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親鸞とその時代 の商品レビュー

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2020/03/06

主として著者の論文集である『日本中世の社会と仏教』(1992年、塙書房)の内容を、一般の読者に向けてわかりやすく語りなおした本です。 著者は、黒田俊雄のいわゆる「顕密体制論」の枠組みを継承しつつ、そのなかで親鸞の「専修念仏」の立場が「宗教的平等」を説くものであったとして、歴史的...

主として著者の論文集である『日本中世の社会と仏教』(1992年、塙書房)の内容を、一般の読者に向けてわかりやすく語りなおした本です。 著者は、黒田俊雄のいわゆる「顕密体制論」の枠組みを継承しつつ、そのなかで親鸞の「専修念仏」の立場が「宗教的平等」を説くものであったとして、歴史的な背景のもとで親鸞の思想的意義を浮かびあがらせようとしています。 また本書では、『歎異抄』と親鸞の思想との関係についての著者の考えがていねいに論じられています。このことについては、『日本中世の社会と仏教』でも論じられていましたが、著者自身が難解だと認めており、正確に理解することは困難であり、末木文美士も親鸞の思想と『歎異抄』を区別しないことを批判していました。本書では、「正因」と「正機」の区別を改めて整理しなおすとともに、『歎異抄』における悪人正機の議論が親鸞そのひとの思想と接続する地点を明らかにしています。 さらに著者は、法然の理解者であった聖覚の立場が、嘉禄の法難の前後で変化したという主張を展開しています。この議論の妥当性については、わたくし自身はまったく判断することはできないのですが、著者のみちびき出す大胆な結論にスリリングな読書体験をあじわえます。

Posted byブクログ