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梁塵秘抄のうたと絵 の商品レビュー

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2023/03/02

『梁塵秘抄』に収められた今様の歌と、中世の絵巻にえがかれた人びとのすがたや風景を読み解くことで、中世の人びとの暮らしを解明している本です。 「はじめに」で著者は、中世の人びとの暮らしを知るために、ひろく貴賤上下の人びとが熱中した今様を知ることは欠かせないとしながらも、従来の歴史...

『梁塵秘抄』に収められた今様の歌と、中世の絵巻にえがかれた人びとのすがたや風景を読み解くことで、中世の人びとの暮らしを解明している本です。 「はじめに」で著者は、中世の人びとの暮らしを知るために、ひろく貴賤上下の人びとが熱中した今様を知ることは欠かせないとしながらも、従来の歴史学の研究が政治史や思想史、経済史を中心とするものであり、歌の研究は遅れてきたと語っています。しかし、絵巻にえがかれた絵画についての研究が歴史学においても推し進められるようになり、著者自身も『絵巻で読む中世』(2005年、ちくま学芸文庫)という本を刊行して、中世の絵巻を手がかりに人びとの暮らしの実態にせまる試みをおこなっています。本書ではそうした試みがもう一歩推し進められており、絵巻とともに『梁塵秘抄』の歌が考察の対象にとりあげられています。 本書では、今様の内容から絵巻の一場面へ、あるいは絵巻の一場面から今様の内容へと著者の連想にしたがって議論が展開していくので、ややとりとめのない議論がつらなっているような印象もあるのですが、聖と遊女についての考察などは興味深く読むことができました。

Posted byブクログ