治療文化論 の商品レビュー
岩波現代文庫 中井久夫 「治療文化論」 精神医療の異文化間の違いをテーマとした専門家向けの本だが、著者の自虐や皮肉は面白い 精神科医を、傭兵や売春婦と似ているとしたり、マージナルな存在で社会改革の挫折者と言ったり、精神科医は、蛸壺のような狭い世界で働いているとしたり、か...
岩波現代文庫 中井久夫 「治療文化論」 精神医療の異文化間の違いをテーマとした専門家向けの本だが、著者の自虐や皮肉は面白い 精神科医を、傭兵や売春婦と似ているとしたり、マージナルな存在で社会改革の挫折者と言ったり、精神科医は、蛸壺のような狭い世界で働いているとしたり、かなり自虐的 理解できたテーマは少ないが、文化精神医学者の7タイプ、同性愛ショック、中山ミキ論、イエスの治療論は、社会学や民俗学のようで面白い 「夜な夜な妖精が訪れて対話する〜空想虚言症か〜最終的には分らないことだが、分からないままでよいことにした」 「私がしたことは、患者に半歩遅れてついてゆき、きずなを張りつめも、緩むこともしないと心がけただけであった」 は、著者の精神科医としてのスタンスをよく現していると思う
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普遍的な病と文化と個人の病 痩せ=美とする文化が拒食症に 対人恐怖症は日本特有の病 まわりにはわからない病もある 治療はこころのこもった一品料理 どんな病にもまず個人に向き合うことから 当事者研究にも通じるはなし 100分で名著。録画しておいてよかった
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中井の主著の一つということで手に取った。 少なくない患者は、その住まう文化に依存する形で病む。文化圏に依存しない普遍的な病み方、文化特有の病み方(例: 狐憑き)があり、さらに個人的な病み方(個人症候群)があると中井は言う。 精神医学の理論だけでなく文化人類学の豊かな知識と臨床...
中井の主著の一つということで手に取った。 少なくない患者は、その住まう文化に依存する形で病む。文化圏に依存しない普遍的な病み方、文化特有の病み方(例: 狐憑き)があり、さらに個人的な病み方(個人症候群)があると中井は言う。 精神医学の理論だけでなく文化人類学の豊かな知識と臨床経験をもつ中井ならではの視野の広さで様々な検討が行われる。 とはいえ精神医学の実際のところを知らないため、素人にはなかなか議論の深みがわからない部分も多い。冒頭の方の、明治以降に現れる新興宗教の教祖たちについての洞察がもっとも面白かった。
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精神科医、中井久夫の著書。精神疾患を独自の見方で論評している一冊。統合失調症の第一人者と謂れている。この著書は精神科医からの視点で書かれていることが多く、治療の一貫として書かれているわけではないので、わかりづらさは感じるかもしれない。どちらかというと、病気の理解というよりは、難解...
精神科医、中井久夫の著書。精神疾患を独自の見方で論評している一冊。統合失調症の第一人者と謂れている。この著書は精神科医からの視点で書かれていることが多く、治療の一貫として書かれているわけではないので、わかりづらさは感じるかもしれない。どちらかというと、病気の理解というよりは、難解なものを今までにないアプローチで解読するという所に意味があるのかもしれない。
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専門的内容なのに不思議と読み進めることができました。古今東西の人文知を引用し、その文体がとてもエレガントだったからでしょうか。 最近ではこのような領域を大きくまたがる論考を書く人が少なくなっているような気がしました。
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100分で名著の番組を見てからこの本を読んだために、番組で照査記されている場所を探しながら読む、あるいは番組で紹介されたところと一致する箇所で理解するという読み方になってしまった。 ポイントとしてはいいのであろうが少し疑問が残る。
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「治療文化」という包括的な観点を提示し、精神医学のありかたについて考察を展開している本です。 著者はまず、文化精神医学の観点から、「普遍症候群」と「文化依存症候群」の区別をめぐる問題についての考察をおこない、精神医学の西洋中心主義を相対化しています。さらに「個人症候群」というカ...
