逃げ道 の商品レビュー
皮肉、風刺、悪意なのか、単純にすべっているだけなのかよく分からない謎の本だった。パリ陥落を受けて地方に脱出する4人の男女(「パリ陥落という事態において脱出が遅れたのは、ディアンヌにとっては、バイロイト音楽祭の初日に出席できなかったようなもので、とうていプライドが許さなかったのだ」...
皮肉、風刺、悪意なのか、単純にすべっているだけなのかよく分からない謎の本だった。パリ陥落を受けて地方に脱出する4人の男女(「パリ陥落という事態において脱出が遅れたのは、ディアンヌにとっては、バイロイト音楽祭の初日に出席できなかったようなもので、とうていプライドが許さなかったのだ」という感じの人たち)が途中で自動車が壊れ、近くの農家で世話になりしばらく滞在するという話で、戦時下の設定が必要なのは最初の脱出と最後のオチだけ、それ以外は登場人物たちは徹底的に自分のことしか考えていない。それは別にいいとしても、全体的に意図的にやってるにしても単純に戯画化されすぎていて、もっと繊細な人物造形の人だったような気がするのだけれど(「つまり…」ディアンヌは急にまじめな声を出した。「農村には、その、一種の暴力のようなものが存在するわけね。都会の人間には想像もつかないような…!」「都会では、車で人を轢くのに忙しいからだろう。つぶす豚がいねえかわりに、あんたらには歩行者がいるじゃねえか」。)しかも中心になる話が、?東北弁(訳)をしゃべる若く粗野な農夫によろめく人妻と、その愛人?というのは91年の本なのにどうなんだろうかと心底思った。笑えるところもあるけれど、ちぐはぐな感じで、もしかしたら単に戦時中フランスはだらしなかった、ということを今さら遠まわしに言うために(遠まわしの必要は全く無いが)書いたのだろうか。最後の、「悲しみや涙のためには、人は、その死者の物語を知らなくてはならない。その背景を、細部を、知らなくてはならない。一方喜びや幸福は、そうしたものを要求しはしない。それらは曖昧なままで、充分に、満足している。」というのはこの物語に限っても普遍的に妥当しない。でもこれも皮肉かもしれないしよく分からない。登水子訳じゃないからというわけでもないと思うが、文にも往時のしまりが無いような。亡くなられているけれど。
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サガンの小説は好き。なぜなら考える内容が多く、 その人の本質によって捕らえ方が全然変わってくるから。 「逃げ道」は、タイトルにつられて購入。 フランスでは、サガンの中でもとりわけ 美味しい作品とレビューされていた。 最近出版されたモノで、訳者ももう 朝吹登水子さんではなかった。 ...
サガンの小説は好き。なぜなら考える内容が多く、 その人の本質によって捕らえ方が全然変わってくるから。 「逃げ道」は、タイトルにつられて購入。 フランスでは、サガンの中でもとりわけ 美味しい作品とレビューされていた。 最近出版されたモノで、訳者ももう 朝吹登水子さんではなかった。 相変わらずサガンの筆は皮肉が利いていて どの登場人物にも容赦はしてない。笑 異文化交流により巻き起こる人間模様、吹き出すほど内容が 面白いだけに、幕切れのあっけない残酷さが一層際立って、 何とも言えない印象が残りました。 戦争の残酷さというより、人間のどうしようもなさや、 運命の女神の冷酷さを考える。 そして、人間の根本的感情「笑い」や「泣き」についても 深く考えさせられます。 サガンは同じモチーフで田舎への小旅行という 短編も書いていて、赤いワインに涙が…という 短編集の中に収録されています。読み比べるのも一興。 一瞬の永遠が、心から心地よい。
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残酷なラストが気にならないくらい、パリ社交界の4人と農民達の繰り広げるドラマがユーモラス。 "les Faux-Fuyants"
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サガンの中で一番好き。面白い。 戦時に農村に逃げるパリ社交界一行と、農村の人々の異文化交流。ラストまで読んでほしい。
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