恥辱 の商品レビュー
すっきりしなさがある。 書名のとおり、主人公である男性大学教授はスキャンダルで大学を追われ、身を寄せた娘の家でも災難に襲われ、親子は身を持ち崩していく。 しかし、そこに至るまでの選択は釈然としない。いくらでも他の手段があるのに、あえて"屈辱的"な道を選んでいる...
すっきりしなさがある。 書名のとおり、主人公である男性大学教授はスキャンダルで大学を追われ、身を寄せた娘の家でも災難に襲われ、親子は身を持ち崩していく。 しかし、そこに至るまでの選択は釈然としない。いくらでも他の手段があるのに、あえて"屈辱的"な道を選んでいるかのよう。 本書で描かれるミクロな「恥辱」を通して作者が言いたい本当の「恥辱」は、おそらくマクロな社会秩序の方だろう。デイヴィッドはミソジニックな考えの持ち主で、抱く女に不自由していなかったが、女性の告発により「恥辱」を味わう。白人であるデイヴィッドとルーシー親子は、アパルトヘイトが存在したこの国でつい最近まで下等市民でしかなかったはずの黒人一家に呑み込まれていく。 要は、男と女、白人と黒人という以前の支配・従属関係が解消され、復讐されるという「恥辱」なのだろう。主人公たちの行動がいまいち釈然としないのもそのせいなのかもしれない。彼らが合理的な行動をしていれば可哀想な被害者の印象が強くなるが、そうではないのだから。 作品内で、「恥辱」下、当事者として生まれる次世代の存在は、決してポスト「恥辱」の新たな社会、新たな時代を否定してはいないことを示していると思う。そこまで考えてなお、どうにも「恥辱」という言葉の選択にはもやもやするものが残る。
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えっ、ちょっと待って、これでおしまい?置いてきぼりを食らったような結末。 性欲をコントロールできない孤独な初老のインテリ男。自分のセクシャルハラスメントを美しい文学で粉飾し正当化する。そして、大学から追放される。 娘の身の処し方は常識では理解し難い。しかし彼女にとっては大事なもの...
えっ、ちょっと待って、これでおしまい?置いてきぼりを食らったような結末。 性欲をコントロールできない孤独な初老のインテリ男。自分のセクシャルハラスメントを美しい文学で粉飾し正当化する。そして、大学から追放される。 娘の身の処し方は常識では理解し難い。しかし彼女にとっては大事なものを死守するための唯一の選択肢。犬になってでも守るべきものがあると。 犬のような彼は犬の運命を自分の手中にする。 読後、主人公に対しての共感は皆無。作者も読者に対して共感を求めていないはず。苦々しい読後感。男の欲望丸出しのセクシャルハラスメント、それを正当化することに利用される文学、暴力と凌辱による植民地主義への反抗、それを受け入れてでも自分の土地と生活を死守しようとする現代の若者の生き方…
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わたしには難解な小説だったような読後感。ブッカー賞を2度 ノーベル賞も受賞した作者、初めて読んだけど、やはり文化や環境の違いですんなり理解できないもどかしさが強かった。それでも引き込まれて一息に読了。話は南アフリカを舞台に大学教授職も友人も家族も自らの不始末で失っていく初老の...
わたしには難解な小説だったような読後感。ブッカー賞を2度 ノーベル賞も受賞した作者、初めて読んだけど、やはり文化や環境の違いですんなり理解できないもどかしさが強かった。それでも引き込まれて一息に読了。話は南アフリカを舞台に大学教授職も友人も家族も自らの不始末で失っていく初老の男が安寧を求めた娘の住環境にも馴染むことが叶わず彷徨いが続く。
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途中これはどうなるんだろうかと結構のめり込んで読んでいたのに完全に肩透かしを食らわされた感あり。 主人公と読者の彷徨のシンクロナイズを狙ったんだろうか?そんなことないよなぁ、、、とにかく読者に考え込ませるのではなく、ただ沈黙に陥ってしまう感じかな。 ところで、日本語訳で娘が父を絶...
