山口昌男著作集(1) の商品レビュー
『本の神話学』(中央公論社、1971年)のほか、『人類学的思考』(せりか書房、1971年)や『道化的世界』(筑摩書房、1975年)に収録された論考七編がまとめられています。 『本の神話学』で著者は、「思想史としての学問史」という構想を思いえがいたことがあったと語りはじめます。「...
『本の神話学』(中央公論社、1971年)のほか、『人類学的思考』(せりか書房、1971年)や『道化的世界』(筑摩書房、1975年)に収録された論考七編がまとめられています。 『本の神話学』で著者は、「思想史としての学問史」という構想を思いえがいたことがあったと語りはじめます。「それは、知識の存在形態(蒐集・保管・創造)の一つとしての学問に、特定の時代、地域の文化がいかに反映するかということを、学問の分野と既成の枠の中に押し込めないで、通分野的に、そして意識の他のあり方―すなわち演劇、絵画、文学といった「他の」諸々の創造に携わる行為とのかかわり合いにおいて展望に収める方法」についてのもくろみであったと説明がなされています。 そのうえで、スチュアート・ヒューズやピーター・ゲイなどの西洋精神史についての研究を引きあいに出しながら、アビ・ヴァールブルクとカッシーラーとの出会いや、モーツァルトのオペラといったテーマについて論じつつ、さまざまな知の領域を横断する著者の思索が展開されています。 また、本書に収録されている「精神史のフォークロア」では、上の論考で著者が示したのと同種の思索のありかたが、林達夫の仕事のうちに見いだされています。 「文化と狂気」「狂気の民俗学」などの論文は、「狂気」について論じつつ、知の領域において既存の地平を越境していく動きがどこから生まれるのかということについての考察がおこなわれています。
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[ 内容 ] 「知」の内実もスタイルも、その「知」が構成される時代の権力作用と不可分の関係にあることを暴いたのが1970年代の哲学思想だった。 そこから出発したポスト構造主義の思潮は、80~90年代にかけてそうした認識をややもすると自己言及的なニヒリズムの迷路へと導く傾向があった...
[ 内容 ] 「知」の内実もスタイルも、その「知」が構成される時代の権力作用と不可分の関係にあることを暴いたのが1970年代の哲学思想だった。 そこから出発したポスト構造主義の思潮は、80~90年代にかけてそうした認識をややもすると自己言及的なニヒリズムの迷路へと導く傾向があったが、山口はもともと違っていた。 知の歴史的・社会的構成への想像力を、「思考する」ことの純粋な快楽と発見への歓喜として示しえた山口の精神史的著作の輝きを、新たな世紀はどう位置づけ直すべきなのだろうか。 本巻は、山口の「知」が生成されるもっとも本質的な場としての「書物」とその隠喩が奏でる、著述家の思考の夢の世界を示している。 [ 目次 ] 本の神話学 文化の中の知識人像―人類学的考察 文化と狂気―ホモ・デリルス 狂気の民俗学 精神史のフォークロア 徒党の系譜 アマチュアの使命 エイゼンシュタインの知的小宇宙 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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