乱視読者の帰還 の商品レビュー
若島正氏の本を読むきっかけになったのはこの本だ。豊?由美さんの書評集『そんなに読んで、どうするの?』(アスペクト)の中に本書の書評が書かれていたのである。〈新聞で見かける、読む気を失わせるほどつまらない学者書評とは別次元〉の、〈学者ばなれした芸の細やかさと面白さ〉。まさしくそのと...
若島正氏の本を読むきっかけになったのはこの本だ。豊?由美さんの書評集『そんなに読んで、どうするの?』(アスペクト)の中に本書の書評が書かれていたのである。〈新聞で見かける、読む気を失わせるほどつまらない学者書評とは別次元〉の、〈学者ばなれした芸の細やかさと面白さ〉。まさしくそのとおりだ。 第一評論集『乱視読者の冒険』(自由国民社)の続編として8年後に「帰還」を果たしたこの本では、若島氏はどうしてナボコフを読むようになったのか、早川書房の月刊誌《ミステリマガジン》に連載していたエッセイ、〈読んで損をしたと思うようなつまらないものはひとつとして入れていないつもり〉のブックガイド、クリスティ論をはじめとするミステリ論、朝日新聞夕刊の「文芸ウォッチ」欄に掲載された、月に三冊ずつ紹介する書評群(豊?さんが〈アクロバティックな筆さばき〉と絶賛しているのはこの章)、そしておなじみナボコフ論が、6部にわけてたっぷり読める。 乱視読者が語る〈小説の手ざわり〉や読書体験には、小説の世界へ飛び込む瞬間、そしてそこにどっぷりとつかっている時間に味わえる、読書好きにとってたまらない悦びに満ちている。書物というものへの姿勢、愛に満ちた論考が、ユーモアを交えながら楽しくかつわかりやすく説明される。本書で語られる数多の小説は、みんな読みたくなる。わたしもこうして小説の世界に身を任せたくなる。ああ、想像しただけで至福。 ひとつ残念なのは、この本が入手困難なこと。購入するつもりでインターネットで調べたが買えそうにないので、仕方なく図書館で借りた。それも、いつも利用する図書館の蔵書になく、県内の別の図書館からお借りしての借り出しだった。そのため延長が許されない。この本を最優先して読み終えたのだが、ううむ、欲しい。手元に置いておきたい。いつか、『乱視読者の新冒険』のように再編集されて新たな装いでお目にかかれることを願うばかりである。 読了日:2007年3月7日(水)
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