密貿易島 の商品レビュー

大浦太郎(著者)

2011/09/04

「戦後まもなくの与那国島では混乱の最中に密貿易が生じ、現在では想像もつかない程の繁栄を極めた――」という話をツイッターで知り、その詳細が気になり借りた。

筆者は実際に密貿易――当時は救援物資の運搬と認識していたらしいが――に関わった張本人のためか交易の記述がリアルで、旅程や取引方法が生々しい。

ただ、『わが再生の回想』という副題なだけあって、解説書というよりは随想に近く、密貿易の編成を年代順に追ってるわけでなく、途中で無関係な筆者の前半生（ノモンハンに立ち会った回想など）の記述が入る。が、それも面白く、戦中戦後の空気を感じさせてくれた。

戦後間もなくに生まれてすぐに姿を消した無秩序な空間に憧れはしないが、興味を惹かれる。