弥勒 の商品レビュー
おそらくはチベット近辺の某国をモデルにしたパスキム。 その仏教美術に魅せられた日本の「文化人」である主人公が足を踏み入れたのは、今まさにクーデターの最中の国。 緻密な筆致が読むごとに迫力を増し、生と死と、宗教と国家、そして命を問いかける重厚な内容。 人の価値観の根底をがっつり掴ん...
おそらくはチベット近辺の某国をモデルにしたパスキム。 その仏教美術に魅せられた日本の「文化人」である主人公が足を踏み入れたのは、今まさにクーデターの最中の国。 緻密な筆致が読むごとに迫力を増し、生と死と、宗教と国家、そして命を問いかける重厚な内容。 人の価値観の根底をがっつり掴んで揺さぶりをかけ、果たして自分の信じていたものが正しかったのか、と問いただす読了後。 精神状態が万全なときに読むのをおすすめ。 かなりヘヴィです。 ただし、覚悟して読むだけの価値あり! 厚みもあっぱれ、読み手への挑戦をがっしりと受けて立ちましょう!
Posted by
11月23日読了。「このミステリーがすごい!」1999年度の第17位の作品。中国・インド・ネパールに国境を接するとされる架空の国パスキムの文化・芸術に魅せられた日本の新聞記者が、政情不安の只中のパスキムに潜入しそこで見たものと、1年のパスキム滞在で彼が体験することとは・・・?高潔...
11月23日読了。「このミステリーがすごい!」1999年度の第17位の作品。中国・インド・ネパールに国境を接するとされる架空の国パスキムの文化・芸術に魅せられた日本の新聞記者が、政情不安の只中のパスキムに潜入しそこで見たものと、1年のパスキム滞在で彼が体験することとは・・・?高潔と堕落、文明と退廃など異なる価値観が交錯し、宗教とは?国家とは?幸福とは?人間とは?と、「答えは様々なのだよ」などとしたり顔の結論では済まされない問いかけが押し寄せる傑作。読み進む間の緊張感もたまらないものがあり、重い読後感が残る。オチでアッと言わされるようなカタルシスミステリーを求める人には向かないだろうが、実に読み応えのある傑作。
Posted by
伝統美術の保護を求めて革命中の国へ密入国した主人公。 首都の華麗な姿にひかれて入国したものの, そこにあったのは破壊と殺戮。 しかも首都以外は予想だにしなかった状況。 革命軍は霊的なものを全て否定するが, 物語の最初と最後は盗み出した弥勒の罰という霊的なものに挟まれているという構...
伝統美術の保護を求めて革命中の国へ密入国した主人公。 首都の華麗な姿にひかれて入国したものの, そこにあったのは破壊と殺戮。 しかも首都以外は予想だにしなかった状況。 革命軍は霊的なものを全て否定するが, 物語の最初と最後は盗み出した弥勒の罰という霊的なものに挟まれているという構造が面白い。
Posted by
ヒマラヤ近くの架空の国のお話。 衝撃的で重たい内容ですが、国とは社会とは宗教とはと考えさせられます。中国の共産主義やポルポト政権を題材としているそうです。
Posted by
仏教美術に始まるこの作品、そのまま仏教美術の物語に突入するのかと思っていたら、そんな平和な物語ではありませんでした。 インドと中国の間に位置する小国パスキム。独自の文化と信仰を持ち、人々は豊かな生活を享受している。。。はずだったのに、突然起きたクーデター。破壊されているであろう仏...
仏教美術に始まるこの作品、そのまま仏教美術の物語に突入するのかと思っていたら、そんな平和な物語ではありませんでした。 インドと中国の間に位置する小国パスキム。独自の文化と信仰を持ち、人々は豊かな生活を享受している。。。はずだったのに、突然起きたクーデター。破壊されているであろう仏教美術に思いを寄せる永岡は、パスキムに単身潜入する。革命軍に捉えられた永岡の生活体験は、彼の価値観を根底から揺り動かす。 主人公永岡が、美とは、信仰とは、幸せとは、生きることとは、死ぬこととは、と思考を再構築せずにはいられない姿に圧倒されます。 人間の命の尊さということが日本では当たり前に言われていますが、それが通用する世界はほんの一握りでしかないのではないかと思い知らされます。 この作品の中では、急進的な革命の末路なども描かれているのですが、革命を起こす側の人間が真摯な思いで革命を起こしているという部分もきちんと描かれているために、余計におろかというか、浅はかというか、人間の器の限界みたいなものを思いました。 人間の目は前についている。だから物事の一面しかとらえられないという言葉を思い出しました。 チベット、ブータンを連想しました。 最後の脱出シーンは本当に手に汗握りハラハラしました。
Posted by
まったく知らなかった世界だけにすごい面白かった。本当に引き込まれた。人が生きるのに本当に必要なものは?人のために本当に良い社会って?
Posted by
主人公が初め信じていた絶対的な美意識がことごとく覆される。虚飾と現実。飽食と飢餓。貧富の差などなど。異国の魅力満載。作者の創作で現実にはない国らしいが、異国の文化にすごく興味を持った。
Posted by
やばい。かなりの衝撃を受けた。今年に入って読んだ本の中で、「リヴィエラを撃て」「砂のクロニクル」につづきかなりはまった。 どういう社会が幸福なのか、ということに関しての自分の価値観が崩れた。 最初、架空の国が舞台になってることに違和感を感じたけど、この話は架空の国を想定しないと作...
やばい。かなりの衝撃を受けた。今年に入って読んだ本の中で、「リヴィエラを撃て」「砂のクロニクル」につづきかなりはまった。 どういう社会が幸福なのか、ということに関しての自分の価値観が崩れた。 最初、架空の国が舞台になってることに違和感を感じたけど、この話は架空の国を想定しないと作れない、と後で納得。 望ましい社会とは、宗教とは、救いとは、などなど色々考えさせられる。 特に、国際協力をめざす人は一回読んでみたらいいと思う。
Posted by
ヒマラヤの小さな仏教王国パスキムを襲う政変と、その真相を確かめようとして巻き込まれていくジャーナリストの苛酷な運命を描く物語。カンボジアにポル・ポト政権みたいなものがなぜできたのか、どうしても理解できなかったけれど、この本読んだらなんだか考えの糸口がつかめたような気がしました。
Posted by
篠田作品の中では一番好き。同じラインに『ゴサインタン』『コンタクトゾーン』があるが、『ゴサインタン』が最高潮、『弥勒』はくどすぎる・・・という批評もあるが、私は感動した。(さすがに『コンタクトゾーン』はもう飽きてしまったが・・・) 既存の価値観を塗り替えられる。人間の根底を見直し...
篠田作品の中では一番好き。同じラインに『ゴサインタン』『コンタクトゾーン』があるが、『ゴサインタン』が最高潮、『弥勒』はくどすぎる・・・という批評もあるが、私は感動した。(さすがに『コンタクトゾーン』はもう飽きてしまったが・・・) 既存の価値観を塗り替えられる。人間の根底を見直したくなる。
Posted by