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市場対国家(上) の商品レビュー

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2015/05/01

下の読了を待とうと思っていたら先に下をアップしてしまったようです。 機能不全に陥った英国病のイギリスを救ったサッチャーの黎明期が少し見れて面白い。鉄の女の自伝を読みたくなりました。 ・親友のひとりが書いている。「実業家をつきうごかしているのはなんなのか、ある時には投資案件で大...

下の読了を待とうと思っていたら先に下をアップしてしまったようです。 機能不全に陥った英国病のイギリスを救ったサッチャーの黎明期が少し見れて面白い。鉄の女の自伝を読みたくなりました。 ・親友のひとりが書いている。「実業家をつきうごかしているのはなんなのか、ある時には投資案件で大きな賭けにでるが、ある時には流動性と現金を選好するのはなぜなのか、経済学者は、ほんとうのところ理解できていない。メイナード(ケインズ)はこの点を理解していた。本人が相場をはっていたので、ときには賭をし、ときには流動性を好む実業家の気持ちがわかっていた」。ケインズが語ったように、「事業とは賭の連続」なのだ。 ・この著書(「雇用、利子、貨幣の一般理論」)で、古典派経済学は間違った想定のもとに組み立てられているとケインズは主張した。需要と供給の均衡によって完全雇用が実現すると想定している。これに対してケインズの見方では、経済はつねに不安定で変動しており、需要と供給が均衡しても完全雇用にならない場合がある。これは、投資が不足し、貯蓄が過剰になるからであり、どちらも不確実性の心理に起因しているという。 この問題を解決する方法は、みたところ、ごく単純である。民間の投資の不足を公共部門の投資で補い、意識的な財政赤字によってその資金をまかなえばいい。政府が資金を借り入れ、公共事業などに投資する。財政赤字による政府支出で雇用が創出され、購買力が高まる。不況の時期に財政均衡をはかれば、事態は悪くなるだけであり、良くはならない。この主張を裏付けるために、ケインズはさまざまな新しい手法を使った。標準化された国民経済計算(ここから国民総生産の基本概念がみちびきだされた)、総需要の概念、乗数の概念(政府が公共事業に支出した資金を受け取った人たちがそれを使い、さらに新しい職を生みだす)などである。ケインズの分析によって、マクロ経済学の基礎が築かれた。 ・IEAは二人の経済学者に発言の場を提供した。どちらも、研究所が設立されて間もないころ、サッチャー元首相の言葉を借りれば、IEAが「煉瓦の壁に頭を打ちつけている」ように思えたころ、経済学の主流から外れているとみられていたが、やがてきわめて大きな影響力をもつようになった学者だる。ひとりはフリードリッヒ・フォン・ハイエクであり、自由市場を主張する「オーストリア学派」を代表するイギリスの経済学者だ。ケインズの経済学をごく初期に批判したひとりだが、この時期、ふたたび批判に取り組み、ケインズ主義のマクロ経済学と乗数の世界から、ミクロ経済学の世界、富の創出を実際に担う企業の世界に戻るよう主張していた。もうひとりはシカゴ大学のミルトン・フリードマンであり、IEAはそのマネタリズム理論をイギリスに広める役割を果たした。 ・そして、サッチャーは付け加えた。「サッチャーの法則を忘れてはいけない。予想外のことが起こる。だから、それに備えておく方がいい」 サッチャー元首相にとって、「予想外のこと」のひとつとして、イギリスで取り組んだ政策が全世界に影響を与えた点がある。「1918年にある国の蔵相が訪問してきた。『イギリスの政策にはとても興味をもっている。イギリスで成功すれば、他国も追随するだろう』と言った。その点は考えてもいなかった」。結局、他国は、サッチャリズムの影響を認めた場合もあれば、距離をおこうとした場合もあるが、たしかに追随することになった。 階段をおりるにあたって、サッチャー元首相は最上段で立ち止まり、それまでの議論を振り返っていた。サッチャー革命自体が予想外のことであった。1970年代半ばに、ここまでの変化を予想した者がいただろうか。「サー・キース・ジョセフとわたし、政策研究センター、それに経済問題研究所のハリス卿がはじめたことだ。そう、出発点は考え方、信念だった」。しばらく間をおいて、こう続けた。「そう、信念を出発点にしなければならない。すべては信念からはじまるのだ」

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2014/08/08

第二次世界大戦後の混迷する世界経済、共産主義対資本主義の冷戦構図。共産主義の壮大な実験はいまのところ失敗に終わったが、ケインズの主張する需給調整の計画経済がベターか、はたまたハイエクやフリードマンが提唱した新自由主義か、市場実験は継続しておりまだ結論は出ていない。 本書は『国家...

