移入・外来・侵入種 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
2001年発刊の少し古い本ですが,その頃の生物多様性や外来種を巡る状況を知ることができて,わたしには勉強になりました。いろいろな著者が,いろいろな視点で書かれているので,「外来種の問題をどんな視点で見ていけばいいのか」の参考になります。これは,たぶん,20年経った今でも同じですからね。 外来種(侵入種・移入種)の問題は,ずっと前から言われていて,それでも,あまりいい対策はなく,ここまでの状況はどんどん悪くなってきています。 こういう問題は,どうしても経済をぬきにしては考えられなくて,そっちを優先していたがために,対策が後手後手に回ってきてしまったことを痛感します。 発刊当時と比べ,今,どれくらいの法律ができているのか,少し整理をしてみたいと思いました。 外来種によるインパクトは,直接的,間接的,累積的あるいは複合的であり,しばしば予想外,意外で,直感できないし,潜伏期間をおいて発言することもある (本書p.54「世界自然保護連合(IUCN)の侵入的な外来種に対する取り組み」) 相手は生物。そして単独で生きている生物はいないからこそ,新しく生活する場でどんなふうに振る舞うのかは,なかなか見えてこない。そして,一旦それが見えてきたときには,時既に遅しとなってしまう。 この問題をどう解決していくのか。人間が無意識的に導入してしまった外来種も多数あることを考えると,なかなか難しいです。 個体を考える場合には,その構成要素の細胞や組織の存続には神経質になる。小さな傷にでも悲鳴をあげる。しかし,生命系の生については,直接痛みを神経細胞で感じることができないせいか,人は全くのんきでいる。だから,移入種によって生物相が撹乱されていても,その事実に神経質になる人はほとんどいない。事実を認識しないからそれで平気でいられるのである。しかし,移入種は地球の生物相に確実に影響を与えつつある。その実態に無知であっては,生物多様性の持続的利用はありえないし,人と自然との共生は,標語とはなっても実体としてはありえないことになるのである。(本書,p.291 岩槻邦男「移入生物とわが国の生態系保全」) 上の岩槻氏の言葉を何度もかみしめたい。
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