アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない恥辱のあまり崩れ落ちたのだ の商品レビュー
私は、アフガニスタンの石像が破壊されたとき、ああ、こんな貴重な文化遺産までも破壊されてしまうんだと悲観したことを覚えている。そのとき、その下で飢餓に苦しむ多くのアフガニスタンの人々がいたことに対しては想像すらしなかった。 この本はアフガンへの「報復」が始まる直前に発行されたもの。...
私は、アフガニスタンの石像が破壊されたとき、ああ、こんな貴重な文化遺産までも破壊されてしまうんだと悲観したことを覚えている。そのとき、その下で飢餓に苦しむ多くのアフガニスタンの人々がいたことに対しては想像すらしなかった。 この本はアフガンへの「報復」が始まる直前に発行されたもの。それまででさえ、内戦や飢餓に苦しんできたアフガニスタンの人々は、いまどんな状況にあるんだろう。 ただ、中村哲さん著「ほんとうのアフガニスタン」の中にあった、本当に何か助けるのだとすれば、そこでの「普通の生活」が明日もあさっても続いていくように手伝いをするということなんだ、現地の人々の生活の中に入って、そこでの文化、習慣を十分に理解し尊重し必要なことを淡々と行うという思想とは違い、現代の発達した文化とアフガニスタンを統一できる政府が必要という角度には腑に落ちないものがあった。 でもどっちが本当に正しいかは私にはわからない。だからこそ、もっとこの国のことを知りたいと思った。 知らないことばっかりだけど、この世界で起きてること、少しずつ知っていきたい。
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この監督の映画が好きで昔よく観た。メタファーであふれているのに退屈しない。メッセージが心を射抜いてきた。 彼の作品に共通するそんなストレートさが、この本にも象徴されている。
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21世紀のアフガニスタンには映画産業もシアターもない。かつてはインド映画を上映するシアターが14あった。 アフガニスタンでは部族意識が彼らのアイデンティティの基盤。 自分をアフガニスタン人と認識することはない。パシュトゥ人であり、ハザラ人であり、ウズベク人であり、タジク人なのだ。...
21世紀のアフガニスタンには映画産業もシアターもない。かつてはインド映画を上映するシアターが14あった。 アフガニスタンでは部族意識が彼らのアイデンティティの基盤。 自分をアフガニスタン人と認識することはない。パシュトゥ人であり、ハザラ人であり、ウズベク人であり、タジク人なのだ。いまだに異なる部族間での結婚はしない。 今日のアフガニスタンで唯一現代的なものとは兵器である。 アフガニスタンの山岳部は水も恵みというより災難。交通が困難な農耕に適さない国土。 アフガニスタンは麻薬が世界的に有名。 アフガニスタン人口の30%が移民として海外に出て行ってしまった。難民だ。 イランに行くのはハザラ人でペルシャ語を話すシーア派だが、顔つきはモンゴル人のようなアフガニスタン人はイランの秘密警察に捕まってしまうことがよくあった。パキスタンに行くのはパシュトゥン人は区別がつかない顔つき、言語、宗教も同じ。だが、よい仕事は見つからない。 アフガニスタンでは、過去20年に戦争や飢餓で約250万人が死んだ。
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. 読了メモ。M.マフマルバフ『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』。イラン人の監督によるアフガニスタンのレポート。統計による数字、歴史、文化の考察から、先進国がアフガニスタンという言葉にもつイメージを破ろうとする。
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アメリカのように一挙一動が注目される国と、あたかも存在しないかのように無関心なまでに放置される国。 この本での議論から見えてくるのは、現在の国際関係の中にある経済的・文化的な格差と、情報の不均衡です。 問題は、そうした格差や不均衡が、現在の国際関係の中で非常に見えにくくなっている...
アメリカのように一挙一動が注目される国と、あたかも存在しないかのように無関心なまでに放置される国。 この本での議論から見えてくるのは、現在の国際関係の中にある経済的・文化的な格差と、情報の不均衡です。 問題は、そうした格差や不均衡が、現在の国際関係の中で非常に見えにくくなっているということだと気づかされます。
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(2005.03.28読了)(2005.02.26購入) 著者は、アフガニスタンの隣国、イランの映画監督。アフガニスタンをテーマに撮った映画「カンダハール」でユネスコ「フェデリコ・フェリーニ」メダルを受賞した時のスピーチと、その前のアフガニスタンについてのレポートが収められている...
