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グラン・ヴァカンス(1) の商品レビュー

4.1

26件のお客様レビュー

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2016/06/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本を閉じるとき、いま私は、望んで、この作品世界の「長い夏休み」をぶち壊しにしたんだな、という気持ちになる。物語を進めたのはジュールであり、その前に読み手であるわたしであるような。 わたし=読者は誰にでも感情移入ができるし、自己を重ねることができる。主人公として据えられたジュール(老ジュール、あるいは「父」をハックしたジュール)にも、海岸に押し寄せたランゴーニ・蜘蛛たちにも、世界で残虐を尽くしたゲストたちにも、はたまたそれぞれの視点を紡ぐ登場人物たちにも。その一方でAIたちは人、ゲスト、プレイヤー、の手を離れた楽園で暮らしていたのであって、わたしたちが同一化することを拒んでいるようにも思える。「物語の登場人物は一ページめが捲られたその瞬間に、記憶を持つ。過去を所有する」の文が印象深い。

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2014/10/02

<永遠の夏休み>と題された仮想リゾートのAIたち…でまったりした始まりからは想像つかない後半。早く読みたいのと読みたくないのとでぞわりとした。人間の嗜虐性と悪趣味を満たすための苦痛に満ちた区界…あとがきに「残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とあるけど全くその...

<永遠の夏休み>と題された仮想リゾートのAIたち…でまったりした始まりからは想像つかない後半。早く読みたいのと読みたくないのとでぞわりとした。人間の嗜虐性と悪趣味を満たすための苦痛に満ちた区界…あとがきに「残酷であること、美しくあることだけは心がけたつもりだ。」とあるけど全くその通り。次作も読みましょう…

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2013/07/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白い。 一口にSFと言っても色々なのがあるが、この作品はわたしの好みにぴったり。 キャラクターに割り当てられた役割があるとか、倒錯気味の恋愛感情、そもそものベースに複雑な男女関係が織り込んである設定。 どれも好きだ。 この作品の前半に散りばめられた伏線は、ほぼ全て回収されたように感じるけど、続編では天使について詳しく分かるのかな。 楽しみだ。

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2012/03/11

人が訪れなくなった大途絶から1000年、ネット上の仮想リゾート「数値海岸」で、それぞれの「設定」を与えられて、毎日同じロールを繰り返すAI達に突如として「蜘蛛」が襲いかかってくる。 彼らに対抗するために、一か所に集められたAI達は、不思議な力を秘める「ガラスアイ」を武器に立ち向か...

人が訪れなくなった大途絶から1000年、ネット上の仮想リゾート「数値海岸」で、それぞれの「設定」を与えられて、毎日同じロールを繰り返すAI達に突如として「蜘蛛」が襲いかかってくる。 彼らに対抗するために、一か所に集められたAI達は、不思議な力を秘める「ガラスアイ」を武器に立ち向かうが・・。 とても精緻に組み上げられたバーチャル世界は、「生身」の読者にはなかなか理解しずらい部分もある。が、その「仮想的」な感覚を文体として表現する作者の想像力には舌を巻く。 この「ぶっ飛び感」はSF小説ならではだと思う。

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2012/02/11

いっきに読んでしまった。 既読の『象られた力』である程度予想はしていたが、やはり残酷。 しかし、残酷ながらも、とても美しい物語でした。 AIたちはプログラミングされてはいるものの、意思を持っている。 そして徐々に暴かれて行く裏のプログラム。 あまり小説の映像化は賛成ではないのだ...

