聖の青春 の商品レビュー
■難病と闘いながら、29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士の伝記。 その生涯は純粋で激しく、哀しいが温かい。 水晶のように純粋で、温かい輝きを放つ人生の記録。 思い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の...
■難病と闘いながら、29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士の伝記。 その生涯は純粋で激しく、哀しいが温かい。 水晶のように純粋で、温かい輝きを放つ人生の記録。 思い腎臓病を抱え、命懸けで将棋を指す弟子のために、師匠は彼のパンツをも洗った。弟子の名前は村山聖。享年29。将棋界の最高峰A級に在籍したままの逝去だった。名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を、師弟愛、家族愛、ライバルたちとの友情を通して描く感動ノンフィクション。第13回新潮学芸賞受賞作。 第13回新潮学芸賞 将棋ペンクラブ大賞
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客先からの帰りの電車の中で、涙をこらえられなくなった。 手で目を隠し、眠くなったふりをしながら泣いていることを隠した。 感極まって、ページを進められなくなった。 目指すものがはっきりしていて、努力する情熱も他人に勝る才能も持っているのに、 それに打ち込むための命の力が足りない。時...
客先からの帰りの電車の中で、涙をこらえられなくなった。 手で目を隠し、眠くなったふりをしながら泣いていることを隠した。 感極まって、ページを進められなくなった。 目指すものがはっきりしていて、努力する情熱も他人に勝る才能も持っているのに、 それに打ち込むための命の力が足りない。時間が足りない。そんな人生。 おれは楽に生き過ぎている。そんなことを考えながら読んでいた。 この本は、29歳という若さでこの世を去った、村山聖という棋士の物語。 愛嬌のある性格と風貌。誰にも物怖じもしない。 尊敬できる人は素直に、心から尊敬する。 なんでこんな人間があの若さで死ななければいけなかったのだろう。 命を削りながら名人を目指した村山聖の人生は異常なほど密度が濃い。 著者をはじめとする村山聖の周りにいた人々が、どれだけ影響をうけ、 そして愛情をもって彼に接していたか・・・ 文章の中からそれが伝わってくる気がした。 「将棋の子」に比べると将棋自体の描写が多いため、 村山聖が指した美しい棋譜に感動することはできない。 でも、彼の歩いた人生とその過程で生まれたたくさんのエピソードは、 胸に刻み込まれるように、強く印象に残った。 著者は、書きたいというより、書き残さずにはいられなかったんではないか。 そう感じた一冊だ。 生きているうちにその存在を知ることができなかったのが、残念でならない。
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泣いてしまいました。 寝なきゃいけないのに、一気読みしてボロボロと。 亡くなっているのは分かっていても、 どうしても、この人に死んでほしくないという気もちで読みました。 将棋は分かんないし、宙ぶらりんでほっておかれるエピソードも 結構あって、読みにくいといえば読みにくいんだけど...
泣いてしまいました。 寝なきゃいけないのに、一気読みしてボロボロと。 亡くなっているのは分かっていても、 どうしても、この人に死んでほしくないという気もちで読みました。 将棋は分かんないし、宙ぶらりんでほっておかれるエピソードも 結構あって、読みにくいといえば読みにくいんだけど、 それでも、聖のひたむきさと、人間っぽさと、 周りの人の、特に森先生の温かさがすごくよかった。 作者の思いいれがすごい伝わってきた。 勝手にラブストーリーを描く作家さんかと思っていたけど、 次もなんか読んでみたい。
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若くして亡くなった天才棋士の、駆け抜けたとしか言いようのない一生。 彼にとっては亡くなるまでの時間全てが青春だったんだろう。 読み終わると題名がぴたりとはまっていることに溜息が出る。 真っ直ぐで、純粋過ぎて荒々しい性格が、その棋風に反して人間味溢れていて、うん、凄いなって...
