くっすん大黒 の商品レビュー
出てくる人出てくる人みんな狂人で、じつは全員ヤク中っていう設定でした、と言われても驚かない。 支離滅裂と言ってもいいほどのシュールな展開がリズミカルに続き、個人的には結構ちょくちょくぞくりとした。笑いと恐怖は紙一重とはよく言ったもの。 そして読み終わった後に街を歩いたら、すれ違う...
出てくる人出てくる人みんな狂人で、じつは全員ヤク中っていう設定でした、と言われても驚かない。 支離滅裂と言ってもいいほどのシュールな展開がリズミカルに続き、個人的には結構ちょくちょくぞくりとした。笑いと恐怖は紙一重とはよく言ったもの。 そして読み終わった後に街を歩いたら、すれ違う人がすべからく変人のように思えて困った。もしかしたら世界って、私が思うより狂っているのか。やほほ。 『河原のアパラ』では特に、人間も動物も無造作に死にまくり、流血したりし、たいして悲しまれるでもない。 主人公達は最後には袋小路に近い状態に追い込まれる。 けれども、ラストシーンで彼らは「全身腐った鮒まみれになって」爆笑している。 グロテスクで残酷で意味不明な世界でも、笑えれば勝ち、ということなのかな、と思ったり。
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今日は、深いんだか浅いんだかよく分からない町田康さんのこんな小説。 デビュー作である。 『くっすん大黒』 町田康 (文春文庫) 表題作「くっすん大黒」と「河原のアパラ」を収録。 前代未聞、空前絶後、前人未到な町田ワールドは不思議世界が爆発している! いやーそれにしても怒涛の文章ですよねぇ。 句点が極端に少なく、よって改行も極端に少なく、非常に丁寧に一つ一つのことが説明されているにもかかわらず、謎がどんどん深まっていくという。 つまり、しょうもないことの積み重ねで、一種のミステリーゾーンを形成してしまっているのだ。 さて、あらすじを書くことにそんなに意味はないかもしれないが、主人公の「楠木正行」は、三年前に突然働くのが嫌になり、毎日酒を飲んでぶらぶらしている中年男である。 妻に逃げられた一人の部屋に、ふてぶてしく転がる不愉快極まりない五寸ばかりの“金属製の大黒”を今日こそ捨ててこますと決意し、彼は一人旅立つ。 (実際は古新聞に大黒を包み、日和下駄を履いてぶらぶらと散歩) この時点で、この楠木正行の変人ぶりがうかがえるわけだが、彼を取り巻く人間模様はさらにすごい変人オンパレードであるため、そのうち楠木がだんだんまともな人間に見えてくるから不思議だ。 登場人物の中でも、特に中年女性(彼はすべての中年女性を“おばはん”と呼ぶ)のパワーには、読者までもが生気を吸い取られるようだ。 まずしょっぱな、美空ひばり東京ドーム公演をテレビで大音量で見る古本屋の赤いスウェーターのおばはんが登場するが、こんなのは序の口、服屋店員の吉田のおばはん、客のチャアミイ(これは最強)、桜井女史や上田京一の取り巻きのおばはん達もすごい。 砂浜のラストシーン、友人の菊池により、“くっすん大黒”というタイトルの意味が明らかにされる。 ここはすごく好きですねー。 くっすんかぁ。 いいな。 一瞬、作者の内面の可愛らしさを垣間見た気がしたなぁ。 良い場面である。 「河原のアパラ」の主人公も、ケンタッキーフライドチキンの前で“おおブレネリ”を大声で熱唱してしまうという性格破綻者だが、もともと彼はうどん屋で日々楽しく働くまっとうな生活人であったものが、災難としか言いようのないある事件をきっかけに、転落人生を歩むことになる。 でも、これはこれでそれなりに楽しそうにも見え、そしてやはりここでも、河原で友人の淀川五郎と笑い合うラストシーン(実際は下品な大爆笑)が、そこはかとなく哀しく、かつ切なく、何だかしみじみ爽やかなのである。 町田作品に見られる、堕落のあとに少ししんみりとしてしまう妙に爽やかな“何か”は一体何なんだろう。 狂気と隣り合わせの静けさや切なさ。 それは作者自身が胸に抱えている何かなのかもしれないし、全然そうじゃないかもしれない。 結局、深いんだか浅いんだか、という拙文冒頭の感想に辿り着くわけだな。 筒井康隆氏は、本書を「断固としていい加減になろうと決意したいい加減さ」と絶賛している。 町田康の意味不明でありながら格調高く尊大で大仰な文体が完全に伝染し、本書と梶井基次郎の「檸檬」との類似点を大げさに論じている三浦雅士さんの解説も面白い。 ところで… Wヤングのギャグを知っている私はおばはんであろうか(笑)
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初めての町田康作品、表現が面白いと聞いて読んだ☺︎ くっすん大黒・河原のアバラ 河原のアバラの方が個人的には読んでて面白かったかな、後あまり使わん日本語も出てきてちょっと賢くなったわ。お気に入りの表現たくさん見つかった!
