1,800円以上の注文で送料無料

白の闇 の商品レビュー

4.2

21件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2019/10/22

感染性の「失明」により町が恐慌を来すという、カミュの『ペスト』のような劇が展開されるのだが、カミュのように主役の医者の超人的な姿はどこにも見えない。 隔離された患者たちの内部で起こる争い、保菌者(?)たちの全滅をひそかに願う行政組織、など、人間社会のおぞましい姿が描かれて非常に...

感染性の「失明」により町が恐慌を来すという、カミュの『ペスト』のような劇が展開されるのだが、カミュのように主役の医者の超人的な姿はどこにも見えない。 隔離された患者たちの内部で起こる争い、保菌者(?)たちの全滅をひそかに願う行政組織、など、人間社会のおぞましい姿が描かれて非常に不気味である。 都市中の人間が失明したら、というワンテーマSFのような設定を梃子にして、人間の呆れるほどの暴力性を暴く。 げに恐るべきは作家の想像力。 ジョゼ・サラマーゴは大半の長編が日本語訳されているようなので、続けて読んでみたい。

Posted byブクログ

2016/10/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なんて言うか、すごい深遠なテーマを扱った本なんだけど、とにかく文章が読みにくいことこの上ない感じ。異常な事態に陥った人々の人間性が試されると言うか…。内容はすごく考えさせられるものなんだけど、訳なのか元の文章なのか。主体がしょっちゅう変わるし、「」がないうえに、誰の言葉なのかがその都度変わっていたり。 ものすごく読むのに時間がかかってしまった。 それにしても恐ろしい世界だった。今自分にその事態が起きたらと想像すると、とても医者の奥さんグループのように生きられるか…

Posted byブクログ

2013/12/09

世界最高小説100の一冊。ポルトガル出身のノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴ著。  あるとき、突然、自動車を運転していた男が失明する。目の前が真っ白の闇になり、何も見えなくなってしまうという奇病である。しかもそれは瞬く間に伝染する、男を助けた男性、男の妻、最初にかかった眼科医、そ...

世界最高小説100の一冊。ポルトガル出身のノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴ著。  あるとき、突然、自動車を運転していた男が失明する。目の前が真っ白の闇になり、何も見えなくなってしまうという奇病である。しかもそれは瞬く間に伝染する、男を助けた男性、男の妻、最初にかかった眼科医、その診療所の待合室にいた少年、サングラスの女、受付の女性。最初の男が失明してからほぼ1日経ち、その深刻さを薄ぼんやりと自覚し始めた政府は患者と患者予備軍の感染者を精神病院として使っていた建物に隔離する。始め、10人に満たない隔離患者だったのが、時が経つと数十人に増え、最後には病院に収まらない300人ほどの白い失明者で溢れた。主人公ははじめの男がかかった眼科医の妻。ただこの妻だけはなぜか失明を免れた。理由は最後までわからない。しかし、自分が患者だと偽り、眼科医とともに最初の患者として精神病院に送られ、そこで巻き起こる予想しうる最悪の出来事たちをつぶさに見届ける目撃者になる。  完全隔離の施設である。外に出ようとすれば、監視している軍隊に銃殺される。近寄るだけで失明する伝染病である。巷ではその視界に入るだけで、失明すると言われてもいるらしい。恐怖のあまり自失した兵士に撃ち殺された10人を越える患者も現れ、その病院内の隔離された空間で、それぞれが生き延びなくてはいけなくなる。当たり前の生活が当たり前にできなくなる。トイレ、シャワーから始まり、食料問題がすぐに起こり、その空間の中でも支配しようとするもの、されるもの、反抗するものが骨肉の闘争を繰り広げる。院内での問題が深刻化する中、外の世界は白の闇がより深刻に世界を蔓延していた。  サスペンス・スリラーのようなプロットを持ちつつ、現代の我々の社会が直面する問題をえぐる。白い闇の患者と読者をリンクさせるためか、登場人物はすべて、名前ではなく職業や外面の特徴だけで語られる。より無機質であり、しかしそこにより強い現れ難い個性のくすぶりがこもる。我々は盲目であるというのが、著者の気づきであり、メッセージであった。  物語の最後、医者の妻が夫に語る言葉が印象的である。  「私たちは目が見えなくなったんじゃない。私たちは目が見えないのよ。目が見えないのに、見えていると?目が見える、目の見えない人々。でも見ていない。」  最後にはすべての人の目が開ける。見てくれを超えた愛の実りも私たちに与えてくれる感動がある。発表されて60年近い時がたったが、この寓話が我々に投げかけるものは、当時よりも一層深刻に感じる。 J.S.バッハ「音楽の捧げもの」を聞きながら 13/12/9

Posted byブクログ

2013/01/31

突然人々が失明した世界がおぞましいほどリアル。最後まで登場人物に名前はない。一人だけ失明を逃れ、すべてを目撃する医者の妻・涙の犬・教会で眼を白く覆われていた人物像、物語として面白いし示唆的。「目が見える、目の見えない人びと。でも、見ていない。」

