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天気待ち の商品レビュー

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2013/03/11

書名の「天気待ち」というのは映画の撮影時、思った画が撮れる天気になるまで撮影を中止することである。著者は、『赤西蠣太』を見て、伊丹万作にファンレターを送ったのが機縁となって、黒澤明の『羅生門』撮影にスクリプターとして加わることになる。最初に書かれたこのエピソードを読んだだけで、映...

書名の「天気待ち」というのは映画の撮影時、思った画が撮れる天気になるまで撮影を中止することである。著者は、『赤西蠣太』を見て、伊丹万作にファンレターを送ったのが機縁となって、黒澤明の『羅生門』撮影にスクリプターとして加わることになる。最初に書かれたこのエピソードを読んだだけで、映画好きなら著者の幸運を羨みたくなろうというものだ。もっとも、『羅生門』の撮影は1950年だから、当方まだ生まれていない。 日本映画界に素晴らしい才能が綺羅星のごとく並んでいた頃の話である。スクリプターとして、黒澤明に付き、監督や役者を含む黒澤組のスタッフの素顔をスクリ-ンの裏側で見てきた人の話がおもしろくないはずがない。特に、たった4人しかいない日本人スタッフの一人として、シベリアロケを経験した著者の『デルス・ウザーラ』撮影秘話は、黒澤の苦労がどんなものだったかをよく伝えて興味深い。この映画は公開当時期待して見に行きながら、首を傾げて帰ってきたのを覚えている。黒澤が撮影中「今まで、俺が撮りたいと思った画は、ひとつも撮れたことがないんだ!」と怒ったという挿話が、この映画の出来を物語っている。 黒澤の映画では、仲代が主演した後期の大作より、三船敏郎が主演した頃の作品の方が好きだ。特に『椿三十郎』のようにユーモアが前面に出た作品を何より愛するものだが、黒澤の才能を早くから買っていた伊丹万作なら、何を推すだろうか。その三船だが、豪放磊落な風貌の裏に人一倍他人を気遣う繊細さがあったことをこの本で知った。生半可な気遣いぶりではない。シャイな性格ゆえ、みんなが寝静まってから泥酔して車を走らせ、ストレスを発散させていたという。そういう三船の持つ人間性を黒澤の映画は見せてくれる。他の映画では三船はただの木偶の坊である。 『ヨーロッパ退屈日記』以来の伊丹十三ファンだが、彼の自殺にはショックを受けた。最もそういう行為からは遠い人格だと思いこんでいたからだ。伊丹家との深いつながりもあって、著者は若い頃から伊丹(十三)を知っている。その伊丹が、父万作のことを我が子に伝える言葉に感銘を覚えた。「父の役割は、自分の父のことを子に伝えることだ」という伊丹の言葉は、二年後の事件を思うとき、彼の胸中にあった思いを想像させずにはおかない。

Posted byブクログ

2009/10/04

黒澤明監督の撮影現場、身近にいたスクリプターならではの名著。 黒澤映画の現場の凄さがよくわかる。映画作りの大変さもよく伝わってくる。

Posted byブクログ