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22.02.03 坂を転がる石ころのように、はたまた川を流れる落葉のように、軽快な堕落がずんずん進む。なんと言っても独特な文体。冒頭部の勢い良さに心を掴まれ、お約束を忘れた世界が心地よい。自分はやはりクズなんだなと、もしくはクズに憧れているんだろうなと、馴染めない世界を面白がれる...
22.02.03 坂を転がる石ころのように、はたまた川を流れる落葉のように、軽快な堕落がずんずん進む。なんと言っても独特な文体。冒頭部の勢い良さに心を掴まれ、お約束を忘れた世界が心地よい。自分はやはりクズなんだなと、もしくはクズに憧れているんだろうなと、馴染めない世界を面白がれる時間だった。
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町田康ならではの文章、独特過ぎる!出てくるおばはんもキャラが強すぎて思わず声出して笑っていました。 亀を爆発させたり猿を茹でたり滅茶苦茶、でもおもしろい!
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ずっと気になっていた町田康さんの作品。 処女作とのことで購入、読了。 こりゃあ………おもしれーーーーーー( ̄∇ ̄) 何か最近、純文学系大当たり祭だなー。 立て続けに、ハマりそうな作家さんに巡り会えた予感。 ぶっ飛んだ不思議な世界観、読んだことの無い特徴的でリズミカルな文章。...
ずっと気になっていた町田康さんの作品。 処女作とのことで購入、読了。 こりゃあ………おもしれーーーーーー( ̄∇ ̄) 何か最近、純文学系大当たり祭だなー。 立て続けに、ハマりそうな作家さんに巡り会えた予感。 ぶっ飛んだ不思議な世界観、読んだことの無い特徴的でリズミカルな文章。 圧倒的な「この人にしか書けない」感、唯一無二ですねー。 2作品入ってますが…かたや「家にある木彫りの大黒像がイラつくから捨てに行ったんだけど、気付いたら蛸専門芸術家探しの旅に出てる話」だし、かたや「うどん屋で働いてたら濡れ衣で警察に追われるハメになり、気付いたらケンタッキーでおおブルネリを歌ってて、最終的には知らない人の遺骨が振りかけられたBBQを無理矢理食わされようとしている話(もはや自分でも何書いてるか分からない笑)」だし…もう設定が謎過ぎるwww あと「頭おかしい人」を書かせたら天下一品だなぁと(´∀`) チァアミイ、ディレクター桜井、天田はま子、津山(偽)…もうアク強過ぎて、思い出すだけで…くくくくくwwwww 本作はストーリーに意味なんて求めてはいけません。 というより、意味なんてもはや求める方が野暮かと…ただただ爆笑して、心地良く酔いしれるだけで良いじゃんと。 それくらいに思わせてくれるくらいの破壊力がある作品だと思います。 あと、本作は外で読まない方が良いです。 確実に吹き出して変な目で見られますので…( ´ ▽ ` ) <印象に残った言葉> ・医者へ行け、医者へ。(P50) ・『淫乱バスト店・秘密の大戦略』の主演女優は主演男優に大変な目に遭わされ、「ああ、いい、いっちゃう、いっちゃう、ああん、いま、いま現在、ちんぽが入っている」などと絶叫している。その絶叫をBGMに、いま現在、自分が考えているのは、ことここに至った発端と経過についてである。(P69) ・そして、この場合、誰が、どの役があるわけではなく、ある者が注文を聞けば、いまひとりはうどんをつけ、という具合に機に望み変に応じて行動するべきなのであり、その役割分担は変幻自在なのであって、自分と淀川五郎はそうやって、阿吽の呼吸、和の精神のうどんマンシップにのっとって、仕事をこなしてきたのであるが、これらの一連の仕事の流れの中で、やっていて一番おもしろいのは、チャッチャッチャッの役である。