(2005.03.28読了)(2005.02.26購入) 著者は、アフガニスタンの隣国、イランの映画監督。アフガニスタンをテーマに撮った映画「カンダハール」でユネスコ「フェデリコ・フェリーニ」メダルを受賞した時のスピーチと、その前のアフガニスタンについてのレポートが収められている。 それにしても長い題名の本だ。長さで注目を引くと言うことでもあるのだろう。 ●アフガニスタン 「アフガニスタンの名を知っている人は、すぐに麻薬密輸やターリバーンのイスラーム原理主義、ロシアとの戦争、長期にわたる内戦と言う言葉のどれかとの連想で、その名を思い出す。」 ●アフガニスタンの成立 「アフガニスタンの成立の歴史は、イランからのアフガニスタン分離の歴史である。250年前まで、アフガニスタンはイランの一地方であった。実際にはナーディル・シャーの時代の大ホラサーン州の一部であったのである。ナーディル・シャー軍のアフガン人将軍の一人、アフマド・アブダーリーは麾下の4000人の兵士たちとともに逃げ、当時のイラン領の一部の独立を宣言し、現在のアフガニスタンを築いた。」(1747年) ●アフガン人 「アフガン人は、自分をアフガン人だと認識する事はない。アフガニスタンの中では、アフガン人はそれぞれ、パシュトゥン人であり、ハザラ人であり、ウズベク人であり、タジク人なのだ。」 (チェコスロバキアでは、チェコスロバキア人は・・・と言う話が「数学放浪記」に出ていた) ●暮らし 「アフガン人は、朝目覚めると、暮らしを続けていくために四つのことを考える。一つ目は、遊牧のこと。二つ目は、どこかの勢力や派閥のために戦うこと。つまり、職を得るために軍隊に入るのだ。三つめは、家族を養うために移住すること。四つめは、密輸ルートに加わること。」 ●交通 「アフガニスタンの人々の生活は、深い峡谷の中で営まれる。そこでは山々がその頂を天に伸ばし、人びとの生活を囲い込む壁を作る。この壁の高さは、交通や通商にとっての自然環境の厳しさを物語るだけではなく、アフガン諸部族を精神的・文化的に隔てる要塞としての役割を持っている。」 ●パキスタンとの関係 「パキスタンがインドから独立する前、アフガニスタンはインドと国境を接しており、パシュトゥニスタンをめぐって、アフガニスタンとインドの間には深刻な対立があった。英国はデュランド線という国境線を引き、百年後インド地域のパシュトゥニスタンはアフガニスタンに返還されるという条件で、パシュトゥニスタンをアフガニスタンとインドに分割した。その後、パキスタンがインドから一つの国として独立し、そのパシュトゥニスタンの半分は、パキスタンの半分となったのである。」 (デュランド線が引かれたのは、1893年なので、1993年で百年経過したことになる。) 「パキスタンは、アフガン人たちを養い教育し、ターリバーンと言う傀儡政権をアフガニスタンに作り上げた。パキスタンに育てられたターリバーンが、自分たちを作ったパキスタンに対して、もはやパシュトゥニスタンの返還を主張しないのは当たり前だ。」 著者 モフセン・マフマルバク 1957年 テヘラン生まれ 1982年 映画監督 1989年 映画「サイクリスト」イタリア・リミニ映画祭最優秀作品賞受賞 2001年 映画「カンダハール」カンヌ映画祭エキュメニック賞受賞 (「MARC」データベースより)amazon 映画「カンダハール」で国際的注目をあつめるイランの巨匠マフマルバフが、アフガニスタンへの世界の無知に、いま差しだしたメッセージ。これは報道ではない、苦しみにある隣人のために綴られた言葉である…。
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「ついに私は、仏像は誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は恥辱のあまり崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し世界があまりにも無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないことを知って砕けたのだ。」 「まだ心が石になっていなかった唯一のひとは...
