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ユーラシア無限軌道 の商品レビュー

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2011/10/31

 バルカン半島といえばギリシャやブルガリア、ルーマニア、旧ユーゴスラビアなどがある場所。1989年、革命により独裁者チャウシェスクを倒し民主化したルーマニアや、長い紛争の末5つの国に分かれたユーゴスラビアなど、近年になって大きな変革を迎えた国の多い半島でもある。そんなバルカン半島...

 バルカン半島といえばギリシャやブルガリア、ルーマニア、旧ユーゴスラビアなどがある場所。1989年、革命により独裁者チャウシェスクを倒し民主化したルーマニアや、長い紛争の末5つの国に分かれたユーゴスラビアなど、近年になって大きな変革を迎えた国の多い半島でもある。そんなバルカン半島を36年間に100回以上も訪ねた作者。彼が大好きであるというルーマニアを中心に、歩きまわった記録の本だ。場所が場所だけに、書くことには事欠かないはず。米ソ対立の崩壊と共に民族紛争を繰り返してきた地域を旅しているにもかかわらず、この本は戦争の悲惨さを語るジャーナリズムとは無縁だ。旅行記ですらない。作者がその地へ行って、出会った場所や人たち、本や映画、音楽について語った「旅のエッセー」だ。  彼が出会うのは、圧政下の映画人や哲学者、知られざる教養人たち。はじめて出会った彼を家に泊め、平気で仕事に出かけるような人たち。彼らと、たとえば映画に描かれた「恥」について語り合う。つらい生活の中でも「白夜」があるから生きていけるのではないか、という独特の視点にたどり着く。こうした、一見なんの関係もない断片がまとめられると、ユーラシア大陸のアウトラインに触れられるような気がする。  著者のプロフィールによると、肩書きは写真家でエッセーイスト。海外での写真展も多く、たとえばトマトひとつにこだわった「世界トマト紀行」といった連載でも知られている。

Posted byブクログ