ハンセン病文学全集(第1巻) の商品レビュー
北条民雄の小説を読んでみようと手に取った。 結果として、北条民雄氏以外の作品も読めたので、これを読んで良かったと思う。 著者のいた療養所を舞台に書かれているから、静かな筆致であっても、胸に迫るものがある。 やや駆け足で読んだので、そのうち再読したい。
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ハンセン病恢復者という狭いコミニュティの中からそこまで優れた文学者や文学作品が生まれてくるとは思えず、あまり内容には期待していなかったが、大きく裏切られた。被害者意識はたびたび感じられるが、技術的な面でも遜色ない、よくできた文章だと思った。構成もいいけれど、なにより描写が素晴らし...
ハンセン病恢復者という狭いコミニュティの中からそこまで優れた文学者や文学作品が生まれてくるとは思えず、あまり内容には期待していなかったが、大きく裏切られた。被害者意識はたびたび感じられるが、技術的な面でも遜色ない、よくできた文章だと思った。構成もいいけれど、なにより描写が素晴らしい。分かりやすすぎず、くどすぎないけれど確かに伝わる。短編として非常によくまとまっていて、読めば読むほどに理解の深まる、良質な文学作品だと思った。 小泉孝之さんはハンセン病の自治会長であり人権回復運動の中心人物として活動していたということを考慮するとこの作品の意味はさらに深まる。現実の活動をしていた人間と文学作品の中の人間の、あまりの分裂性。一歩引いた、冷めた視線というものをきちんと持っていながらも自分が現実に与えられた役割を演じるということ。ここに思い至るとき、小説の意味というもの、この著者にとっての小説を書く意味というもの、その重さを改めて感じざるを得ない。
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