天皇観の相剋 の商品レビュー
各戦勝国による日本の天皇制の捉え方の違いもさることながら、本書のハイライトはやはり「原爆と天皇」を扱ったところだろう。知日派のグルーが原爆という未曾有の兵器使用を未然に阻止すべく孤軍奮闘する様には心を動かされる。他方、本書には触れられていないが、原爆投下に対して「仕方がなかった」...
各戦勝国による日本の天皇制の捉え方の違いもさることながら、本書のハイライトはやはり「原爆と天皇」を扱ったところだろう。知日派のグルーが原爆という未曾有の兵器使用を未然に阻止すべく孤軍奮闘する様には心を動かされる。他方、本書には触れられていないが、原爆投下に対して「仕方がなかった」とコメントした昭和天皇の感覚にはどうしても理解し難いものがある。
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明治憲法下における天皇の位置付けの二重性は、敗戦による戦争責任の追及にも大きく影響した。天皇制存置か廃止か、天皇の戦争責任を追及すべきか否かを巡り、連合国の米、英、豪、中国において、どのような意見が示されてきたかを、著者は丁寧に辿っていく。 アメリカにおける親中派と親日派との対立...
明治憲法下における天皇の位置付けの二重性は、敗戦による戦争責任の追及にも大きく影響した。天皇制存置か廃止か、天皇の戦争責任を追及すべきか否かを巡り、連合国の米、英、豪、中国において、どのような意見が示されてきたかを、著者は丁寧に辿っていく。 アメリカにおける親中派と親日派との対立は知っていたが、オーストラリアが強硬に天皇の戦犯訴追を求めていたことや、その事情については、本書で初めて知った。 現憲法の象徴天皇に至るまでに繰り広げられた、厳しい道筋を教えてくれる好著である。
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ポツダム宣言を受諾した日本において、天皇制がどうなるかは国内のみならず、米国、及び連合国においても注目の的だった。完全なる天皇制の撤廃を求める中国やオーストラリア、ソ連。米国の中でも天皇制を今後の民主化を行う土壌として利用しようとする米国知日派と、それに反対する勢力に分かれていた。まさに各国、各派がそれぞれの「天皇観」を持ち、戦後日本を挟んで相剋していた。 何度か版を重ねる際に追記されたあとがきが、最近の天皇制や改憲問題をめぐる議論にも言及していて興味深い。
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