソーに学び、人間の自由を求め続けた一人の思想家TN君の伝記です。子供向けの本ですが、明治時代舞台物が好きな大人にもオススメです。

文庫OFF

2024/09/07

◆誰の伝記かを明らかにしない伝記 伝記といえば、必ず偉人の名前が書名に入っているのが通例。 しかし、本書は「TN君の伝記」と題して、名前を明らかにせず、あとがきでも明かしていません。 その理由は簡単。まえがきに書いてありますが、 「知ってほしいのは、彼の名前ではなくて、彼がどん...

◆誰の伝記かを明らかにしない伝記 伝記といえば、必ず偉人の名前が書名に入っているのが通例。 しかし、本書は「TN君の伝記」と題して、名前を明らかにせず、あとがきでも明かしていません。 その理由は簡単。まえがきに書いてありますが、 「知ってほしいのは、彼の名前ではなくて、彼がどんなふうに生きたかということだから。 そのためには、名前なんてじゃまになる。そう思ったから」だそうです。 幕末から明治にかけ生きた人で、いかにして明治政府が生まれ、国会が開かれるに至ったかを、 民衆に寄り添ったTN君の視点から、生き生きと描いています。 司馬遼太郎の「司馬史観」の影響からか、明治国家は、 日本の近代化を成功させたとして、ともすると美化して語られがちですが、 本書を読むと、当時の政府が、 民主主義をいかに恐れ、弾圧していたかを、改めて思い知らされます。 TN君は、そのときどきの情勢を絶えず冷静に分析し、 いつも目標のその先を長期的視点から考えていました。 そうした姿勢や人柄には、大いに感じるものがあります。 54歳で癌で亡くなりますが、 「死んだらすぐに火葬場に送って荼毘にしろ」と遺言したため、 葬儀は、宗教儀礼のない無宗教葬として行われました。 これが今日の「告別式」の始まりと言われています。 ちなみに、この人が一体誰なのかは、 歴史の教科書にも出てくる人ですから、調べればすぐにわかりますが、 著者も明かしていないので、私も一応ネタバレは避けることにします。

Posted byブクログ

2023/03/15

 読み始めて半分ぐらいまでは 面白く、わくわくして読み進めました。が。途中から主人公TN君の人生がだんだんうまくいかなくなり、事業に手を出して失敗、食べるにもことかくようになり、社会からも「過去の人」「時代遅れの人」とみなされるようになってくると、読むのがつらかったです。反権力の...

 読み始めて半分ぐらいまでは 面白く、わくわくして読み進めました。が。途中から主人公TN君の人生がだんだんうまくいかなくなり、事業に手を出して失敗、食べるにもことかくようになり、社会からも「過去の人」「時代遅れの人」とみなされるようになってくると、読むのがつらかったです。反権力の側でがんばる人たちはたいがいそうなるのが、わかっているだけに、もっとうまく世渡りして!といいたくなってしまう。こんなヘンな読み方をしたのは私が妻の立場で読んでいるからかな? 主人は すごく感激して、私にもぜひ読むようにと言っていたのですが、彼もどちらかというと、反体制支持で、選挙ではいつもがっかりしていたことを思い出します。

Posted byブクログ

2022/09/17

1976年に刊行された伝記。『子どもの館』という雑誌に連帯されたそうだ。TN君は「東洋のルソー」とも呼ばれた著名な思想家のことだが、本書では本名は一切出てこない。何べんも名前を聞くと、それだけで分かった気になってしまう、と著者は考えるからだ。 本書で描かれるTN君は、理想を追求...

1976年に刊行された伝記。『子どもの館』という雑誌に連帯されたそうだ。TN君は「東洋のルソー」とも呼ばれた著名な思想家のことだが、本書では本名は一切出てこない。何べんも名前を聞くと、それだけで分かった気になってしまう、と著者は考えるからだ。 本書で描かれるTN君は、理想を追求しつつ、それを現実にどう落とし込むかも考える人物である。だから、自由民権運動の過激化を批判し、その大同団結を唱える(そして、失敗する)。一方で、自由党系の伊藤博文との合流については、手厳しく批判する(が、結局合流して立憲政友会ができる)。 1976年という時代に、このようなTN君のイメージが描かれているのが、面白い。著者の念頭には、過激化した学生運動と野党の内部対立とがあり、これらを乗り越える存在として、TN君のような人物に期待したようだ。果たして、著者の期待は叶えられたのだろうか。

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2020/11/25

 著者のなだいなだ氏は医師でもあり、本名は堀内秀という。TN君(名前は明かされない)の医師がたまたま堀内という名だったらしい。余命を宣告してしまう場面にもユーモアが混じる。おかげで「一年半有」と「続一年半有」という名著が生まれた。  TN君は語る。“より自由になるということは、...

 著者のなだいなだ氏は医師でもあり、本名は堀内秀という。TN君(名前は明かされない)の医師がたまたま堀内という名だったらしい。余命を宣告してしまう場面にもユーモアが混じる。おかげで「一年半有」と「続一年半有」という名著が生まれた。  TN君は語る。“より自由になるということは、より進歩することではない。より文明開化することではない。ひとりひとりが、より自己に目覚めることだ。だれもたよりにせず、だれに支配もされずに生きることに目覚めることだ。” 世の中がいっぺんに変わり、3か月先さえ読めない今、明治という曲がり角を生きたTN君の思想や陰日向の活動は、未来をほんのり灯す希望に感じられた。

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2020/03/01

子どもの頃から図書館にあり、気になってはいたが読まずに来た。ティーンエイジャーになってからTN君が誰かということも知ったが、さして興味がある人物でもないし、ティーンエイジャーは児童書を進んで読みたくないので、放置。 さらに長い時間が経ち、ふと図書館を見るとまだある。 数十年間出版...

