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石原莞爾 の商品レビュー

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2015/12/03

600ページを超える大作。 石原莞爾の一般的イメージは関東軍の汚名と共に有るのでは無かろうか? しかし知れば知る程、彼はユートピア的理想主義者であり、その思想は左翼的ですらある。一方で超ドライなリアリストであり、徹底した対中不戦論者であったことは意外と知られていない。1930年時...

600ページを超える大作。 石原莞爾の一般的イメージは関東軍の汚名と共に有るのでは無かろうか? しかし知れば知る程、彼はユートピア的理想主義者であり、その思想は左翼的ですらある。一方で超ドライなリアリストであり、徹底した対中不戦論者であったことは意外と知られていない。1930年時点でヨーロッパ没落とアメリカの台頭、そして将来的な対米戦争は避けられないと予言。それまではソヴィエトの南下を防ぎ、中国/満州と有効な関係を構築し、最低20年はアメリカと交戦してはならないと考えていた。 石原の東亜連盟構想は、国家の水平統合であり、実施質的に日本を頂上に据えた垂直統合である大東亜共栄圏構想とは、根本的に性質の異なるものであると言える。 イメージを簡略化し過ぎかもしれないが、現在のEUのような国家の水平統合を以て、集団的防衛力を強化し、勃興するアメリカ帝国主義に対峙する、というのが石原のシナリオであった。 石原のヴィジョンは、その後おもに陸軍に悪用され、日中戦争の拡大/泥沼化、そして最悪のタイミングでの日米開戦に至った。 本書では、100年単位での戦略/ヴィジョンを持った石原を、中枢から排斥した力の源泉が、東條のルサンチマンであった、という切ない解釈だが、強ち暴論でもあるまい。

Posted byブクログ