マルコ・ポーロの見えない都市 の商品レビュー
まずは目次にぞくぞく。「都市と記憶」「都市と欲望」「都市と記号」‥‥。 言葉が濃密で、読み進むのがもったいない。ページをめくってもめくっても、期待を裏切られることがない。 語られるのは、錫を敷き詰めた道、めぐらされる花綏、館という館に備えられる螺旋階段、沐浴する異国の女。 マルコ...
まずは目次にぞくぞく。「都市と記憶」「都市と欲望」「都市と記号」‥‥。 言葉が濃密で、読み進むのがもったいない。ページをめくってもめくっても、期待を裏切られることがない。 語られるのは、錫を敷き詰めた道、めぐらされる花綏、館という館に備えられる螺旋階段、沐浴する異国の女。 マルコポーロが彼の旅した様々な街を語り続けます。 フビライ汗はひたすらこの若者の言葉に首を傾けます。 なんの事件も起こらず、それなのに、このバリエーション、この豊穣な言葉、イメージ。要約不可の物語です。 マルコの報告は「周囲に残された空間、言葉によって満たされていない空虚」によってフビライにとって貴重なものとなり、「考えにふけりながらそのなかを逍遙し、迷い込み、立ち停まって涼をとり、また走って逃げ出すこともできるという長所」を持っていた。 それは読んでいる私にとっての魅力でもあり、もっと広げるなら幻想系の物語が持つ大きな魅力であるように思える。
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カルヴィーノは大学時代に好きだった作家。先日参加した読書会で、なぜか『見えない都市』が話題になり、ふと読み返したくなったので、夜寝る前に一編ずつ読んで読了。マルコ・ポーロとフビライ汗の対話を間に挟みつつ、超短編で描かれる都市の数々は、カルヴィーノ最高傑作との誉れが高い。そう言えば...
カルヴィーノは大学時代に好きだった作家。先日参加した読書会で、なぜか『見えない都市』が話題になり、ふと読み返したくなったので、夜寝る前に一編ずつ読んで読了。マルコ・ポーロとフビライ汗の対話を間に挟みつつ、超短編で描かれる都市の数々は、カルヴィーノ最高傑作との誉れが高い。そう言えば、「古典とは『読んだ』とは言われず『読み返した』と言われる本のことだ」と喝破したのも、カルヴィーノだな。 夕暮に幸福な過去を想う都市ディオミーラ、陸と海とに異なる希望を見せる都市デスピーナ、記号とその意味が完全に混乱した都市タマラ、水道管都市アルミッラ、思い出を商う都市エウフェミア、空中都市バウチ、遠くにのみ存在する都市イレーネ、地中都市アルジア、宇宙と完全に照応する都市アンドリア、全ての都市トルーデ、不正を内在する正義を内在する不正を内在する正義の都市ベレニーチェ。一つとして現実に存在しそうな都市はない。しかし、都市論・文明論とも読める寓話であったり、現実世界にピタリとあてはまる暗喩であったり、どの都市も確かに存在している。まさに「見えない都市」。
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マルコ・ポーロが幻視した、55の都市の物語。今までの人生で読んだ本の中から1冊だけ選べと言われたら、この本を選んでしまうかも知れない。装丁も翻訳も素晴らしい。
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エンデの「鏡のなかの鏡」に似た印象の、短編で綴られる幻想小説ですが、これは面白い! マルコ・ポーロがフビライ汗に遍歴して来た都市について語る物語という「東方見聞録」のパロディ的なスタイルで書かれた作品ですが、語られる都市は明らかに13世紀の都市ではなく、いずれも非常に幻想的。ファ...
エンデの「鏡のなかの鏡」に似た印象の、短編で綴られる幻想小説ですが、これは面白い! マルコ・ポーロがフビライ汗に遍歴して来た都市について語る物語という「東方見聞録」のパロディ的なスタイルで書かれた作品ですが、語られる都市は明らかに13世紀の都市ではなく、いずれも非常に幻想的。ファンタジーとして読んでも面白いでしょうが、それぞれの都市に託された「生活」や「記憶」、「人生」、「旅」についての見方・解釈がとても興味深く、幻想の世界を眺めるというよりはもっとリアルな目線で読み、吸収したい作品です。マルコの物語の合間に挟まる、全てを支配していながら実際には「そこ」へ行くことのできない王者・フビライとの対話。一つ選択するごとに、無数の選択肢の先にあったはずの未来を失っていく、それこそが人生だとするならば、どこへも行くことのできない王者は我々自身の姿なのかも…。けれど、幻想のような都市について「われら二人が、ただ彼らを思うがゆえに存在するだけ」とも語るマルコ、その言葉を信じるなら、我々の目に隠された“見えない都市”を見る方法は、我々の中にあるはず。読み返し、時間をかけて咀嚼していきたい一冊。
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小説・・・?うーん、ストーリ性はほとんど無いんだけど、分類するならこれかなぁ・・・? とにかく訳分かんない話です。簡潔に言うとマルコ・ポーロなる人物がフビライ汗に自分が見てきた都市達を語るんだけど、それがまた奇想天外というか、荒唐無稽というか・・・。まぁ、全て作者の考えた(だろ...
小説・・・?うーん、ストーリ性はほとんど無いんだけど、分類するならこれかなぁ・・・? とにかく訳分かんない話です。簡潔に言うとマルコ・ポーロなる人物がフビライ汗に自分が見てきた都市達を語るんだけど、それがまた奇想天外というか、荒唐無稽というか・・・。まぁ、全て作者の考えた(だろう)都市なので実際には存在しません(・・・たぶん)。 文章の意味を理解する事と、その都市像を理解することに最初は非常に時間がかかっていました。一都市の説明が2〜4ページの短さだけど、その分やっと理解したと思ったら次の都市へ〜、というようになって「折角都市像を掴めたのに!」と名残惜しく思いながら去っていました。あれ、これってポーロさんの思う壺? いつも人々が対話をし、時代の移り変わりと共に役割が変わったり、一人何役もこなし、また一役を何人もがこなす都市。 細長い2本の足に支えられた空中都市。 全てが風化し、水道管だけが残りそこにかつての住人の幻を見る都市。 よく分からない本を読んでみたくなったらどうぞ。
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