子どもの頃から図書館にあり、気になってはいたが読まずに来た。ティーンエイジャーになってからTN君が誰かということも知ったが、さして興味がある人物でもないし、ティーンエイジャーは児童書を進んで読みたくないので、放置。 さらに長い時間が経ち、ふと図書館を見るとまだある。 数十年間出版され続けている(しかも売れてなさそう、読まれてもなさそうなのに)ということは、何か理由があるに違いないと、やっと読むに至った。 いい本だった。 たいして売れていないだろうに、出し続けている福音館書店にまず敬意を表したい。 で、この本はTN君こと中江兆民の伝記であると思っていたが、読んでみると兆民の私生活の描写などはあまりない。確かに彼の生涯を描いてはいるのだが、兆民という、自由民権運動の思想的柱となった人物を通して、幕末から明治という時代がどんな時代だったか、また歴史の教科書に載っている人物たちが何を考え、どう行動したかを描く作品だった。 あとがきで著者が書いている通り、「TN君の伝記を書いたのは、君たち(読者)に、その見えない部分(歴史のかげになって見えない部分)を、TN君の目をかりて見てほしいと思ったから」(p389 カッコ内は本文にない)という意図が、読めばはっきりする。 大久保利通、木戸孝允、西郷隆盛、西園寺公望、伊藤博文、幸徳秋水…歴史に名を遺すという意味では、兆民より上の人物たちだが、ほとんど表に出ることなく生涯を終えた兆民の思想がどれほど影響を与えたか(あるいは反発を招いたか)が伝わる。 とにかく名言、名場面続きで、面白いので、暗い挿絵を敬遠しないで若い人にも大人にも読んでほしい名著。 「権利ってもんはな、天から降ってくるようなもんじゃねえ。いくら、あって当然の権利でもよ、待ってて手に入るわけじゃねえぜ。」(p84) 「より自由になるということは、より進歩することではない。より文明開化することではない。ひとりひとりが、より自己に目覚めることだ。だれもたよりにせず、だれにも支配されずに生きることに目覚めることだ」(p163) 「いいかね。西郷が立ったのは仕方がない。彼は追いこまれたのだ。彼は機を見て行動する人間ではない。義のために行動する古い武士だ。それが、彼の人望のささえとなっている。機を見、行動する大久保には、人望がない。だが、義によって行動するものは、機をえらべない。わかるかね。人間には、そうした二種類の人間がいる。西郷は失敗する。それは、彼自身にもわかっている。それを知りながら立ったのが西郷なのだ。そして、それを知りながらくわわっているのが、西郷軍の若者だ。だから成功はおぼつかない。しかし、それが意味のないことだといったらまちがいだ。彼は革命をしようとしているのではない。抵抗だ。抵抗には抵抗の意味がある。しかし、君が革命を考えているのだったら、それは、このあとにしかこないだろう。」(p204) 「なにを理想とするかということと、いま、なにをするかということを、ごっちゃにしてはいかん。」(p296)

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2020/03/03

2019.8月。 大好物。日本史の授業は好きだったけど、授業は歴史の表面だけ、概要だけをなぞったもの。それを痛感。1つの時代、出来事、人物にはそれぞれ当たり前だけど深い物語があるわけで。こういうの学んだ方がよっぽどいい。読んでておもしろいのと同時にちょっと前の日本で起きたこと、そ...

2019.8月。 大好物。日本史の授業は好きだったけど、授業は歴史の表面だけ、概要だけをなぞったもの。それを痛感。1つの時代、出来事、人物にはそれぞれ当たり前だけど深い物語があるわけで。こういうの学んだ方がよっぽどいい。読んでておもしろいのと同時にちょっと前の日本で起きたこと、そして今の時代と重なってみえてくることが、ぞわぞわ恐ろしくて。TN君はあなたでしたか。

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2017/05/28

三酔人経綸問答の南海先生の恩賜民権から回復民権議論へ;戦後の新憲法はアメリカから与えられたものだが、それをよりどころとして、自分たちの力でえた権利と同じものにするべきでは?303〜4p もし選挙人が、選挙の時に投票しただけで、全ての責任を議員に預けてしまったら、国会は、せみやか...

三酔人経綸問答の南海先生の恩賜民権から回復民権議論へ;戦後の新憲法はアメリカから与えられたものだが、それをよりどころとして、自分たちの力でえた権利と同じものにするべきでは?303〜4p もし選挙人が、選挙の時に投票しただけで、全ての責任を議員に預けてしまったら、国会は、せみやかえるの競走場か、いもむしの陳列場と変わらない。337p 帝国主義;それは、愛国心というやつをたていととし、軍国主義をよこいととして織り上げた政策です。377p→幸徳秋水『20世紀の怪物・帝国主義』 無神論の哲学がないところでは、理は感情につねに打ちのめされてしまう。384p

Posted byブクログ

2016/06/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

現代の日本の状況と似ていてビックリでした。 TN君の伝記というていをとっているけど、なだいなださんの考えがストレートに伝わってくる本でした。 心の自由の大切さを改めて感じました。嫌な時代になった時に、流されやすい自分が果してきちんと意見が言えるのか・・・ 私への宿題です。

Posted byブクログ