美しの里 の商品レビュー
義父を病院の定期健診に連れて行った帰り、 時刻はもう3時を過ぎていた。 「家へ寄って行きなさい。ちょうど菊が満開だから。」 菊、と言っても観賞ではなく、食用にする菊だ。 これを摘み取る作業も大変だが、その後で花びらを摘む作業もまた地道極まりない作業。 なんと言っても、茹でる...
義父を病院の定期健診に連れて行った帰り、 時刻はもう3時を過ぎていた。 「家へ寄って行きなさい。ちょうど菊が満開だから。」 菊、と言っても観賞ではなく、食用にする菊だ。 これを摘み取る作業も大変だが、その後で花びらを摘む作業もまた地道極まりない作業。 なんと言っても、茹でるとわずかばかりにしかならないので、 とにかく大量に処理しなければならないのだ。 多少、うんざりとした心持で、でも顔はニコニコと 「はい♪たくさん頂いていきます。」 そう言って作業にとりかかった。 秋の陽はつるべ落とし、か…。 すでに傾きかけた西日が、金色に輝く菊を照らし始めていた。 ぷっちん、 ぷっちん、 スーパーのポリ袋は大きいんだなぁ~。 一体いつになったら、いっぱいになる事やら・・・。 でも、ぷっちん ぷっちん、 柔らかい菊の花びらに触れるたびに膨らんで行く穏やかな気持ち。 暮れるたび、 尚、輝きを増してくる広い広い菊畑。 なんだか、ここにこうして今菊を摘んでいる事が どうしようもなく嬉しい。 嬉しくてしょうがない気持でいっぱいになっていた。 その帰り道に寄ったブクオフでこの本に出会った。 大きな絵本。 広げると、さっきの風景が広がっていた様な気がした。 『美しの里』 旅人は長い旅を経て、それはそれは美しい里へと辿り着きます。 「ここは、もしかして噂に聞いた桃源郷?」 そう思っても不思議ではないほど、光溢れる美しい景色。 星空、宇宙、お花畑…。 葉 祥明さんは広がりを描く天才ですね。 彼が思う桃源郷。 案外身近にあるのかも知れないな、と感じて購入した帰り道にキラリ。 一番星が空にひとつ輝き始めていた。
Posted by
- 1