(P98) ・俺、高校のときとき、うどん部だったんだ〈中略〉あと、もちろん経済学的な側面もやるし、文化人類学的なアプローチもやるしね、うどんについて、とにかく考えるんだよ(P137) ・五郎と自分は、親指から鮮血をほとばしらせめ、わあわあ泣きながら六畳に駆け込んでいった津山に、「じゃあ、すみませんでした。お邪魔しました」と言って表へ出た。(P159) <内容(「BOOK」データベースより)> 三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んでぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない金属の大黒、今日こそ捨ててこます―日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作、待望の文庫化。賞賛と悪罵を浴びた戦慄のデビュー作 大黒様を捨てようとして始まる日常の中の異次元世界。ユーモラスな語り口と奇妙な形で噴出する鬱勃たる感情が話題を呼び、日本文学史に衝撃的に登場した芥川賞作家の処女小説。「河原のアパラ」を併載している。第19回(1997年) 野間文芸新人賞受賞とともに第7回(1997年) Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。
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読書初心者なのでライトな文体な本から。 関西特有か、話のテンポも良いし、とにかくしょうもない感じが面白い。 本人は真剣にやってるけど側から見ると面白いっていうまさにコメディ。 大黒捨てられないくだりと、吉田とチャアミィの下りが大好きです。
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友人から薦められて読んでみたものの、ハマることはなかった。ただただ落語のように話が進んでいき、大きな事件もなく小さな出来事が続いて気がついたら終わっている。 いつも読書から何かをもらおうとする姿勢で読んでいたが、この本はただただ流れていくやりとりをのぞいて見てる感じだ。そう言った...
友人から薦められて読んでみたものの、ハマることはなかった。ただただ落語のように話が進んでいき、大きな事件もなく小さな出来事が続いて気がついたら終わっている。 いつも読書から何かをもらおうとする姿勢で読んでいたが、この本はただただ流れていくやりとりをのぞいて見てる感じだ。そう言った意味で読書を楽しむことができたのかも。
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最初のさわりだけ読もうとページをめくったが最後、あれよあれよと奇妙で出口のない変な人ばっかり出てくる世界に迷い込んでしまう。ゴミがいっぱい捨てられてる花壇に大黒をいい感じで置いてみようとしたら警官に捕まりそうになる。自分の人生にはおおよそ起こりそうがないけどでもどっかわかるな、そ...
最初のさわりだけ読もうとページをめくったが最後、あれよあれよと奇妙で出口のない変な人ばっかり出てくる世界に迷い込んでしまう。ゴミがいっぱい捨てられてる花壇に大黒をいい感じで置いてみようとしたら警官に捕まりそうになる。自分の人生にはおおよそ起こりそうがないけどでもどっかわかるな、その置かれ具合にこだわる感じ。
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町田康を初めて読んでみた。 無職の3年間飲んでばかりいる男が、妻にも逃げられ、 ふと部屋に転がっている大黒を捨てるだけの話なのに。 面白い。ユーモアに富んでそして文学作品でもある。 最後のオチへの、急展開。面白ろかった。
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