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明治の建築家・妻木頼黄の生涯 の商品レビュー

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2010/06/03

日本橋のデザインを手がけた明治の気骨ある建築家──という程度の認識で興味を持ち、買ったまま放置すること2年余り。ようやく図書館の本の合間に一念発起で読了。が、これが実に面白い! 明治維新という地殻変動の狭間から捻り出されるように立ち現れ割拠する傑物達が互いにぶつかり合って立てる、...

日本橋のデザインを手がけた明治の気骨ある建築家──という程度の認識で興味を持ち、買ったまま放置すること2年余り。ようやく図書館の本の合間に一念発起で読了。が、これが実に面白い! 明治維新という地殻変動の狭間から捻り出されるように立ち現れ割拠する傑物達が互いにぶつかり合って立てる、琅々たる軋みの激しさよ。旗本の矜恃、若気の至り、意地と才覚で敵陣の懐ふかく道を切りひらき、地歩を築いてのちは大蔵省をバックに絶対的な権勢を振るう頼黄。一言で言えば“嫌な奴キャラ”だが、数や派閥、既得権などものともせず我が道を貫く生き様には文句の付けようもなくしびれる。悲願の議事堂建設がついに果たせなかったのは運命の非情だけれど、それも後を継ぐ武田五一・矢橋賢吉らの手で成し遂げられた。変転する時代に浮沈しながら堅く糾われていく想いの糸を見た気がした。

Posted byブクログ