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ヴェロニカの鍵 の商品レビュー

3.5

5件のお客様レビュー

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2024/03/10

密室で死んでいた画家。一見自殺のように思えたが、彼の友人である久我は、現場で不審な人物を目撃していた。そして久我自身が囚われる謎の女性「ヴェロニカ」の謎。幻想的なミステリです。 絵画や聖書の蘊蓄も多く、雰囲気を盛り上げてくれます。そして芸術家の苦悩という重々しいテーマもあって、ど...

密室で死んでいた画家。一見自殺のように思えたが、彼の友人である久我は、現場で不審な人物を目撃していた。そして久我自身が囚われる謎の女性「ヴェロニカ」の謎。幻想的なミステリです。 絵画や聖書の蘊蓄も多く、雰囲気を盛り上げてくれます。そして芸術家の苦悩という重々しいテーマもあって、どんよりとした印象の物語。なのだけれど、登場人物がみんなどこかしらずれている感じがして、奇妙な読み心地に引っ張り込まれました。 ミステリとしてのメインはほぼ、この密室の謎に尽きますが。なるほどこの理由……伏線はきっちりありましたね。でも案外と気づけないものです。というより、これこそ芸術家ならではの思いなのかも。

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2024/01/12

芸術に向き合い、それに取り憑かれた者たち特有の暗さがある。 推理部分の驚きは少ないものの世界観が独特で何故だか惹き込まれてしまう。 怪奇的な雰囲気とそれぞれの登場人物の内面がよく描写されていた。 ただ暗すぎるのが玉に瑕で、もう少し変化がほしかった。

Posted byブクログ

2018/03/03

ミステリ。密室。芸術。 とにかく暗い。主人公の画家の苦悩、闇を抱えた脇役。 それでも引き込まれるのは何故なのか?☆2.5。

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2015/07/30

飛鳥部後期の作品(まだ死んでないが…)を読んでしまった私としては、著者特有の灰汁の強さはなく、ちゃんとミステリしてる作品で、物足りなさは残るものの、これはこれで楽しめました。かといってらしさが無いかと言われればそうではなく、謎の美少女あり、狂った画家ありとファンでも充分楽しめるで...

飛鳥部後期の作品(まだ死んでないが…)を読んでしまった私としては、著者特有の灰汁の強さはなく、ちゃんとミステリしてる作品で、物足りなさは残るものの、これはこれで楽しめました。かといってらしさが無いかと言われればそうではなく、謎の美少女あり、狂った画家ありとファンでも充分楽しめるでしょう。 強固な密室で死んだ画家という謎だけでなく、本書は主人公のスランプを意識し脱却しようとする純文学らしい要素でも見せてくれます。作者曰く『喪われた青春もの』であるとか。 密室の答え自体は驚きは少ないものの、本書のテーマを思えば物語としてはよく纏まってると思います。

Posted byブクログ

2012/05/31

わたしがこの物語から受け取ったものは、どれだけ言葉を尽くしても、けして具現化できるものではないだろう。 ミステリとして書かれた物語である。 ちゃんと密室殺人の謎が用意され、終盤その謎は語り手によって解かれる。しかしわたしにとってこの物語は、「ミステリ」というものの枠には収ま...

わたしがこの物語から受け取ったものは、どれだけ言葉を尽くしても、けして具現化できるものではないだろう。 ミステリとして書かれた物語である。 ちゃんと密室殺人の謎が用意され、終盤その謎は語り手によって解かれる。しかしわたしにとってこの物語は、「ミステリ」というものの枠には収まっていなかった。 絵を描くもの、ひいては芸術というものに少なからず魂を燃やす者、離れがたい者だけが持つ業と因果と嘆きと辛苦と…うまく言葉にできないけれども、芸術というものに対する執着を捨てきれない者の魂のせめぎあいとそういった者同士ならではの交流と…そんなものが色濃く描かれていた。体裁としては本格推理だが、文学的にも充分読める作品だと思う。 ミステリを土台として、その上に小説としての味わいや文章の品質を構築していくことに成功している小説。 密室の中で人が死んでいる謎がメインの密室モノだが、この謎の解決には唸ってしまった。密室の理由ですら、本書の大きなテーマである「芸術家の業」というものに帰結しているからだ。 特にこの小説のメインテーマのひとつとなっている「久我が求めるヴェロニカ」の関係は、最終部に至ってひとつの解答をみせるが、そのあまりの残酷さに、わたしは思わず立ちすくんでしまう。いつも通りの淡々とした、対象を突き放しているような口調で語られるせいで、よりいっそう「芸術」そして「ヴェロニカを表現すること」の非情さと険しさが際立っている。 (既読者からは、救いのない絶望的ですらあるラストと聞いていたが、その通りだった。)この感覚を何かうまくいい現すことができたらいいのだが…うまく言葉にできない。芸術に関することだからだろうか。 だいぶ大げさに語っているようだが、趣味の範囲ではあれども、ものを創ることに対して自分のアイデンティティの一部を担わせている人間のひとりとしては、本書は非常に胸をうつ作品であった。いい意味でも…わるい意味でも。 できれば、きちんと入手して手元におきたいものだ。

Posted byブクログ