解説屋稼業 の商品レビュー

鹿島茂(著者)

2021/05/09

鹿島茂の書いた、文庫本や全集本(つまり他者の著作)の解説だけを集めた本。
冒頭に収められた、東海林さだお『行くぞ！冷麺探検隊』の解説が抱腹絶倒のおもしろさで、正直なところ「抱腹絶倒」度でそれに並ぶものは他になく、あとは普通に、なるほどねえとか思いながら静かに読書を楽しんだ。

この本を買ったきっかけが、鹿島茂の立ち上げた書評サイト「ALL REVIEWS」でその東海林さだお本の解説文がフリーで読めて大笑いしたことであることを思うと、まーなんという宣伝の成功。同じように大笑いできる解説はなかったのだから、「やられたー」とも言えるけれど、ちょっと考えれば、解説屋たるもの、解説の対象になる著作にふさわしい装いで巻末に収まる術を心得ているのは当然なのだろう。

…でも、できることならショージ君を語る鹿島茂を永遠に見ていたい。東海林さだおの本以上にそっちを読みたい。この『解説屋稼業』を読んだ感想も、解説されている本を読んでみたいなと思わなかったわけではないが、どちらかというと、「やっぱり鹿島茂の書くものって読んじゃうなー」という方が強い。今回は鹿島茂の本だと思って読んでいるんだから良いとして、実際文庫本を読み終わって、「本編はいまいちだけど解説が面白かった！」という経験はある。そう考えると「文庫本の解説」という場はただの添え物ではなく、なかなかにアツい。