途中これはどうなるんだろうかと結構のめり込んで読んでいたのに完全に肩透かしを食らわされた感あり。 主人公と読者の彷徨のシンクロナイズを狙ったんだろうか?そんなことないよなぁ、、、とにかく読者に考え込ませるのではなく、ただ沈黙に陥ってしまう感じかな。 ところで、日本語訳で娘が父を絶えず「あなた」と呼び続けていたんですけど、これは両者の絶対的距離感を表現するための選択だったんでしょうか?何か違和感を感じなくはなかったけれど、まさかyouをそのまま訳してみましただけみたいなことはないですよね、、、
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序盤、主人公教授が気もち悪くて読むのやめようかとおもったけれど、あっけなく転落したから読み進めたんだけれど・・・・。 読みやすいし面白いから2日くらいで読めたのに、すごく疲れた。 登場人物全員、理解できる人間が一人もいなかった。 なんだかどんよりするなぁ。
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J.M. クッツェーは、南アフリカ出身のノーベル賞作家。 本書、『恥辱』は、『マイケル・K』に続く二度目のブッカー賞授賞作品。大学教授である52歳の男が、教え子に手を出し、大学を追われたのち、身をよせた娘の農場での出来事を描いてるもの。『恥辱』を読むことで南アフリカの社会的問題が...
J.M. クッツェーは、南アフリカ出身のノーベル賞作家。 本書、『恥辱』は、『マイケル・K』に続く二度目のブッカー賞授賞作品。大学教授である52歳の男が、教え子に手を出し、大学を追われたのち、身をよせた娘の農場での出来事を描いてるもの。『恥辱』を読むことで南アフリカの社会的問題が、それほどみえてくるのかと問われると疑問だが、父と娘の親子の繊細且つ微妙な関係や、女性の自立の問題や老いへ向う人生観などクッツェーの投げかけるテーマは多い。
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この主人公を一目?で好きになれる人はそうそういないのではないでしょうか。こういうタイプの主人公は、日本では去年出版されたイアン・マキューアンの「ソーラー」に似ていますね。 こっちの方が苦いと思いますが・・ バイロンのオペラが完成するのか、完成するとしたらどういう風なのか、考えてし...
この主人公を一目?で好きになれる人はそうそういないのではないでしょうか。こういうタイプの主人公は、日本では去年出版されたイアン・マキューアンの「ソーラー」に似ていますね。 こっちの方が苦いと思いますが・・ バイロンのオペラが完成するのか、完成するとしたらどういう風なのか、考えてしまいます。ラストも、決してオチているわけではないのですが、不思議にカタルシスを味わえる最後だと思います。
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不思議な話だった。最初はありふれた話なのかと思いきやアフリカに行ってからどんどんずれていってしまう。いままでに味わったことがないような奇妙な感覚に引きずられる。近代個人主義の敗北ともいえるのかもしれない。私たちは土俗的な慣習から自由にはなれないのかもしれない。そして、何が恥辱とな...
不思議な話だった。最初はありふれた話なのかと思いきやアフリカに行ってからどんどんずれていってしまう。いままでに味わったことがないような奇妙な感覚に引きずられる。近代個人主義の敗北ともいえるのかもしれない。私たちは土俗的な慣習から自由にはなれないのかもしれない。そして、何が恥辱となるかは個人や文化の問題なのだ。
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何度読んだかわからないのに、なぜか真っ先に思い浮かぶのはラストシーン。奇妙な反応なのかもしれませんが読み返すたびに背筋が凍ります。
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ヨーロッパ知識人の血脈をしぶとく生きていたはずだったのに、気がつくと少しずつ南アフリカの土地に吸い込まれそうになっている中年のスケベなじさまの話。見方によっては恐怖小説かも。
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