いっきに読んでしまった。 既読の『象られた力』である程度予想はしていたが、やはり残酷。 しかし、残酷ながらも、とても美しい物語でした。 AIたちはプログラミングされてはいるものの、意思を持っている。 そして徐々に暴かれて行く裏のプログラム。 あまり小説の映像化は賛成ではないのだが、この作品は映像として見てみたいと思ってしまった。 蜘蛛の描写など、どうなるか興味津々である。 早くラギット・ガールも読まなければ。

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2011/08/13
  • ネタバレ

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御茶の水のファミレスでほぼ終日集中して読了。外は爽やかな夏晴れだったのですが、本の中は実にクレイジー。 AIの住む完璧にプログラミングされた世界での仮想的な戦い・でしかないはずなのに、あまりに超絶なレベルの描写力に一気に読まされます。最初から飛ばしてるので途中で休めない。評判通りの凄惨さにこちらの神経も疲弊しますが、この危うさに抗えない。作者曰く表現としての「苦痛」は読み手の心を揺さぶるのだそうで、悪趣味というよりは確信犯的なのですが、それにしても何を読んでるのか分からなくなる感覚。 夏の区界・大途絶・数値海岸・ドリフトグラス・・・イベントアイテムのネーミングに目眩する。疲れました。超傑作です。

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2011/06/27

1000年間も途絶した仮想空間での,AI達の死闘という設定が面白く,先が気になります。戦闘描写や世界観など,設定がなんというか,飛びぬけているように感じました

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2011/06/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 ピクセルが官能素と呼ばれていること、これがこの小説を一番端的に表している。プログラム内部データへのアクセス=官能的(根源的快の)接触。  ハック・クラック行為が詩的・叙情的なビジュアルで描かれ、まずその描写で一気に惹きこまれた。肉体的境界を透過する<鳴き砂>の交歓、バグを補修する存在を<蜘蛛>として知覚する住人たち。ガラス細工のコンパイラ<視体>(これがまた夏の風景によくなじむ)。その中でも地ならし屋、<鯨と天使>の描写は特に惹き込まれるものがあった。  「アイデンティティ境界を解く」ことでAIたちが文字通り一つになって交わる姿が巧みな筆致でなんども描写され鮮烈に記憶に残る(性的な交わりだけではない――互いの境界を超えた「苦痛の交わり」もその筆致で繰り返し繰り返し描写される)。  肉体を持たないAIだからこそもっとも深い場所で根源的な交歓を果たせるという事実に、逆説的なおかしみと不可侵の美しさを見る。  逆説的といえば、自身をAIと認知しながらもロールを外れられず、それでもしっかりアイデンティファイしているAIたちの存在も面白い。  物語のほうはと言えば、「完成された世界」に終わりを運ぶものの正体といえば当然……とメタ的な視点で見ていたら、予想を外す展開でびっくり。あの無慈悲さを持つランゴーニが斥候ですらなかったとは。  とにかく、次巻が楽しみ。

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2011/01/28

AIの暮らす場所・夏の区画。ある日そこに謎の存在から攻撃が及んだ。AIと謎の存在による戦争を描いた作品。 グラスと呼ばれる武器を駆使するあたりでは安いバトルだと思っていたけど違いました。まあ、AI達の殺し方や過去の出来事にかんする記憶の描写は残酷すぎるとおもいましたが、神話のよ...

AIの暮らす場所・夏の区画。ある日そこに謎の存在から攻撃が及んだ。AIと謎の存在による戦争を描いた作品。 グラスと呼ばれる武器を駆使するあたりでは安いバトルだと思っていたけど違いました。まあ、AI達の殺し方や過去の出来事にかんする記憶の描写は残酷すぎるとおもいましたが、神話のような話でした

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2010/08/22

待ちに待った、飛さんの最新作。 繊細で美しい文体と、こちらの固定観念を打ち砕く力強い表現に、ぐいぐいと引き込まれる。 たくさんの謎を吐き出しながら展開するのに、謎解きよりも登場人物たちの(あるいは人間以上に人間らしい)行動や感情に関心が引っ張られた。 実は謎に首を傾げたのは読了後...

待ちに待った、飛さんの最新作。 繊細で美しい文体と、こちらの固定観念を打ち砕く力強い表現に、ぐいぐいと引き込まれる。 たくさんの謎を吐き出しながら展開するのに、謎解きよりも登場人物たちの(あるいは人間以上に人間らしい)行動や感情に関心が引っ張られた。 実は謎に首を傾げたのは読了後しばらく経ってから。 今後の作品が、本当に楽しみ。

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