喜知次 の商品レビュー
まず冗長さが目についた。もっと短くすればよりスピーディーで濃厚さが生まれたと感じる。 そして主人公と表題の人物との関係の浅さ。解説者は何処か必死になってその関係性を説いているが、少々無理がある。少し前に読んだ『蝉しぐれ』と比較すれば一目瞭然。 何にしろ良作を最近読んでしまったのが...
まず冗長さが目についた。もっと短くすればよりスピーディーで濃厚さが生まれたと感じる。 そして主人公と表題の人物との関係の浅さ。解説者は何処か必死になってその関係性を説いているが、少々無理がある。少し前に読んだ『蝉しぐれ』と比較すれば一目瞭然。 何にしろ良作を最近読んでしまったのがこの作品の運のつき。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
タイトルは「喜知次」だけど、内容は3人の若者の生き様とかの方が楽しかった。 幼い頃は身分に関係なく友達だったのに、世の中に翻弄されてそれぞれが望む望まないに関わらず違う道をたどっていく。 でも心の中にはそれぞれの友への思いがあって、この3人の友情に関しては読み応えがあった。 喜知次はタイトルだけど、あまり印象に残らなかった。かな? 可哀相ではあるけれど。。ね。 それにしてもこの時代の背景を読むにつれ、今の日本の権力闘争にばかり力を注ぐ政治家達とダブってしまった。 今の日本にも維新のような革命が必要なんじゃないか。という気がした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
派閥闘争が渦巻く東北の藩。小太郎(弥平次)は、抗争の犠牲となった猪平と自立心の強い台助との交流を通じて、武士として藩政改革に目覚める。友情と恋を絡め、若者の成長を描いた長編。 人生の苛烈さから言えば父を暗殺され復讐の鬼と化した猪平、人間的魅力から言えばしなやかに己の志を遂げた台助の方が主人公にふさわしい気がしたが、やはり善良で未熟な小太郎こそ最も身近に感じられた。 小太郎が義妹花哉(愛称・喜知次)に抱くほのかな想いの描写がなんともみずみずしい。最後まで二人が結ばれなかったのがやり切れない。 巻末の縄田一男の解説では、山本周五郎の『さぶ』を引き合いに出し、小太郎の意識を眼醒めさせ藩政改革へと向かわせる喜知次=花哉こそが主人公である、と述べられる。 しかし、「花哉が主人公」は言い過ぎであろう。魚の名でもある「喜知次」は、4人が幸福に過ごした時代を象徴する記念碑としての意味合いが込められた題ではないかと思った。花哉を指す固有名詞としてとらえるなら、ひたむきに生き、また周りをも生かす人間の尊さが示唆されているのではないだろうか。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
財政難に揺れる東北地方の小藩を舞台に、祐筆と呼ばれる事務官僚の家に生まれた長男の成長を描く物語。閉鎖的な封建社会に反発を覚える少年時代から、喜知次と主人公に渾名される義妹との仄かな恋愛感情を絡めつつ、藩政の改革を目指す青年時代、藩を支える高等官僚として成長した40代の日まで、丁寧な筆致で一人の人間の成長が描かれる。 知人に勧められて手に取った初めての乙川優三郎氏の本。ハッピーエンドの物語ではないが、主人公の清々しい生き様からか、何とも言えない爽やかな読後感がある。青春です。
Posted by
派閥争いの激しい、百姓が貧困に喘ぐ藩の、三人の若者の物語。 幼い頃から、最終的には主人公が四十代になるまで描かれます。 タイトルは、主人公が義妹である花哉につけた名前。 この妹は、そんなに登場してくるわけではないけれど、確かな存在感を持っており、確かに「ヒロイン」として息づいてい...
派閥争いの激しい、百姓が貧困に喘ぐ藩の、三人の若者の物語。 幼い頃から、最終的には主人公が四十代になるまで描かれます。 タイトルは、主人公が義妹である花哉につけた名前。 この妹は、そんなに登場してくるわけではないけれど、確かな存在感を持っており、確かに「ヒロイン」として息づいています。 ストーリィは、藩の改革がメインですが、最後にはヒロインである喜知次に帰結してゆくのです。 そのときのせつなさ、それでいて爽やかな読後感が、胸をいっぱいにしてくれます。 そして、この作者の文章のうつくしいこと。 ちょっとした描写も丁寧で、情景を思い浮かべることが容易です。 会者定離の物語……久しぶりに、こういう上質な小説を読んだ気がしました。
Posted by
前回読んだ時代物、 藤沢周平の「蝉しぐれ」とイメージが被ったが、 読み進めるにつれ、 前者とは違う形の友情とほのかな恋慕が見えた。 大きな山場はないが、ジワジワと感じられるのは、 どうしようもない「身分」の差や不条理な政治的人脈。 そして切ない想い。 何より読み終えたとき初めてわ...
前回読んだ時代物、 藤沢周平の「蝉しぐれ」とイメージが被ったが、 読み進めるにつれ、 前者とは違う形の友情とほのかな恋慕が見えた。 大きな山場はないが、ジワジワと感じられるのは、 どうしようもない「身分」の差や不条理な政治的人脈。 そして切ない想い。 何より読み終えたとき初めてわかる、 タイトルの秀逸さ。
Posted by
題名のわりにこの喜知次はあまり登場しない、でもすごく重要…って最後に解説読んで、より納得… 大雑把に言ってしまえば、不条理で悲しい話。でも前向きで、盛り上がりはあまりないのに引き込まれる…だから好きなんだけど
Posted by
今回は藩政などと少々難しい内容でした。そしてまたもや忍耐の美徳さを全面に出してくる内容で…。物悲しいのだけれど、そこを満たす空気に惚れ込んでいます。
Posted by
読後感は、切なすぎるくらい最高です。全然、見当違いかも知れませんが、宮崎アニメを見終わったときの、何か寂しい感じに似てます。イイ本だけど、精神状態によってはツライです。
Posted by
「五年の梅」「霧の橋」と讀んできて、今囘はこの「喜知次」。 乙川優三郎の本はいつだつてしつとりとした餘情がある。 この作品は、一言で云へば、少年が大人に成長してゆく、いわゆるビルドゥングスロマンである。 藩内の派閥抗爭の中で、肝腎の行政が疎かにされてゐることに疑問を持つた主人公...
「五年の梅」「霧の橋」と讀んできて、今囘はこの「喜知次」。 乙川優三郎の本はいつだつてしつとりとした餘情がある。 この作品は、一言で云へば、少年が大人に成長してゆく、いわゆるビルドゥングスロマンである。 藩内の派閥抗爭の中で、肝腎の行政が疎かにされてゐることに疑問を持つた主人公・小太郎は、家の世襲の「祐筆」職を嗣がずに郡方の職に着かうとする。 そして、土地改良のために、土木や、治水の勉強を始める。 少年から大人への移り變りは、樣々な出來事の中で、それとなく、時にははつきりと描寫されてゐる。 「ついさつきまで立つてゐた向う岸には、台助や猪平と過した安逸な日々があり、こちら側には道もない野がある。引き返すことはできず、これから先は自力でそれぞれの道を切り開いてゆくしかない。」 喜知次は小太郎の家に幼い時に貰はれてきた、血のつながらない妹に主人公がつけたあだ名である。 これが作品の題名になつてゐるのだが、喜知次もまた自分の決めた道を歩いてゆく。 ほのかな思ひをこの義理の妹に抱いてゐた主人公の氣持ちが、この題名にもあらはれてゐる。 2003年11月15日讀了
Posted by
- 1
- 2