非仏非魔 の商品レビュー
久松真一の主催するFAS協会の中心的なメンバーだった著者が、久松禅学を深く学びつつ、そこから百尺竿頭一歩を進めて独自の「非仏非魔」の立場へといたる道筋を説いた本です。後半は西谷啓治との対談が収録されています。 著者は、「虚空即法身」という宗教的な深い自覚へと到達したとき、「即」...
久松真一の主催するFAS協会の中心的なメンバーだった著者が、久松禅学を深く学びつつ、そこから百尺竿頭一歩を進めて独自の「非仏非魔」の立場へといたる道筋を説いた本です。後半は西谷啓治との対談が収録されています。 著者は、「虚空即法身」という宗教的な深い自覚へと到達したとき、「即」がなおも即自的なものにとどまっているのではないかと自問することが必要だと主張します。そして、虚空が即自的に法身であるとして実体化されてしまうばあいには「天魔」の立場に陥り、反対に法身が即自的に虚空であるとして絶対化されてしまうばあいには「陰魔」の立場に陥ると述べます。 そのうえで著者は、こうした危険性を克服するための道を求め、虚空と法身が真に回互的な「即非」の関係にあることが対自的に深く自得されなければならないと主張します。このときにはじめて、禅本来の無礙の境地が現実のものとなります。著者のいう「非仏非魔」の立場とは、こうした境位を意味しています。 著者のこうした立場は、久松の「東洋的無」の立場を継承するものですが、「主体的無」の立場が同時に「無的主体」であり、双方向的で回互的な関係が見据えられているという点で、本書は著者自身にとってまさしく「殺仏殺祖」の試みだったのではないかと思います。
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