白衣の騎士団 新装版(下) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
超訳版のラノベ『白の団と黒の太子』が、タイトルで上手く表現している通り、"White Company"は騎士団とは言い難い。通り過ぎた後にぺんぺん草も生えないレベルの略奪で大儲けする、自由傭兵の集まりである。 また、同ラノベ版がサブタイトルに書いた「気になるあの子の父親は決闘マニア」も、現代人の感覚からすれば、騎士道の名誉を求めてやまぬナイジェル卿は『決闘マニア』に他ならないと言えよう。 19世紀の英語圏人むけの歴史娯楽物語としては、秀作である。 百年戦争当時の騎士階級、傭兵団、自由民や農奴、詐欺師、旅の途上で出会うだろう人々を、主人公及び二人の道連れとのやり取りを通して見事に活写している。 ただ、ラテン語、フランス語がさらっと会話文に出てくるため、読むための教養が必要であったことは想像に難くない(英語の原典はインターネット・アーカイブスで公開されている)。 21世紀人にとっては、上記のラノベ版の紹介を真に受けて『ラブコメ』として読むと 「大半は道中記と戦争もので、主人公と騎士の一人娘との関係はほんの数章、ラストはやっつけハッピーエンド」 と肩透かしの感がある。 そして、百年戦争及び紋章学や騎士道の基礎知識がないと、 「政治劇や戦闘パートで何言ってんだかさっぱり分からない」 ことになりかねない。 また、『やっつけハッピーエンド』と先述したように、最終章の駆け足つじつま合わせは恐ろしい圧縮度であった。 途中もかなりのご都合主義で、危地に助けが現れたりする。 例えば、下巻における農民反乱の際、白衣隊がやってくる。だが『夜明け間際に、反乱の起きた城の近くを、完全武装した一隊が通りかかったのは何故か?』は、理由が一切明かされないなまま話は進む。 主人公サイド無双チート上等ラノベのノリで読み、楽しむことをお勧めしたい。 なお、アマゾンレビューにもあったように、ラノベ版でサムキン・エイルワードは女性化してある。 ラノベ版が基本、本書内容のとおりとするなら、わざわざ女体化する必然は全くない。女好きの古強者、傭兵隊でも一目置かれた射手長で良いはずだ。 人物紹介文とイラストだけが女体化。ウケ狙いするなら、本文を大きく改変するくらいの努力が欲しかった。それらが無い女体化は、かえって蛇足である、と評価した(ため、ラノベ版の購入購読は見送った)。
Posted by
- 1