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みんなみんなやさしかったよ の商品レビュー

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2023/06/05

積読の山の5合目あたりのところで、中途に栞がはさまっていたのを、最初から読み直した。2001年初版第1刷なので20年以上、中途半端に積読の山の途中にあったことになる。なぜ、当時、途中で別の本に移っていったのか、読み直しながら自分の気持ちが分かったような気になった。 著者は太宰に興...

積読の山の5合目あたりのところで、中途に栞がはさまっていたのを、最初から読み直した。2001年初版第1刷なので20年以上、中途半端に積読の山の途中にあったことになる。なぜ、当時、途中で別の本に移っていったのか、読み直しながら自分の気持ちが分かったような気になった。 著者は太宰に興味はある。そして、その興味は太宰への愛情よりもはるかに強く感じる。これまで読んだ太宰の評伝も作品論も、ことごとく太宰への愛情が、それを前面に出そうとはしなくても、行間ににじんでしまうものだったように思う。忍ぶれど色に出でにけりという具合だと思う。しかし、著者は興味の方が大きいのではないか、その故か、「太宰治と歩く『津軽』の旅」と書かれているが、どうも一緒に歩いているような気にならない。 読み始めてすぐ戸惑うことになったのが、書いてある部分が現在の旅のことなのか、「津軽」の旅の様子なのか、著者のことか、太宰が津軽の人々とふれ合ったときの太宰のことなのか、読み切れないことがあり、1ページ戻って読み直すということが度々あったことだ。これはおそらく読者としての私の力量不足によるところだと思う。時間の違いを読み切れずにいたのだろうと、20年前の自分を思い出す。 「みんなみんなやさしかったよ」。「津軽」の旅はまさにそのとおりの印象を受ける。そこに虚構があろうとも、騙りがあろうとも、それこそが太宰のやさしさであった。 「みんなみんなやさしかったよ」しかし、なぜかそのやさしさが著者の旅から読み取りきれなかった。 相馬氏の詳細な研究である「評伝」に関わる著者の違和感については大変に興味深く、面白く読んだ。この旅行記を読み終えてよかったと思った。

Posted byブクログ