Posted byブクログ

2012/11/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

車で信号待ちをしていた男が突然失明した。パニックに陥る彼を家まで送り届けた親切な男は、彼の車を盗んだ後に失明する。道端でうろたえる車泥棒を助けた警察官も失明し、最初に失明した男の妻も、彼を診察した眼科医も、眼科医の患者達もみな失明する。彼らの視界はミルク色の白い闇に覆われ、病はやがて国中に広がっていった。政府はもとは精神病院だった建物を利用して、失明した患者達と、彼らと接触のあった者達を隔離する。だが病院はすぐに満杯になり、秩序は崩壊する。病院の見張りを命ぜられた軍隊は、病気の感染を恐れるあまり、外に出ようとする患者を射殺し、中にいる者たちは食料と支配権を巡って争い合う。凄惨な暴力が蔓延していった結果、病院は火事になり、生き残った者達は地獄のような世界から外界へ戻る。そこは既に、地獄以上の場所に成り果てていた。 ある日突然、全ての人々の目が見えなくなったらどうなるか? もしもボックスに入っても容易に口には出せなさそうな世界を、淡々とした筆致で書き切る、見事な想像力と創造力。現実的に考えれば、もともとの視覚障害者がアテンドすることになるのだろうが、更に考えて行くとやはり世界は無秩序のち崩壊へと進むしかないかもしれない。 そんな世界を、悲壮なまでの冷静さで見つめているのが医者の妻で、何故か彼女だけが失明していない。夫の為に目が見えなくなった振りをして病院に入り、そこで巡り会った縁ある人々の為に行動する。話は彼女の視点で進むことになるかと思いきや必ずしもそうではなく、誰にも添わない三人称の語りは、遠くから世界を眺めているようでありながら、いつしか自分も視力を喪った人々の中に入り込んでしまっているような気にもさせられる。だから、ラストで医者の妻が『わたしの番だ』と思うとき、足元が崩れるような恐怖を感じるのだ。 人々が突然失明した理由は明らかにならず、突然快復した理由もまた分からない。喪失があり破壊があり、癒され再生したとき、そこに見える世界を支配しているものは絶望だけかもしれない。だが見えない地獄を生きてきたように、見える地獄をもまた、人々は生きて行かねばならない。医者の妻の言葉は、示唆に満ちている。 見えるか見えないか。見えているか見ていないか。いずれにせよそこには、命という名前がついている。

Posted byブクログ

2010/05/20

全世界が原因不明の感染症にかかり、失明してしまうという現代の寓話。 どうしてそんな感染症が広まったのか、なぜ突然元に戻るのか。 そもそもたった一人の女だけ、目が見える事の意味って???と考えればきりがない。どこまでも深読みしたくなる作品。 見えない事は人を不安にさせるけど、見...

全世界が原因不明の感染症にかかり、失明してしまうという現代の寓話。 どうしてそんな感染症が広まったのか、なぜ突然元に戻るのか。 そもそもたった一人の女だけ、目が見える事の意味って???と考えればきりがない。どこまでも深読みしたくなる作品。 見えない事は人を不安にさせるけど、見える事は人を絶望的にさせるのかも。

Posted byブクログ

2009/10/04

あるとき視界が、まるでミルクの海にもぐったように真っ白に包まれた。しかもこれは伝染する病。世間はこの病を知って戦慄し、病人たちを隔離する。そんな様子を、視力が正常であることを秘して隔離病棟に入った医者の妻が観察していく話。え、これって映画化するんだ。081122追記「ブラインドネ...

あるとき視界が、まるでミルクの海にもぐったように真っ白に包まれた。しかもこれは伝染する病。世間はこの病を知って戦慄し、病人たちを隔離する。そんな様子を、視力が正常であることを秘して隔離病棟に入った医者の妻が観察していく話。え、これって映画化するんだ。081122追記「ブラインドネス」って名前で映画になってました。

Posted byブクログ

2023/06/17

●限界状況に接した人間は、どこまでも残虐に利己的になれるものなのだ、と言うことを鮮やかに示したファンタジー小説。 あああああ怖かった。 や、私が言うのもなんですが、社会はお互いの配慮と信用と言うもので成り立っているのです。 それがなくなってしまったら、狡知に長け、他人から奪い取る...

●限界状況に接した人間は、どこまでも残虐に利己的になれるものなのだ、と言うことを鮮やかに示したファンタジー小説。 あああああ怖かった。 や、私が言うのもなんですが、社会はお互いの配慮と信用と言うもので成り立っているのです。 それがなくなってしまったら、狡知に長け、他人から奪い取ることのできる人間しか、生き残ることは出来ないのです。 極限状態では、友愛や秩序なんてものは第一に消滅するからね。 ●てなわけで、この本からは「おのれが最悪の状態に置かれている場合は、他人のために献身することは不可能であり、同時に他人も酷い状態にいるなら間違いなく助けを期待できないので、自分で自分を救うことを考えましょう」と言うサバイバルに関する基礎的教訓が得られました。お世話になりました。合掌。←作者が言いたかったこととは、たぶん、100%違うけどね・・・。 ●追記。『コンスタンティン』の監督が影響を受けたとどこかで言ってましたが、いったいどのあたりが・・・?

Posted byブクログ

2009/10/04

車を運転中の男が突然失明する。目の前が真っ白になるその病気は伝染し、事態を重く見た政府は失明者たちを、廃墟となった精神病棟に次々と隔離した…カフカ的不条理に追いこまれ、名前を持たぬ登場人物たちの、人の人たる理性やモラルが崩壊していく様子が、唯一失明を免れた勇敢な女性の目を通して描...

車を運転中の男が突然失明する。目の前が真っ白になるその病気は伝染し、事態を重く見た政府は失明者たちを、廃墟となった精神病棟に次々と隔離した…カフカ的不条理に追いこまれ、名前を持たぬ登場人物たちの、人の人たる理性やモラルが崩壊していく様子が、唯一失明を免れた勇敢な女性の目を通して描かれる

Posted byブクログ

2009/10/04

眼が見えなくなるという伝染病に国民全てが罹ってしまったら。想像を絶する世界が繰り広げられるのに、まるでその世界の様子すら白くぼやけて見えてくるような不思議な小説。

Posted byブクログ