煙の中の肖像 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
創元推理文庫と交互に読んで、こちらが理解を補完してくれたところもあった(特に2章のクラッシーの最初のところ)けれど表紙と帯が個人的にダメ。 細身で長身らしい金髪女性の煙のように消えかけた姿が安易なだけでなく、紫のタートルネックに無造作に下ろしたボサボサの髪、猫背気味で横にも微妙に傾いて精気のない間の抜けた素の姿勢が、(たいした深慮遠謀がないとしても)次々と計略を繰り出して男達を利用し富と地位を手にしてゆくこのヒロインとことごとく相容れない。ピカレスクの主役ながら穏やかな印象の絶世の美女は芝居なら演者や脚本演出で難しくても挑戦しがいがあるかも知れない(本作が1950年の発表で、1947年の映画「過去を逃れて」のジェーン・グリアに当て書きしたかもしれないと思われる)が、イラストで視覚化は無理と思うしトライすべきでもない。まぁもともと下世話な題材ながら面白く読ませてくれる話なのに、帯のコピー「女は、怖い」が安っぽさだけを強調してる。この短いセンテンスにわざわざ点を打つあたりもふた昔ぐらい前の感覚なのか、頭の悪い読者に訴求してますよ的な悪意に見えてしまい、好きな作家の本がこのような売られ方をすると悲しい。紹介文も、調べて悪女と判明してもその魅力にあらがえないように見える書き方は作品の内容と一致していない。ダニエルが話を聞いた証人のうち彼女の悪女ぶりを知る2人は自分の恥になるような彼女との顛末を話しておらず、事実を知りようがないことが終盤を盛り上げるカギであり本作品の魅力だから。よって作品自体は星5つ分楽しめたが、出版社の本作りにはゼロかマイナスをつけたい。 あと創元推理文庫はSI単位に直してくれているところこちらはインチ表記。
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