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体系への道 の商品レビュー

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2013/12/30

著者の初期ヘーゲル研究をまとめた本。わが国の初期ヘーゲル研究はたいへん活発で水準も高く、細谷貞雄、加藤尚武、藤田正勝、久保陽一などによる、それぞれに特色のある研究が存在する。本書の著者は、O・ペゲラーのもとでヘーゲル文献学を学んでおり、藤田正勝『若きヘーゲル』(創文社)の研究スタ...

著者の初期ヘーゲル研究をまとめた本。わが国の初期ヘーゲル研究はたいへん活発で水準も高く、細谷貞雄、加藤尚武、藤田正勝、久保陽一などによる、それぞれに特色のある研究が存在する。本書の著者は、O・ペゲラーのもとでヘーゲル文献学を学んでおり、藤田正勝『若きヘーゲル』(創文社)の研究スタイルに近い。とくに、イエナ期とフランクフルト期のヘーゲルの思想を、文献学的・発展史的方法によって解明している。 本書がめざすのは、フランクフルト期のヘーゲルが、ヘルダーリンとの交流によって「生」についての思索を深めていき、イエナに移住した後には、シェリングとの交渉によってみずからの哲学原理を明らかにしていった経緯をたどることである。その際、「生」と哲学、国家、宗教との関係について広く関係資料を渉猟し、『イエナ体系草稿』において「人倫の体系」と「精神の体系」が結実するに至るプロセスを描き出している。 カント哲学においては、道徳が普遍的な義務とみなされており、衝動や傾向といった特殊的なものと対立させられていた。これに対してシラーは、特殊なものを道徳の根底にある法則と一致させるために、抽象的な道徳を心情に基づけようとした。だがそこでは、統一が孤立したままにとどまっていた。そこでヘルダーリンは、心情を全体的な統一としての「愛」の中に統合しようとした。ヘーゲルはこの考えから大きな影響を受け取り、みずからの制限を運命として経験し、自分の内に分裂を経験することで、新たな全体へと向かう「生」に基づく哲学を構想した。 その後、イエナへと移ったヘーゲルは、シェリングの有機体的な体系に対して、より高い哲学的な欲求を体系に求めようとした。彼は「反省」概念を「悟性としての反省」と「理性としての反省」に分け、分離に基づく前者に対して、分離を再統一する後者の重要性を指摘し、こうした「理性としての反省」を「哲学の欲求」と結びつけようとしたのである。 さらに、こうしたイエナ期のヘーゲルの体系構想が、彼の人倫についての考察の中で、より具体的な展開として考えられていったことについても触れられている。

Posted byブクログ