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ピランデッロ戯曲集(2) の商品レビュー

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2017/11/12

演じるとは?フィクションとノンフィクションの違いとは? と考えているうちにあらぬ方向へ踏み出したらしき三作。恩田陸「中庭の出来事」は恐らくこちらから着想を得ているのでは。 大好きな作家である皆川博子のエッセイやインタビューで著者名を知り、神奈川芸術劇場・中スタジオで「作者を探す...

演じるとは?フィクションとノンフィクションの違いとは? と考えているうちにあらぬ方向へ踏み出したらしき三作。恩田陸「中庭の出来事」は恐らくこちらから着想を得ているのでは。 大好きな作家である皆川博子のエッセイやインタビューで著者名を知り、神奈川芸術劇場・中スタジオで「作者を探す~」が上演されるとのきっかけで読み出したけれども、他二作も負けず劣らず混沌としている。 「作者を探す六人の登場人物」:劇団員たちがリハーサルのために集っていた。そこへ現れたフィクション世界の一家たち。彼らは作者に名は与えられたものの、作品を書かれることなく見捨てられたのでドラマを演じたいと言う。一家の中ではどうやら良からぬことが起きたようで… フィクションが劇中のノンフィクション世界を侵食する様に恐怖を覚える作品。途中途中でユーモアを挟むだけに、結末の放られ方に唖然としつつ鳥肌が立った。くどくどした作者序文に抵抗がある方がいれば飛ばしてもOK。 実際の上演ではLINEなども登場。現代的な設定の中でイタリアの一家に起きた古典的とも言える作中作の修羅場が浮いており、尚のこと奇妙さが目立った。また劇中に登場するスタッフ役も、神奈川芸術劇場のTシャツを着用する拘り様。事前に読んでから観劇した身からしても、面白いと思いつつ何かとんでもないことが起きている印象を受けただけに未読で挑んだ人は頭の中が?マークで一杯だったに違いない。 「エンリーコ四世」:祭りの最中に落馬し、自身を皇帝であるエンリーコ四世と思い込んだ館の主人。彼の妄想に皆付き合っていたが… こちらは"正気と狂気は紙一重"がテーマ。比較的シンプルなせいもあるのか、映画化もされた程の作品。イタリアらしいメロドラマということもあり、割と取っ付き易い。「作者~」が中スタジオにぴったりだとすればこちらは新国立劇場なイメージ。 「今宵は即興で演じます」:開演時間になり、会場の明かりが消えた。しかし、幕開けのゴングが鳴らない。どうやら演者陣は揉めている様子。そこへ演出家が登場し、作品の説明を始めるが最初は会場の客、次は演者と言い合いになり作品は始まらない。漸く始まった作品はある一家の四人娘を巡る不和話だった… 粗筋をまとめていても混沌としている。その上、幕間劇でもロビーで登場人物たちが話している間、演出家が舞台に向かって注文しているなんて場面も登場するので中々現在では上演可能な会場が見つからなさそう。 試みとしては非常に面白い点が多いものの、劇中劇が昔のイタリア映画にありそうな筋書きなので後半冷めた気持ちになる。なお、台詞内でさらりと前二作に触れている部分があるのでなるべく収録順通り一番最後に読むのが無難。

Posted byブクログ