有機的建築の発想 の商品レビュー
建築について、考えたことがなかったので、まずは、ルコルビジェ展を見て、建物への光の取り入れ方がポイントだなと思った。ルコルビジェは「住宅は住むための機械である」と言って、コンクリート建築に突き進んでいった。 そこで、伊東豊雄、隈研吾、ロイド・ライトの本を読み、やっと吉原正 編の...
建築について、考えたことがなかったので、まずは、ルコルビジェ展を見て、建物への光の取り入れ方がポイントだなと思った。ルコルビジェは「住宅は住むための機械である」と言って、コンクリート建築に突き進んでいった。 そこで、伊東豊雄、隈研吾、ロイド・ライトの本を読み、やっと吉原正 編の「有機的建築の発想」に突き進んだ。 ここで、やっと天野太郎とロイド・ライトと繋がった。 とにかく、建築用語のわからない言葉が多く存在していたが、読み切った。 有機的建築という言葉に、農業に携わってきた私には、抵抗感がある。 無機物を組み合わせて、構築しているのに、有機的建築というのは、言葉自体がなり立たない。 天野太郎によれば、「ライトに於ける有機的という考えも、動植物にあるもののみならず、物質においても動植物における生命的関係を見、その物質及物質間のまた物質と生物との間にある自然の中に備わった関係を、内的な万象が共通に持つ実在としての有機的と言っているようである」 農業の言っている農薬や化学肥料という化学的物質を使用しない有機的農業とは、違った意味合いを持っている。 天野太郎は、「住居は包み込むものだろう」と言っている。意味として「住居は、人間の生活を包み込むもの」と読み取ることができる。 天野太郎は、「人の生活の中にある喜び」「調和の喜び」が、家の主役になるべきと言っている。天野太郎は、ライトのしていることが、「人の心が描く理想の質を求めるもの」と言っている。「構われない権利、独りとなる権利」を持ち、「憩いの心-調和の感覚」が必要としている。 天野太郎がいう「調和」とは、今の言葉でいうならば、コミュニケーション。住む人々のコミュニケーションと自然とのコミュニケーションということかもしれない。少なくとも、住居が、人間の生活を包み込み、人と自然とのコミュニケーションができるようなものであらねばならないということであり、それが「有機的建築」という理解した。 しかし、ライトの建築物は、長く突き出たひさしと壁にある。ひさしは、「勢いが余った」という説明があるが、あまり納得できる説でもない。壁論は、76ページの図からも説明されている。なぜか、3億年生きてきたゴキブリが、壁を伝って移動するのに、人間は似ている。ゴキブリの遺伝子を受け継いでいるのかもしれない。 自然との調和をいう割には、壁を作ってしまうところがライトの限界かもしれない。天野太郎は、「昔から日本には縁側という立派な自然へのつなぎ場所がある」と言っているが、突き詰められておらず、「西洋はオープンスペースを庭に開いて自然を積極的に取り入れる」と逃げてしまったのが残念で仕方がない。天野太郎の中には、日本の縁側の思想が、天野太郎の中で、昇華されていない。 天野太郎の「音羽の家」は、確かに、そのような思想に基づいて、作り上げたものだと思う。「三つの升目論」は、流動する空間で、食事の升目と居座の升目とそれにつながる「茶の間」もしくは繋げる「廊下」の発想が、天野太郎の作る家の姿もしくは原則となっている。 設計図や家の画像を見ても、その良さがあまりわからないのが残念だ。しかし、住居というものに対して、今までの生活でいえば、ヤドカリみたいなところがあり、とにかく住めればいいなと思っていたのが、少し変化したのは、大きな前進である。どういう家に住みたいかが、自分の思いや個性やライフスタイルに大きく関わっていることに、改めて感じた次第である。 私は、この本の中で、近藤高史がわずかに書いている文章に、圧倒的な存在感を感じた。「天野太郎がいつも見つめていたものは、この大地の上の人間存在だった」と言い切っていることだ。少なくとも、人間が存在して、住居の建設が始まった。それは、地球の歴史の中でも、人間の存在を示す痕跡でもある気がする。その痕跡が、如何に人間らしく作られるかが、問われているのだと思う。 近藤はいう「我々をとりまく自然に生かされていることを痛感しながら、その西洋のありようを語り続けたのである」「人間として持って生まれたこの五感の力をどれだけ有意義に発揮して、自分たちを生かして」いき、「自分の五感との勝負」をするしかないのだ。 天野太郎はいう 「情感に耳をそばたてよ 空間に人々の情感を盛り立てよ それは 幾千年後にも 変わらぬもの つやつやした空気 限界を見ることができないもの たとえ 我々が死んでも死なないもの 空間は我々こそがそこに永久に生き続けられる 唯一の世界 空間の質を理解しよう。 高い その翼を求めて行こうじゃないか 静かに 溢れてくる 情感に耳をそばたてよ。」
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