尼僧柔肌巡礼 の商品レビュー
ある日、68歳で医師の清川隆平のもとに、滝壺に落ちているところを救い出された一人の尼僧が連れてこられます。白蓮という名前らしい彼女は記憶をうしなっていましたが、早まって死ぬことはないという清川のことばに心を動かされ、その夜みずから彼の部屋に現われ、抱いてほしいと告げます。 その...
ある日、68歳で医師の清川隆平のもとに、滝壺に落ちているところを救い出された一人の尼僧が連れてこられます。白蓮という名前らしい彼女は記憶をうしなっていましたが、早まって死ぬことはないという清川のことばに心を動かされ、その夜みずから彼の部屋に現われ、抱いてほしいと告げます。 その後白蓮は、四国遍路を巡礼しながら、26歳の杉山陽一や63歳の黒木栄三といった男たちと関係をもちます。彼女は、セックスのエクスタシーのなかでわずかにうしなった記憶の片鱗に触れることができるのです。そして、しだいに彼女は自分が阪神で起こった震災と、「統一真理学会」というテロ事件を起こした宗教団体に、過去の自分がかかわっていたらしいことを思い出します。 その後、隆平の息子の清川竜介と白蓮が恋人どうしだったことが判明します。二人の恋仲を知った教祖は、彼女たちのあいだを引き裂こうとし、その結果白蓮は教団で使用されていた6億円相当の麻薬を持ち出して逃げてきたのでした。白蓮は、竜介のふりをして6億円のありかを白蓮から聞き出そうともくろむ中江敏行という男に騙されながらも、すこしずつみずからのルーツをたどり、ついに彼女の暮らしていた家にたどりつくことになります。 その後白蓮は、「桃月庵」という庵寺の庵主となり、悩みを抱えて彼女のもとを訪ねてきた土方敏彦や、世話人となった小山重吉、さらに生物学者の北川玲一といった男たちと身体をかさね、なおも思い出すことができないでいた麻薬の隠し場所にまつわる記憶を掘り起こしていくことになります。 エンターテインメント小説に官能描写を織り込んだ、いわゆる「中間官能小説」です。刊行当時に世間を騒がせていた阪神淡路大震災やオウム真理教事件をからませながら、美しい尼僧のうしなわれた記憶がすこしずつ取り戻されていくというストーリーになっているのですが、官能描写もいわゆる「純官能小説」ほどの濃密さはなく、ストーリーそのものも散漫で、見るべき内容はありません。
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