宮廷の道化師たち の商品レビュー
星4つに近い星3つ ユダヤ人の4人はそれぞれの特異な能力から、強制収容所内で司令官お気に入り道化師の地位を得、地獄を生き延びた。その中の1人はある人物に復讐を誓っていた。神が罪を罰しないのであれば、被害者が自ら罰しなければいけないのだ。 戦後の混乱の中に消えたターゲットを探...
星4つに近い星3つ ユダヤ人の4人はそれぞれの特異な能力から、強制収容所内で司令官お気に入り道化師の地位を得、地獄を生き延びた。その中の1人はある人物に復讐を誓っていた。神が罪を罰しないのであれば、被害者が自ら罰しなければいけないのだ。 戦後の混乱の中に消えたターゲットを探し出すのは難しく、復讐は困難かに思われた。だが、まるで何かに導かれるように上手くことが運んでいく。自分は神に遣わされた道具なのかもしれない。 では、罪を罰する全能の神は、なぜユダヤ人の迫害をも為したのか。神は収容所の司令官であり、我々は神の作った道化師なのか。 苦く悲しく、そして長い歴史を持つユダヤ人の信仰の知恵を伝える作品である。読者に信仰上の問いを残すものではなく、本書の中に答えは提示されている。一歩間違うと、よくある問とよくある答えであるが、著者が1912年生まれのチェコ系ユダヤ人ということもあり、ご本人の経験や人生観に裏打ちされているであろう説得力がある。 また、物語の構成や登場人物の関係もよく練られており、読みやすく、後半に出てくる信仰問答は一神教文化にない者にあっても分かりやすい。 チェコ語だと端正で古風な文体で絢爛たる比喩に満ちているらしいが、少なくとも日本語訳はそうでもない気がした。 ホロコーストに関する本を読むたびに、フィクションでもノンフィクションでも気分が悪くなる。よくこんなことができたものだと思う。一番恐ろしいのは、街や収容所でユダヤ人を迫害し、管理し、暴力をふるって殺していてたのは、鬼でも猟奇殺人犯でもなく、おそらくふつうのドイツ人だったということだろう。2度と繰り返さないために、また現代がなぜこうなっているのかを知るために、人類必修の事実だと思う。
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