漱石のユーモア の商品レビュー
夏目漱石の作品におけるユーモアの性格について論じた本です。 『吾輩は猫である』を中心に、『坊つちやん』『虞美人草』といった初期の作品を主としてとりあげ、そのなかに見られる漱石のユーモアの特徴について考察をおこなっています。著者は、江戸文化の地口と、古今東西の文学・芸術・思想につ...
夏目漱石の作品におけるユーモアの性格について論じた本です。 『吾輩は猫である』を中心に、『坊つちやん』『虞美人草』といった初期の作品を主としてとりあげ、そのなかに見られる漱石のユーモアの特徴について考察をおこなっています。著者は、江戸文化の地口と、古今東西の文学・芸術・思想についての幅広い造詣が漱石のユーモアの背景にあることを指摘するとともに、日本における「近代」の受容という問題が、漱石のテクストのなかでさまざまな「笑い」をつくり出していると論じています。 そのうえで著者は、後期の作品にはユーモアが消え、「近代的自我の創出」というテーマが、真面目に、かつ深刻にとりあげられるようになったといい、さらに魯迅の作品における「笑い」との比較を通して、おなじ東アジア圏において西洋の「近代」と向きあい格闘することになった日本と中国のありかたのちがいについての考察へと議論をつなげていきます。
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