「ついに私は、仏像は誰が破壊したのでもないという結論に達した。仏像は恥辱のあまり崩れ落ちたのだ。アフガニスタンの虐げられた人々に対し世界があまりにも無関心であることを恥じ、自らの偉大さなど何の足しにもならないことを知って砕けたのだ。」 「まだ心が石になっていなかった唯一のひとは、あのバーミヤンの仏像だった。(中略)しかし、怠惰な人類は、仏像が崩れたということしか耳に入らない。こんな中国の諺がある。『あなたが月を指差せば、愚か者はその指を見ている』」
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映像(イメージ)を持たず、持たれなかった国。誰も見たことが無い指導者に縋る、一種の砦。私達もまた、目を開いていると言えるのか。例えば、事実より事件が今日の視線を呼んだということ。 山岳に囲われた土地に、暴力が降り積もり続ける。自ら学べず、世界に学び取られる事もないという悲劇。外か...
映像(イメージ)を持たず、持たれなかった国。誰も見たことが無い指導者に縋る、一種の砦。私達もまた、目を開いていると言えるのか。例えば、事実より事件が今日の視線を呼んだということ。 山岳に囲われた土地に、暴力が降り積もり続ける。自ら学べず、世界に学び取られる事もないという悲劇。外から内から、無知がもたらす断絶。 暴力の形式の奥に隠された本質。イスラム原理主義者の、飢えた孤児としての原点。対するも、短絡的な報復。 月を指させば、愚か者はその指を見る。 歪曲さを取り払い、生を求めるという原点を世界が共有するために、まず、目を開くということ。刻まれる先の統計、その前に立つ。 合わせ鏡かもしれない事々を、改めて突きつける本でした。
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〈まだ心が石になっていなかった唯一のひとは、あのバーミヤンの仏像だった。あれほどの威厳を持ちながら、この悲劇の壮絶さに自分の身の卑小さを感じ、恥じて崩れ落ちたのだ。仏陀の清貧と安寧の哲学は、パンを求める国民の前に恥じ入り、力つき、砕け散った。仏陀は世界に、このすべての貧困、無知、...
〈まだ心が石になっていなかった唯一のひとは、あのバーミヤンの仏像だった。あれほどの威厳を持ちながら、この悲劇の壮絶さに自分の身の卑小さを感じ、恥じて崩れ落ちたのだ。仏陀の清貧と安寧の哲学は、パンを求める国民の前に恥じ入り、力つき、砕け散った。仏陀は世界に、このすべての貧困、無知、抑圧、大量死を伝えるために崩れ落ちた。しかし、怠惰な人類は、仏像が崩れたということしか耳に入らない。こんな中国の諺がある。「あなたが月を指差せば、愚か者はその指を見ている」〉
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アフガニスタンの仏像は破壊されたのではなぃ。 恥辱のぁまり崩れおちたのだ。 この言葉に泣きたくなった。 世界はバーミヤン仏像が破壊されたことを嘆いた。 しかし 25年間アフガニスタンの100万人の難民には一切関心も同情も示さなかった。 次に ...
アフガニスタンの仏像は破壊されたのではなぃ。 恥辱のぁまり崩れおちたのだ。 この言葉に泣きたくなった。 世界はバーミヤン仏像が破壊されたことを嘆いた。 しかし 25年間アフガニスタンの100万人の難民には一切関心も同情も示さなかった。 次に 世界の目がアフガニスタンに向ぃたのは、アメリカとの戦争が開始された時だった。 もしもアフガニスタンに資源がぁったら…, もしもアフガニスタンが部族社会ぢゃなかったら…, もしもアフガニスタンが険しぃ山に囲まれてなかったら…, もしも戦争でなく経済に関心を示されていたら…。 映画監督モフセン マフマルバフは 自分が見たアフガニスタンにっぃて この国の絶望と 己の無力さと 未来の小さな可能性を提示してぃる。 そこには今まで知らなかったアフガニスタンのぁりのままの姿がぁった。 政治的メッセージはなぃ。 ぁるのは熱く淡々とした真実のメッセージだけがぁった。
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