私法理論のパラダイム転換と契約理論の再編 の商品レビュー
ヨーロッパ近代私法の体系を、合意理論と法律行為理論の二大体系に区分し、前者の端緒をプーフェンドルフ、後者の端緒を「権利の体系」の樹立者カントないしサヴィニーに求める研究。この本では、法律行為理論の私法原理がいかにして成立したかが扱われる。プーフェンドルフの私法理論がある程度紹介さ...
ヨーロッパ近代私法の体系を、合意理論と法律行為理論の二大体系に区分し、前者の端緒をプーフェンドルフ、後者の端緒を「権利の体系」の樹立者カントないしサヴィニーに求める研究。この本では、法律行為理論の私法原理がいかにして成立したかが扱われる。プーフェンドルフの私法理論がある程度紹介されたあと、その枠組をある程度踏襲しつつ、衡平原理などの点で客観的・実質的基準を骨抜きにしつつあるヴォルフの自然法論が取り上げられたあと、カントの『人倫の形而上学』の革命的意義が取り出される。カントにおいて「義務の体系」が自律的意思を中核とする「権利の体系」に転換したとされるが、その際にとりわけ、カントにおいて「法的占有」が「権利」と同一の概念であることから、権利の主観的要素としての自律的意思、客観的要素(あるいは制約条件)としての共存可能性条件が取り出される。これを法学的に彫琢したのがサヴィニーであり、彼において権利が「意志支配」に置き換えられる。また客観的基準という次元でも、サヴィニーはいわゆる裸の意思説を採用したのではなく、カントを引き継いで共存可能性条件にこだわったとされる。近代私法システムの原理的研究であると同時に、ヴォルフ、カント、サヴィニーのモノグラフとしてもまた興味深い指摘が含まれている研究である。
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