子どもと絵本を読みあう の商品レビュー
絵本がときどき出てくる、深刻で、感傷的なエッセイ。感傷的というと月並みな印象を与えるが、その月並みさこそ、誠実さになり、救いになることも多いことを私は知っている。だから本書の価値を否定はしない。 本書の舞台は病院だ。病院にはタブーがある。タブーには、心のセーフティネットとして、...
絵本がときどき出てくる、深刻で、感傷的なエッセイ。感傷的というと月並みな印象を与えるが、その月並みさこそ、誠実さになり、救いになることも多いことを私は知っている。だから本書の価値を否定はしない。 本書の舞台は病院だ。病院にはタブーがある。タブーには、心のセーフティネットとして、それなりの意味があるが、息苦しさの源でもある。解放だけでは危険だが、解放を意識しない取り組みは空虚である。著者の取り組みはエッセイにしていいかどうかは疑問だが、貴重だと思う。 ・「なにいってるの。りえさんは、病気になれていないじゃない」 ・彼女は、くまのことを「なぜ名前をいわなかったのか」と言った。それはそのまま「心臓病の患者」として生きさせられることの中で見失いがちな自分自身に向けての問いかけではなかったか。 ・ここには、ふたつのごうまんが、背中をおしあい、悲鳴をあげている。無意識のうちに彼女からなにかをひきださせようとしたごうまんと、そのごうまんさを、ドクターとクライエントというひとつの関係をふみにじって、自分のところへひきよせようとしたごうまんと。 ・ひとりで、とじこもって、かぎをかけて、泣く場所が、さゆみにはなかったことに、みんな、気づいた。 ・〈くくる〉ことのたやすさと、〈くくられる〉ことの痛みを、同時に知った。 ・わかる、理解する、ということの次にくるものは、〈何かをしてあげる〉ではなく〈感じあう〉ということだったのである。
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