「治療文化」という包括的な観点を提示し、精神医学のありかたについて考察を展開している本です。 著者はまず、文化精神医学の観点から、「普遍症候群」と「文化依存症候群」の区別をめぐる問題についての考察をおこない、精神医学の西洋中心主義を相対化しています。さらに「個人症候群」というカテゴリーを提唱し、中山ミキの宗教的な覚醒を例にとりあげて、精神医学上の症状を、患者を取り巻く環境との関連のなかでとらえなおす視点を提示します。 そのうえで著者は、「治療文化」を「三つの症候群とそれにかかわる治療的アプローチと、それらを問う人間的因子すなわち(広義の)患者と(広義の)治療者をはじめとする関与者とこれらをすべて包含する一つの下位文化」と定義しています。そして、このような包括的な観点から、「普遍症候群」「文化依存症候群」「個人症候群」の三つのカテゴリーを統一的にとらえなおすという著者の構想が提示されています。 レインの反精神医学など、精神医学そのものを相対化する試みは、これまでにもさまざまなものが提起されてきましたが、著者はそうした視点を取り込みつつ、より広い観点から精神医学のありかたそのものを見なおそうとしています。さらに、こうした本書の中心的な構想のみならず、議論のなかで多くの興味深い論点が提出されており、さまざまな思索が触発される読書体験でした。
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https://scrapbox.io/ne-sachirou/%E4%B8%AD%E4%BA%95%E4%B9%85%E5%A4%AB%E3%80%8C%E6%B2%BB%E7%99%82%E6%96%87%E5%8C%96%E8%AB%96:_%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E7%9A%84%E5%86%8D%E6%A7%8B%E7%AF%89%E3%81%AE%E8%A9%A6%E3%81%BF%E3%80%8D1983
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背景史を読み、やはり文化のもつものと離れられない関係にあるのだと強く感じる。 個人症候群、文化依存症候群、普遍症候群の見方で考へる時、精神の病と呼ばれるものは、また違つた一面をみせてくれる。それは、その治療に関はる存在も同じである。 アルマアタ宣言から40年近くが経たうとしてゐる...
背景史を読み、やはり文化のもつものと離れられない関係にあるのだと強く感じる。 個人症候群、文化依存症候群、普遍症候群の見方で考へる時、精神の病と呼ばれるものは、また違つた一面をみせてくれる。それは、その治療に関はる存在も同じである。 アルマアタ宣言から40年近くが経たうとしてゐる。占いの市場は億単位の金が動くほど今も活発であり、土着の治療がもつ力は今も文化の中で生き続けてゐる。 さうした土着の治療を考えるとき、その文化でどのやうな関係をもつてゐるのか、治療者の立場、そこを訪れたひとの経過、どのやうな社会を営んでゐるのか人類学的な視点をもつて考へると、何をもつて病とし、何をもつて治療とするのか、その境界線が少し浮かび上がつてくる。 日本ひとつとつても、ことばも違へば、食べるものだつて違う。文化が変はればそこに生じる病もまたかはつてくる。なだいなだは、常識がかはるといふところまでたどり着いたが、この文化的な視点というものまで至らなかつたやうに思へる。あるひは思ひ至つてゐたが、彼に残された時間がそれを考察させなかつたか。 それぞれの病にはそれぞれ得意とする治療者存在するのは当たり前のことで、すべての患者がひとつのやり方でよくなるなら苦労しない。ところが、治療者としてあたる人間はそれをどこかへおいていつてしまふ。あたかも自分には治せないものがないかのやうに。背景史にもあつたが、この課題は連携が叫ばれる今後もまだまだ続くと思ふ。
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奈良盆地を神に見捨てられたエリオットの「荒地」に例えたり、妖精の病の治療で患者の「夜の世界」の冷えにくるぶしまで浸されてみたり、妙に印象的な箇所多数。この本の全体像は見渡せている気はしないが、漏れ出してくる部分々々だけで酔ってしまうのが、この著者の不思議。
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