映画はおそろしい の商品レビュー
本人が、自身の本や言葉への関心の薄さをどれほど強調しようと、黒沢清の文章はそこはかとないおかしみと洞察力と瞬発性に満ちている。 そのフォーマットの違いにも関わらず、私は彼の映画と同等の、時にはそれ以上の破壊力を感じる瞬間があって、この本に掲載されている文章の一部(トビー・フーパー...
本人が、自身の本や言葉への関心の薄さをどれほど強調しようと、黒沢清の文章はそこはかとないおかしみと洞察力と瞬発性に満ちている。 そのフォーマットの違いにも関わらず、私は彼の映画と同等の、時にはそれ以上の破壊力を感じる瞬間があって、この本に掲載されている文章の一部(トビー・フーパーとかオリヴェイラとかサンダンスとか)はまさに彼の真骨頂と言えるだろう。 しかも、驚くべきことに、ラストには「人間なんかこわくない」という大円団ともいうべき真に感動的な書き下ろしまで準備されている。カサベテスへの迂遠な、しかし、心からの感謝と賛辞。 『ならば私は、やはりあらゆる歴史から切り離された現在この時の「いかがわしさ」と「出鱈目さ」を積極的に受け入れようと思う。人間ドラマ、恋愛、政治、要するになんでもいいのだ。デジタルであろうがアナログであろうが構いはしない。それらをことさら有り難がりもせず恐れもせず、時間ある限り撮れる範囲のものを撮る』 この先に心震える宣言に至るのだが、それは読んでのお楽しみ。 映画、という名の世界への圧倒的な肯定の力。 そこに没入すること。畏怖すること。疑うこと。夢見ること。それら全てを含めて映画であること。 そう、映画なんかおそろしくはない。
Posted by
・映画はうそだと言われてしまうメディア。 ・人生にかかわる恐さをホラー、武器でなんとかできる怪物を相手にするのは活劇。 ・悪魔のいけにえ……観客の無意識の想像力をねじふせる。 ・ごく普通の映画なるものはどこにあるのか。 ・映画好きの観客は映画をすべて見ていると仮定するしかない。→...
・映画はうそだと言われてしまうメディア。 ・人生にかかわる恐さをホラー、武器でなんとかできる怪物を相手にするのは活劇。 ・悪魔のいけにえ……観客の無意識の想像力をねじふせる。 ・ごく普通の映画なるものはどこにあるのか。 ・映画好きの観客は映画をすべて見ていると仮定するしかない。→ゴダールは映画史を意識した映画作りをする。 ・イーストウッドは世界最強。 ・ユリシーズの瞳……串団子のような映画。 ・モンタージュに翻弄された歴史。 ・Helpless……暴力は、それ自体がすでに関係性だ。 ・感銘させる人間ドラマ/魅せるスペクタクル/センス。 ・要するにこういうものだという言い切りの頼もしさ。 ・フーパーやカーペンターやイーストウッドだけでなく、カサベテスを高く評価している。
Posted by
共感したよ。久しぶりだよ。なんとなく、でも真摯に、物語は作られるべきだよ。 抜き書き。 ・映画というのはどうしても現実と物語の中間に存在しているようだ。(たぶん小説も)P12 ・現実の死とは、おそらく何の誇張も省略もない無愛想な出来事に違いない。P69 ・『野外における危険な生...
共感したよ。久しぶりだよ。なんとなく、でも真摯に、物語は作られるべきだよ。 抜き書き。 ・映画というのはどうしても現実と物語の中間に存在しているようだ。(たぶん小説も)P12 ・現実の死とは、おそらく何の誇張も省略もない無愛想な出来事に違いない。P69 ・『野外における危険な生物』P201 ・ならば私は、やはりあらゆる歴史から切り離された現在この時の「いかがわしさ」と「出鱈目さ」を積極的に受け入れようと思う。人間ドラマ、恋愛、政治、要するに何でもいいのだ。デジタルであろうがアナログであろうが構いはしない。それらをことさら有り難がりもせず恐れもせず、時間ある限り撮れる範囲のものを撮る。おそらくそれは、作家性の否定ということになるだろうが、実は私はそれでほっと胸をなで下ろすのだ。作家……ああ何という不変の匂いが立ちこめるまぼろしのような存在。だって、もう一度言うが、私は絶対に上等の人間ではなく、無教養で通俗的で、およそ作家とは程遠いキャラクターであることがはっきりしている。どっこい映画は、そのような者にも撮ることができる、ということを証明するために私は撮る。それ以外にない。P265
Posted by
【目次】 序章 映画の授業 映画はおそろしい ホラー映画とは何か/ホラー映画ベスト50/ホラー映画の3本/トビー・フーパー『悪魔のいけにえ』の革命/コッポラの『ドラキュラ』を支持する おそろしい映画の正体生涯映画ベスト10/映画のある場所/映画にルールはない/NOと言える映像...
【目次】 序章 映画の授業 映画はおそろしい ホラー映画とは何か/ホラー映画ベスト50/ホラー映画の3本/トビー・フーパー『悪魔のいけにえ』の革命/コッポラの『ドラキュラ』を支持する おそろしい映画の正体生涯映画ベスト10/映画のある場所/映画にルールはない/NOと言える映像/映画が死ぬ時/映画と政治 ビデオも歌もおそろしい フィルムと男とビデオテープ/映画はMTVに快楽を売り渡してしまったが……/映画で人が歌う時/人が歌う映画 1加藤泰『真田風雲録』/人が歌う映画 2内田吐夢『たそがれ酒場』 地獄の11人 トビー・フーパーに賭けろ,そして真の面白さをつかみ取れ。/全世界はジョン・カーペンターに頭を下げよ。/悪いことは言わない。一度ジョン・カサベテスを見てみたまえ。/ゴダールとは何者か。/クリント・イーストウッド,世界最強の男/ディック・スミス,ハリウッドの賢人/タランティーノの時代がやってくるぞ。/われ鎮西尚一を発見せり。/鶴田法男の映画をみよう。/ビート氏の演技/相米慎二は何故アメリカでうけないのか。 地獄の5本 悪魔の成せるわざ アンゲロプロス『ユリシーズの瞳』/あまりに無茶なオペラ映画 オリベイラ『カニバイシュ』/モンタージュの幻惑 ゴダール『映画史』/映画の暴力を知る者 青山真治『Helpless』/“世界”に向き合うビジョン 青山真治『シェイディー・グローヴ』 おそろしい欲望 最強のインディペンデント映画作家を養成する/チャンバラ映画が撮りたい/藤田敏八主演で『エクソシスト3』を撮りたかった/モロ大阪 ゲームだっておそろしい 例えば「ドラゴン・クエスト」という名前が……/「ポピュラス」は,よくできたつつましやかなゲームである……/「ロビンとマリアンは死ぬまで幸せに暮らしました」……/そうなのだ。ドラクエII,あれは確かに狂暴なゲームだった……/いつかくるとは思っていたが,ついにその時が……/解けない謎について 地獄の読書録 現代日本映画の恐るべき秘密 山根貞男『映画の貌』/さりげない真実 『図解・猛毒植物マニュアル』/この一線を越えていいのだろうか 『これは凄い 東京大学コレクション』/後ろ側に気をつけろ 伊藤潤二『トンネル奇譚』 地獄のダイアリー サンダンス・フィルム・インスティテュート滞在日記/カンヌ映画祭日記/フランスの思い出 終章 人間なんかこわくない
Posted by
- 1