ヨーロッパ覇権以前(下) の商品レビュー
下巻は主にインド以西について。 ヨーロッパに替わって覇者になり得る資格のあった中国は明代に入り閉じこもるようになった。ヨーロッパが覇権を取れたのは技術力が高かったからでもなく、世界システムが弱体化していたことの方が大きい。
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上巻は随分前に紹介しました。本書は今年度の東京経済大学の秋学期で使う予定なので,ようやく慌てて下巻を読んだ次第。 第二部 中東心臓部(承前) 第七章 マムルーク朝政権下のカイロの独占 第三部 アジア インド洋システム――その三つの部分 第八章 インド亜大陸――すべての地に...
上巻は随分前に紹介しました。本書は今年度の東京経済大学の秋学期で使う予定なので,ようやく慌てて下巻を読んだ次第。 第二部 中東心臓部(承前) 第七章 マムルーク朝政権下のカイロの独占 第三部 アジア インド洋システム――その三つの部分 第八章 インド亜大陸――すべての地に通じる道 第九章 海峡と瀬戸 第一〇章 絹の中国 結論 第一一章 十三世紀世界システムの再構成 上巻の紹介でみたように,本書は三部に分れていて,ヨーロッパ,中東,アジアという順番で13世紀後半から14世紀前半の歴史をたどります。原著の副題に「1250-1350」とあります。コロンブスの大西洋横断が1492年ですから,それを可能にする水準にヨーロッパの技術が到達する前の歴史が本書のタイトルでいう「ヨーロッパ覇権以前」ということになります。すなわち,結果的にヨーロッパの力がその後全世界を覆うようになりますが,本書の意義は,その直前の歴史においては,ヨーロッパの水準をさまざまな次元で上回るものが世界各地にあったということを強調している点です。 本書の記載のなかには,アメリカ大陸の発見もコロンブス以前に達成されていたという記録がいくつか残されているという。上巻の最後から続いている中東の話はやはりまだまだ私には難しい。その後始まるインドから東南アジア,中国の話は少しは理解しやすかったがそれでも圧倒的な知識不足を痛感した。 本書にはインド洋におけるモンスーンが,当時の海運を使った貿易の季節性に大きく影響したと説得的に論じている。このような議論はともすると,自然環境が人間行動を著しく規定するという環境決定論的なものになりがちで,読む方もどこまでを納得していいのか,なかなか難しい問題だ。中国の話でもシルクロードの重要性を説いている割にはそのもの自体の説明が不足していたり,やはりこの程度の分量の書籍でどこまで詳しく説明するかもなかなか難しい。講義で使うにはこちらの方で不足する知識を補わなくてはならないだろう。そういう意味でも,さらなる勉強を強いる魅力的な本であった。
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