外務省が消した日本人 の商品レビュー
戦後の南米移民はたいそう過酷な状況におかれたらしい。そのことを知りたいと読んでみた。著者は日本海外協会連合会(現JICAの前身)創立時に、海外移民という可能性無限大の事業を支えたいと転職してきた。ところが海協連は、金がなくずさんで天下りの温床で無責任なお役所体質のとんでもないとこ...
戦後の南米移民はたいそう過酷な状況におかれたらしい。そのことを知りたいと読んでみた。著者は日本海外協会連合会(現JICAの前身)創立時に、海外移民という可能性無限大の事業を支えたいと転職してきた。ところが海協連は、金がなくずさんで天下りの温床で無責任なお役所体質のとんでもないところだった。こんな組織が、その上で仕切る外務省と一緒に甘言で人々をだますように南米の文明と隔絶されたようなところに無責任にも送り出しっぱなしにした。 著者は姓名でこそ出さないが、十分人物が特定できるくらいに無責任な人々を挙げて非難する。組織の中にいてその後も大学教授など社会的にそれなりの立場の人が歯に衣着せず南米移民政策の愚策ぶりを糾弾している。自身の恨みや怒りはとうに消えているといいながら、そういう対等な人間への感情でなく「単に、心からの侮蔑感だけ」と言い切っているほど。 まったく国・外務省ときたら徹頭徹尾の無責任ぶり。今にも通じるような国民の人権を無視した無茶な仕業。何も目的に移民政策が行われたのか理解できない。 移民の送り出しは1954年から10年弱くらいの間に行われたようだけど、その頃の日本もそれなりに発展しつつあって、わざわざ移民する必要あったのだろうか。もっと窮乏の時期に考え出され、引くことができずにそのまま惰性で進めてしまった政策のような感じがする。ちょうどこの時期に在日の朝鮮半島の人たちの北朝鮮への帰還事業なども始まっているが、現地の事情をよく調べもせず無責任に追い出すように向かわせた点で共通するような気がする。
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アマゾンで苦しんだ移民を題材にした小説があったけど、そのノンフィクション版といったところか。最近、何周年というのが多かったので活躍の話に注目が集まりがちだったけど、この歴史を知らずしては何もいえないなあと思った。
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外務省外郭団体の元職員の筆者が、日本の移民政策の実態を暴く。 日本政府が示した好条件とは全く違う、劣悪な環境の中南米奥地に入植させられた日本人移民達。 過酷な環境における重労働、襲いかかる風土病。簡単な医療さえあれば助かったはずの多くの命が散っていったことを、恥ずかしながらこの...
外務省外郭団体の元職員の筆者が、日本の移民政策の実態を暴く。 日本政府が示した好条件とは全く違う、劣悪な環境の中南米奥地に入植させられた日本人移民達。 過酷な環境における重労働、襲いかかる風土病。簡単な医療さえあれば助かったはずの多くの命が散っていったことを、恥ずかしながらこの本で初めて知った。 日本の移民政策の最前線にいた筆者は、政府のずさん極まりない計画が悲劇を生んだことを告発する。 都合の良い情報をでっち上げ、官僚が官僚のために作った計画に乗って次々と送り出された移民たち。 大組織が自らの利益を守るため良心を失って走り始めたとき、何が起こるかという重い教訓。
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