第二次世界大戦後の混迷する世界経済、共産主義対資本主義の冷戦構図。共産主義の壮大な実験はいまのところ失敗に終わったが、ケインズの主張する需給調整の計画経済がベターか、はたまたハイエクやフリードマンが提唱した新自由主義か、市場実験は継続しておりまだ結論は出ていない。 本書は『国家対市場』という題名になっているものの、描かれる世界は国家が市場とどう向き合うべきかべきかを模索する歴史が概観できる。洋書翻訳の特徴(?)である、話が行ったり来たり主語が錯綜したりする読みにくさはあるのものの、内容は非常によく研究・分析されている。例えば外国からは見えにくい日本の内政についても本質をついている。 経済改革は旧体制との戦いであり、国家一丸となった目標への戦いであることがよくわかる。

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2013/12/07

経済学素人な私にも分かりやすい内容で当方感激(T_T)単語を延々覚えた公民の授業は何やったんやと思うよ。この本輪読したほうが100倍役に立つ。大事なのは一つ一つの点やなくて、点と点をつなぐ物語。今の仕組みが、過去の試行錯誤を元に成り立ってるのが理解できた。 大恐慌の影響で市場の...

経済学素人な私にも分かりやすい内容で当方感激(T_T)単語を延々覚えた公民の授業は何やったんやと思うよ。この本輪読したほうが100倍役に立つ。大事なのは一つ一つの点やなくて、点と点をつなぐ物語。今の仕組みが、過去の試行錯誤を元に成り立ってるのが理解できた。 大恐慌の影響で市場の信認が揺らぎ、まだ共産主義の可能性が信じられていた第二次大戦後のアメリカからお話は始まる。国家が経済活動全ての管理を目標とするケインズ政策で戦後の復興は進むものの、国有企業の肥大化、機能不全により1970年代に経済成長が停滞。ケインズに代わり台頭したハイエク、フリードマンの理論により、政府は小さく、基本は市場に任せる方針に変更。その後冷戦終結により国家の重心が政治から経済に移行し、グローバルマネーが世界の市場を席巻するところまでが上巻だす。

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2012/07/02

いわゆる「大きな政府」と「小さな政府」の考え方について、20世紀に世界各国でどう変遷したのかを語り切ってしまう大作。非常に読みごたえがあり面白いが、通読するのはなかなか骨が折れる、が、面白い。経済学(ケインズ、ハイエク、フリードマンetc)、近代史(中南米、アフリカ含む)、政治史...

いわゆる「大きな政府」と「小さな政府」の考え方について、20世紀に世界各国でどう変遷したのかを語り切ってしまう大作。非常に読みごたえがあり面白いが、通読するのはなかなか骨が折れる、が、面白い。経済学(ケインズ、ハイエク、フリードマンetc)、近代史(中南米、アフリカ含む)、政治史(サッチャー革命やEUまでの変遷もわかる)のさわりまで分かっ(たきになれ)ちゃうすぐれものである。 内容としては考察というより淡々と事実の記載が進んでいくが、やはり歴史とはhi”story”であり、「市場対国家」という軸でとらえ直すと見方も変わってくるなぁ…という印象である。 上梓されたのは1998年なので、リーマンショックはおろかアジア危機に対する評価も定まっていない頃だが、世界がユーロ危機や中東の紛争にゆれ、国内では東電国有化、消費増税などなどに揺れる昨今、実に示唆にとむ内容になっている。

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2012/02/02

政治家の加藤紘一が「The Commanding Heights」を自分の教科書と呼んでいるそうで、興味を惹かれたので日本語版を手にとりました。 内容を一言でいうと、歴史の教科書ですね。1900年代の欧州、米国、アジア各国の政策とそれによる成長が良くまとまっていると思います。自...

政治家の加藤紘一が「The Commanding Heights」を自分の教科書と呼んでいるそうで、興味を惹かれたので日本語版を手にとりました。 内容を一言でいうと、歴史の教科書ですね。1900年代の欧州、米国、アジア各国の政策とそれによる成長が良くまとまっていると思います。自分の頭がこの手の内容になれていないため、読むのにかなり時間がかかりました。 ただ、ぐっときたフレーズがひとつだけあって、サッチャーの「そう、信念を出発点にしなければならない。すべては信念からはじあるのだ。」がそれなのですが、英国の改革がどれだけ大変だったかが記載された章の最後を締めくくっていたからこそなのだと、レビューを書いていて改めて思いました。

Posted byブクログ