若くして亡くなった天才棋士の、駆け抜けたとしか言いようのない一生。 彼にとっては亡くなるまでの時間全てが青春だったんだろう。 読み終わると題名がぴたりとはまっていることに溜息が出る。 真っ直ぐで、純粋過ぎて荒々しい性格が、その棋風に反して人間味溢れていて、うん、凄いなって思った。 一時期将棋が好きで。 まあ将棋って言うか、羽生善治さんが大好きだったんです。7冠達成したころなのでKinkiのデビュー前くらいか? 今思い返せば読めもしないのに棋譜を眺めたり、将棋の雑誌をどきどきしながらレジに持って行ったのを思い出しました。 将棋は全く出来ませんし、ルールも良く分っていませんが、あの神経の焼き切れそうな密度の戦いに惹かれました。 私はまだミーハーで済みますが、あれに取り付かれる人は人生をかけて棋士になるんでしょうねえ。 お勧めの一冊、です。
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将棋というと羽生さんというばっとみ普通の青年がものすごく強いらしく、「へえ、なんか漫画みたいな世界だな」くらいにしか感じなかった世界。それが本作を読んで将棋の魅力を知るとともに、それに取り憑かれ将棋と戯れ、戦った青年に強い興味を持った。難病で失った体力を、漫画に囲まれた小さく汚い...
将棋というと羽生さんというばっとみ普通の青年がものすごく強いらしく、「へえ、なんか漫画みたいな世界だな」くらいにしか感じなかった世界。それが本作を読んで将棋の魅力を知るとともに、それに取り憑かれ将棋と戯れ、戦った青年に強い興味を持った。難病で失った体力を、漫画に囲まれた小さく汚い下宿で息をひそめて将棋を打つために回復させていた執念。そして死。再読したい本です。
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会社の友人に勧められ初めて読んだ大崎 善生さんの著作。 全く興味を持ったこともなく、見聞きしたこともない将棋会の厳しい世界を生々しく綴っており、思わず入り込んでしまった。 この作品をきっかけに、以降2作品を読むに至った。
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将棋の神様に選ばれた少年の、短くも壮絶な人生を追ったノンフィクション。普通ノンフィクションって、著者は黒子に徹するもんだけど、我が儘で頑固で憎たらしい村山九段を暖かく包み込んで見守る、大崎善生の語り口が素晴らしい作品。
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遠い人だ。そう思わせる人がごくまれにいる。 私にとっての遠い人とはプロ棋士の羽生善治、この一人だ。天才の名を欲しいままにする彼は、時折どこか遠くを見やるような目つきをする。 この人と比べたら、アメリカの大統領やグルジアの孤児の方がよほど近しく思えてしまう。対戦やインタビューの記...
遠い人だ。そう思わせる人がごくまれにいる。 私にとっての遠い人とはプロ棋士の羽生善治、この一人だ。天才の名を欲しいままにする彼は、時折どこか遠くを見やるような目つきをする。 この人と比べたら、アメリカの大統領やグルジアの孤児の方がよほど近しく思えてしまう。対戦やインタビューの記事を読むほどに、その隔たりは濃度と高さを増していく。 そんな彼が一度だけ、近しく思えた時がある。今はもういない誰かを悼み、懐かしむ瞳をしていた。遠いどこかではなく、確かに何か一つを見据えていた。それが、このノンフィクションの主役である村山聖の話をした時だった。 将棋界において羽生棋士と並び、西の天才と呼ばれたのが村山聖である。プロの棋士になるには、才能の有無はもちろんだが、それ以上に時間が大きな壁になるという。彼には他の人以上に、病気によるハンデが常につきまとった。幼い頃に患った重い腎臓病が、生涯彼を苦しめた。二十九年という短すぎる生涯を、彼をアマチュア時代から見守ってきた著者が鮮明に記している。 彼が病と将棋の狭間で闘う様は、凄まじいの一言に尽きる。発作が始まり寝込む際、彼は必ず水道の蛇口を少しゆるめておく。朦朧とした意識の中、流しに落ちる水滴の音だけが、自分はまだ生きていることを証明してくれる。