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逆説のユーラシア史 の商品レビュー

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2010/05/06

同著者で『クビライの挑戦』というのもあります。それとの違いから入ると、こちらは色々な投稿をまとめたものみたいで、どちらかというとトピックごとの詳説という感じ。必ずしも時系列の物語ではないです。問題を提起しようとしているように見える。 中国はいわゆる「元」の時代に大きくなったこと...

同著者で『クビライの挑戦』というのもあります。それとの違いから入ると、こちらは色々な投稿をまとめたものみたいで、どちらかというとトピックごとの詳説という感じ。必ずしも時系列の物語ではないです。問題を提起しようとしているように見える。 中国はいわゆる「元」の時代に大きくなったこと、「元」を中華(中国)王朝の一つと見るのは間違っている事、「元寇」の1回目と2回目は全然意味が違う事なんかが詳しく書かれている。後半は著者がイスタンブールの故宮で「集史」の原本を見たり「青花」の大コレクションを見た話、中国に残るモンゴル時代の碑の拓を集めて廻ったことなどの回想記。 特に印象的だったのは、モンゴル人の考える「国」と現代の我々がイメージする「国」ましてや「帝国」とはだいぶ違うかもしれない、という話。 軍隊同士が向き合って、相手方が降伏する。それをモンゴル語では「イルになる」と言ったそうなんですが、それは捕虜になるとか植民地になるとか言う意味ではなくて、「仲間になる」という意味なんだそうです。敵方もそれを知っていたからこそ雪崩をうってモンゴルに参加したし、そうでなければあれだけのスピードと規模で大帝国を築く事はできなかったし、ましてや維持できるはずもない、と。 人間にできることって想像以上にあるんだろうなと思える一冊。 なお、中国の版図が「元」で拡大した(正確に言うと中国「も」周辺諸国と併せて同じ国になった)後、「清」で中国としては最大版図に至り、それが現在の中国に受け継がれているという話は、平野聡『大清帝国と中華の混迷』(講談社,2007)に詳しいです。

Posted byブクログ