この音が聞こえるうちは、まだ大丈夫だ、と。 そうして部屋でたった一人、水音に耳を澄ませる。来るべき対戦の日に備え、自分の体がどこまで動くのかを、神経を研ぎ澄ませて量るのだ。 彼は、将棋に対して、文字通り命を燃したと言えるだろう。病がもたらす絶望感から彼を救ったのは、間違いなく将棋だ。 しかし同時に、将棋が彼の命を縮めた。読み進めるうちに、ある仮定を抱いてしまうのだ。もし、彼に将棋の才能が無かったら、これほどまでに自分を追いつめるようなことは無かったのではないか、と。 才能の有無と、生きることが、必ずしもイコールでつながるわけでは無いのだと、思い知らされてしまう。そして、ページを手繰るたびに、祈るような気持ちになる。 少しでも永らえるよう、安静にしていて欲しいと願う気持ちと、何もかも振り切って将棋に賭けることを期待する気持ち。矛盾した二つの感情がないまぜになる。 それでも私たちは見ているしかない。彼は、自らの力でどこまでも行ける世界と出会ってしまった。脂汗をかき、顔面蒼白になりながら最善の一手を考える彼を、止める術など誰も持ちはしないのだ。将棋という弱肉強食の世界では、力の無いものは追いつめられる。同時に、強者は自分をより高いところへと追い込んで行かなくてはならない。ひしひしとした厳しさが染みる。しかし、どこか切なさを湛えている。止まることを許されない才能の、光芒の話だ。 よく言われる例えだが、人の命は星の輝きとよく似ていると、この本を読むたびに思う。持ち得る熱量が同じである以上、激しく光る星ほど寿命は短い。それでも、燃え尽きた後も記憶に残る人々を、天才と呼ぶのだろう。 何億光年と離れた星の光は、星自体が消えても地球に届く。光すら届かなくなっても、まぶたの裏に焼き付いて明滅し続ける。村山聖という将棋の天才は語られていくのだ。
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数年前に読んだけど、ここに登録してなかったみたい。 私は大崎善生が好きで、彼の本はほぼ読んだ。 その中の1冊が本書である。 将棋の世界は全く知識がなかったし、将棋もさせない私だけど、この本は夢中になりました。何回泣いたことか…。 羽生善治はニュースやメディアによく出ていたので...
数年前に読んだけど、ここに登録してなかったみたい。 私は大崎善生が好きで、彼の本はほぼ読んだ。 その中の1冊が本書である。 将棋の世界は全く知識がなかったし、将棋もさせない私だけど、この本は夢中になりました。何回泣いたことか…。 羽生善治はニュースやメディアによく出ていたので知っていたが、村山聖のことは全く知らなかった。29歳でA級に在籍したまま亡くなった彼の生き様は素晴らしかった。 これまた偶然なのだが、ハチミツとクローバーという漫画が好きで読んでいたのだが、その著者が、村山聖をモデルにした「3月のライオン」という漫画が連載されている。そこでは脇役であるけど、病弱でポッチャリ体系で愛されキャラは村山聖にそっくりだ。 また、私の仕事の本社が千駄ヶ谷にあり、将棋会館のすぐ近くにあったので、また何かの縁を感じてしまった。 将棋会館の前で「聖君たちはここで…」と様々なことを思いだし胸がいっぱいになりました。 ドラマ化もされているようですね。知らなかった!機会があればみたいです。
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涙が出た。あまりに壮絶な生き方で。 病と闘い、将棋と闘い、その生涯を全力で駆け抜けた一人の棋士の物語。自らの死の淵を覗きながら、将棋という果てしない道を歩くというのはどんな気分なんだろう。その片鱗を、ほんの少しだけ垣間見せてくれる本。 余談だが、関西の怪童村山の最強のライバルで...
涙が出た。あまりに壮絶な生き方で。 病と闘い、将棋と闘い、その生涯を全力で駆け抜けた一人の棋士の物語。自らの死の淵を覗きながら、将棋という果てしない道を歩くというのはどんな気分なんだろう。その片鱗を、ほんの少しだけ垣間見せてくれる本。 余談だが、関西の怪童村山の最強のライバルであり憧れとしてちょこちょこ登場する東の天才・羽生がものすごくかっこいい。
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